建物や地域をリノベーションする企業、ブルースタジオが昨今力を入れているのが、商住一体型の賃貸住宅プロジェクト(なりわい賃貸)だ。2021年に武蔵野市に「hocco(ホッコ)」が、2025年に調布市「meedo(みいど)」が竣工。
かつて、活気ある商店街は住宅であり店舗だった
ブルースタジオは、 住まいのリノベーションだけでなく、人と人がつながる街もリノベーションしてきた会社だ。街の商店街の空き店舗を活用してビジネスを生み出すことも同社のプロジェクトの一つだが、「商店街活性化のプロジェクトに携わっていると、結局は“商店街に人が住まなくなっている”という課題に直面するんです。本来商店街とは、店舗でありそれを営む人の住宅でもあったわけですから」と、大島さんは指摘する。
閉店が続き、いわゆるシャッター通りになった商店街(画像提供/PIXTA)
■関連記事:
【横須賀】”天空の団地”住民ゼロから5年で大人気物件へ再生。家賃5万円台~サウナ・絶景付き、お店も持てる?! 月見台団地
障がい者と地域の人々がシェアハウスで共に過ごす。店舗&ショートステイ併設「はちくりはうす」の想い 東京都目黒区
賃貸住宅に革命起こした「青豆ハウス」、9年でどう育った? 居室を街に開く決断した大家さん・住民たちの想い 東京都練馬区
【福島県双葉町】帰還者・移住者で新しい街をつくる。軒下・軒先で共に食べ・踊り、交流を 東日本大震災から12年「えきにし住宅」
魚屋でも金物店でも、かつてのように店舗一体型の住宅で営まれていれば“住人のパーソナリティがそのまま生業(なりわい)になる”はずだが、現在では住宅と店舗が別になることで暮らしの要素がなくなってしまった。その結果、地方の商店街は大型モールに負けてシャッター通りになり、都会はチェーン店のテナントだらけになるわけだ。
「商店街の再生は、商業地としての再生ではなくて、“人がいかに人間らしく暮らす場所をつくりうるか”の方が大事だということです。例えば、単に“カフェをつくって集客する”ではなく、いかに“そのカフェという表現を通じて暮らす楽しみをどう見い出すか”、“それに共感する人たちがどうすれば周りに増えていくか”を考えるべきだと思ったんです」
さらに2020年からのコロナ禍では、ステイホームで家、つまり住宅地にいる時間が長くなった。
「その時期に『うちの周りになんにもお店ないな』『いい感じのお店がないな』と思った方も多かったのではないでしょうか。“住む”だけに特化された街は、つまらないと感じてしまうんです」
大島芳彦さんは、ブルースタジオとはまた別に2010年より「リノベリング」という「今あるものを活かして、まちを変える」会社を起業(画像提供/ブルースタジオ)
「リノベーションスクール」では、全国の自治体とともに、街に実在する遊休不動産を活用しエリア再生のためのビジネスプランを創り出すという短期集中の実践型カリキュラムを行っている(画像提供/ブルースタジオ)
なりわいは自己表現。単に消費されるだけでなく、価値をシェアする楽しみ
都市計画法上の用途地域には住居系、商業系、工業系と大きく三つの分類がある。そのなかで、いわゆる“再開発”として官民が多大な投資を行うのは、商業系・工業系のみ。“暮らす”に特化した住居系地域は、家を建てて終わり。完成後に大きく投資されることはない。
「でも東京23区の都市計画区のうち、住宅系の用途地域は約6割を占めているんです。自分が暮らす街こそ魅力的であってほしいでしょう」
では、住宅地における「商い・なりわい」とは何だろうか。そこは、「消費者だけではなく、“表現者としても生活する”という空気感がある」ことがヒントだったそうだ。
「例えば、大都市圏だけじゃなくて地方都市でもマルシェが盛況なんですよね。そうしたマルシェに出店している人たちは、駅前にお店を借りてまでやろうとは思ってない。
自分の“好き”に共感してくれる人と顔を合わせるのも、同じ趣味を持つ仲間と交流することも楽しい。一方、それらを買う人も、量産品ではなく、“誰かがつくったオンリーワン”のものにすごく興味がある。そう、“ファン”になる感覚です。今の時代はSNSなどパーソナルメディアでできることが大きくなっているので、表現している人も自分のファンがどれくらいいるか分かっています。顔の見えない大量の人たちに対して投網を投げてどれだけ引っかかるかじゃなくて、自分にファンが10人いるんだったら、10人のために計算して全部売り切るみたいなことが可能になるわけです」
