全国の自治体が住まいの支援(居住支援)に取り組む中、東京都豊島区は「65歳以上の高齢者人口に占める単身世帯の割合」が全国トップ(区市部)という課題を抱えています。さらに同区は、ひとり親世帯、外国人など、さまざまな人を対象にした支援を行ってきました。
豊島区の住宅や福祉の施策を担当する皆さんに、取り組みやその背景にある考え方について聞きました。
高密都市・豊島区で顕在化する住まいの問題とは
東京都23区の西北部に位置する豊島区。池袋駅を中心に、大塚・巣鴨・駒込・目白など、地域の拠点となる駅を擁する、交通利便性・生活利便性が高いエリアです。老若男女、国籍も多様な人びとが集まっている日本有数の高密都市でもあります。
福祉部自立支援担当課入居相談グループの玉井俊行(たまい・としゆき)さんによると、「65歳以上人口に占める単身世帯の割合は日本一。区の相談窓口を訪れる相談者のほとんどが高齢者」とのこと。「豊島区は高齢者のうち民営借家に暮らしている割合がとても高く、建物の立ち退きや、家賃が高くて住み替えたいという相談が多い」そうです。
また、外国人の占める割合も多く23区内では新宿区に次いで2番目。日本語や日本の制度がよくわからない人たちのために、区は外国人支援団体とともに都営住宅の応募サポート会を開催したり、外国語に対応できる不動産会社を紹介したりと策を講じています。
単身高齢者のうち民営借家に住む割合(23区比較)
豊島区の民営の借家に住む単身高齢者の割合は23区中、第1位。官民一体となっての取り組みがより必要なことがわかる(画像提供/豊島区)
一方で、住宅部局が抱えている問題は、東京23区中、第1位という空き家率の高さ(13.9%)です。
都市整備部 住宅・マンション課の戸田圭亮(とだ・けいすけ)さんは、「その多くは賃貸の空室で、空き家問題として取り上げられる一戸建て空き家を示す『その他の空き家』率はそれほど高くない」としつつも、「将来的に空き家になる可能性が高い、高齢者だけで暮らしている持ち家(空き家予備軍)への対策が必要」だと更なる増加を危惧しています。
また公営住宅の数が少ないことも課題です。
都市整備部 住宅・マンション課 課長の髙橋隆史(たかはし・たかし)さんは、「特にファミリー向けの住宅が少なく、子どもの成長などで手狭になったときに豊島区内で家を手配できず、区外への人口流出につながっている」と危機感をあらわにします。
2023年時点での豊島区の空き家率は13.9%と、23区内で最も高い(画像提供/豊島区)
空き家×居住支援、官民連携で広がる豊島区の取り組み
そのような状況下で、豊島区は民間と連携した、全国的にも注目される居住支援の取り組みを多数展開しています。
「豊島区共同居住型空き家利活用事業」は、空き家を住宅確保要配慮者向けのシェアハウスなどに改修する費用を補助するもの。この事業を活用して高齢者や障がい者の孤立を防ぐための「共生ハウス」ができました。
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また、UR賃貸住宅の空き家を利用し、親や身近な大人を頼れない若者の孤立を防ぎ自立を応援するNPO法人との協働で「若者の居場所づくり」を始めているところ。ほかにも空き家を活用した「ひとり親向けシェアハウス(豊島区モデル)」を官民協働で開設するなど、民間団体と連携をとりながらやっていく体制ができています。
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さらに、行政と民間のみならず、庁内における風通しの良さも積極的な支援事業を推し進める要因となっています。役所は縦割り組織で部署間の連携が取りにくいといったイメージがありますが、庁内を横断したプロジェクトも多いとか。
例えば先述のひとり親向けシェアハウスは区長からのトップダウン。そして若者の居場所づくりは、空き家を活用したいと考えた都市再生機構(UR)から相談を受けた担当者のボトムアップ提案が発端で、関係部署と連携して実現しました。
豊島区モデルひとり親向けシェアハウスの一例。売却予定のある建物をオーナーの賛同を得て期限付きでシェアハウスとして使用している。空き家を眠らせておくのではなく、いかに活用していくかも重要(画像提供/豊島区)
「行政だけでできることは限られる」豊島区の居住支援を支える仕組み
これらの豊島区の活動を語る上で重要な土台となっているのは、民間の支援団体や不動産会社と区が非常に良い協働関係を築けていることです。
例えば、住まいの確保に配慮が必要な人たちへの支援団体や福祉関係者・不動産会社などが連携して情報提供や相談支援を行う組織である「居住支援協議会」の事務局を、豊島区では「区」と民間事業者が協働で運営しています。
「区内で活動されている団体の数が多いのも区の特徴の一つです。居住支援協議会には支援団体の登録制度があり、行政からも民間団体からも必要な支援につなげられる緩やかな連携体制が取れています。加えて、居住支援協議会の事務局に『としまNPO推進協議会』という中間支援組織が加わっていることで、つなぎ役として機能していることも大きいでしょう」(戸田さん)
豊島区居住支援協議会の組織図。住宅部門と福祉部門の職員が事務局として主体的に関わっていくこと、そして、としまNPO推進協議会がつなぎ役となることで行政と民間の協働がスムーズに機能している(画像提供/豊島区)
「居住支援協議会とのつながりで縁ができた団体が増えて、相談の振り分け先が増えたことは大きいです。協力してくれる不動産会社も、少しずつではありますが増えてきていると感じています。
東京都指定の居住支援法人も区内に増えてきたので、相談者を支援につなげるための行き場がないということは、今のところありません」(玉井さん)
一般的に、行政への相談が支援につながる件数は、実はそれほど多くないのが現状です。豊島区の2023年の居住支援の相談自体は延べ5300件以上。相談件数の多さに驚かされます。同じ人からの複数回の相談や、相談に至らない問い合わせだけのケースが多いそうですが、支援につながった相談が150件に上るのはかなりの数字です。
そして行政が主体となって空き家の利活用にも乗り出しています。近年、全国で民間の空き家をセーフティネット住宅や地域交流・公益目的の施設などとして