毎月第4日曜日に開催している「hoccoの日曜市」(画像提供/ブルースタジオ)
商業地は商業地でプロの商いの世界があるが、住宅地なら、「小さな生活者が、表現者として営む、小さな商いが成立するのではないか」と考えた。
「例えば、ご高齢の方でも、使わなくなったガレージを工房にして趣味のDIYをしていてセミプロ級だったり、自宅の客間でフラワーアレンジメントの教室を開いたりする方もいるじゃないですか。一人で楽しんでいるんじゃなくて、もうちょっとみんなでお互いに楽しみをシェアできたらもっと楽しくなるはず。
地方創生は「プレーヤー」と言われるようなプロに委ねるんじゃなくて、そこに暮らしている生活者が持っているポテンシャルをちゃんと可視化してシェアできたらどんな街にだって創生への筋道はあるのではと。それを“生業(なりわい)”と言おうじゃないか、と考えたんです。生業というのは趣味でも構わない。自己表現であり、生き様だし、暮らしの一部。
これが、「なりわい賃貸」の出発点だ。
「入居者の商売ならOK」用途地域の例外を活用した小さな商い「hocco」
そうして、2021年に武蔵野市桜堤(東京都)に開業したのが「hocco」だ。小田急バスの折返場隣接地を活用した複合的な賃貸住宅プロジェクトで、中庭を囲むように配置された店舗併用住宅と一般賃貸住宅がある。入居者は、1階の土間や店舗スペースを利用して小商いをすることができる。
「実はこの場所は第一種低層住居専用地域なので、本来は店舗だけの建物は建てられないエリアなんです。ただ、『兼用住宅』といって、住んでいる人が営む50平米以下の小規模な店舗であれば認められるんです。昔ながらの商店街の『文房具店』や『書店』、『理髪店』などは大抵このスタイルですよね。
hoccoではこれを採用し、建物全体で許容される50平米の店舗面積を5世帯で分け合い、1住戸あたり10平米ずつの店舗スペースを確保する計画にしました」
中央線武蔵境駅北口からバス乗車12分の終点に位置する。間取りはすべてメゾネットタイプの1LDK(撮影/片山貴博)
1階の赤色部分が店舗の利用可能部分。2階はプライベート空間(画像提供/ブルースタジオ)
土間部分を店舗にした、hocco内の立ち飲みもできるお惣菜スタンド「soil」(画像提供/ブルースタジオ)
現在オープンしているのはパイ店、パンと焼き菓子のお店、惣菜スタンド、雑貨店など。オーナーは、2階に暮らしながら、1階でお店を開いている。とはいえ、暮らしながらの商いなので、営業は、週に1、2度だったり、午前~昼間だけ、夕方からのみ、など各々が自分のペースだ。
「The Pie Hole Los Angeles 小金井公園」店主のご夫婦は暮らしながら、オープン当初から営業しており、自然と店主同士の交流をとりまとめてくれる存在に(撮影/片山貴博)
「meedo」はより本格的な店舗も。シェアキッチンで地域の人たちも巻き込む
そして2025年に開業したのが調布市深大寺の「meedo」だ。こちらは、「hocco」より店舗スペースが広いプランもあるのが大きな特徴だ。
「hoccoは商いができるスペースが1階の一部のみだったために、 “もう少し広かったら客席を設けられるのに”、“もう少し本格的なカフェにしたかった”という声が多かったんです。用途地域からそれは難しかったのですが、meedoはhoccoと違って、第一種低層住居専用地域以外の敷地もあり、1階全体を店舗にしたプランも可能になりました」
「meedo」は、1階全体を店舗、2階を住宅にした住戸を「あきない住宅」、1階の一部の土間だけを店舗にした住戸を「なりわい住宅」と名付け、商売の仕方にグラデーションを持たせている(写真撮影/Kenya Chiba)
小田急バスの折返の場所を利用したロケーションで京王線調布駅からバス7分、中央線三鷹駅からバス28分に位置する「meedo」(写真撮影/Kenya Chiba)
こうした恒常的に営業できる魅力的な店舗があれば、ここを訪れる人の大きな動機になる。
「もともと近所で営業していた評判のカフェが、別形態のテイクアウト専門店を出店してくださったりしたのはありがたかったですね。地元で長く愛されている人気店だけれど、地元の深大寺を愛し、住む場所こそ居場所だと思っている店主さんです。また、ここで初めて出店したカレー店もすぐ評判になっています」
meedoの近くで、10年以上「おむすび cafe & dining micro-cafe」を営んでいたオーナーが、「テイクアウトに特化したお店を出したい」と出店した「米玄DELI & SHOP」の店先(写真撮影/Kenya Chiba)
こうした本格的に店舗営業をしているお店がある一方で、イートインスペース付きのシェアキッチンがあるのも特徴。ブルースタジオが製造や営業の許可を取得しているので、自分の趣味の延長で焼き菓子を販売したり、お料理教室を開くなど、小さな商いが可能。こちらは暮らす人だけでなく、地域の人々も利用可能で、より多くの人に開かれた場所になっている。
シェアキッチン「meets meedo」。1日だけのカフェ、焼き菓子の製造場所、ホームパーティ、セミナーやワークショップの会場など、さまざまに利用できる(画像提供/ブルースタジオ)
「hoccoもmeedoも小田急バスの折返場隣接地を活用した点は共通項ですが、地域の成り立ちは微妙に違います。hoccoのある武蔵野市桜堤は、公団のUR賃貸など、昔は農地だった場所が一気に開発され、住宅街になったエリア。一方で、meedoのある調布市深大寺は、昔から農家やお寺もあり、独自の商業圏がある。暮らしとなりわい、どちらに軸足があるかは、街の歴史、成り立ちによっても変わってくると思います」
神奈川県鎌倉市大船や山口県防府市でも新たなプロジェクト
新たなプロジェクトも目白押しだ。2025年11月に竣工し、2026年春の開業を準備中の鎌倉市大船にある「kuguru(くぐる)」は、山蒼稲荷神社の敷地内、映画会社の松竹が所有する土地に建てられた職住一体の賃貸物件のプロジェクト。
「大船には、かつて松竹大船撮影所がありました。今は、大学のキャンパスや大型モールになっているのですが、駅前と、その大型モールの間に位置する場所に、新たな地域の誇りを感じさせるような場所をつくろうと考えました。
“ここで『男はつらいよ』をはじめ数々の名作映画が撮られて、役者さんや映画人が歩いていた街なんだ”という誇りを持つ方も多い一方で、どんどん新築マンションが供給され、他から移り住んでいる若いファミリーは、それらの歴史を知らない方も多い。それってもったいないですよね。
また、お稲荷さんは、商店街や横丁といった商業地域の中に、その地域全体の繁栄や安全を願って祭られているなど、生業と密接に関係のあるもの。それを再現しようと考えています」
神社を敷地内に擁する「kuguru」は、まるで鳥居のような木の構造フレームを「くぐる」ようなデザインに
(画像提供/ブルースタジオ)
山口県の防府(ほうふ)市では、7000平米のやや規模の大きい開発「TRAIL hofu hachioji(トレイル防府八王子)」が完成。
「トレイル防府八王子」の竣工を記念して、2025年3月に開催された「春まつり」イベントの様子(画像提供/ブルースタジオ)
暮らす人が地元で小さな商いをする。「利益を得たい」と考えたら、もしかしたら「割に合わない」かもしれない。しかし、直接、自分の好きやこだわりが理解され、支持を得るのは大きな喜びになるはず。もちろん自分のペースで営業ができるということは、客の立場としては、営業時間が短かったり、不定休であったりするわけだが、それはSNSで分かること。店主と客はご近所さんでもあり、まるで知り合いのような感覚だ。今の時代に生まれた、新しい商い、新しい暮らし方と言えるだろう。
●取材協力
hocco
meedo
kuguru
TRAIL hofu hachioji

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
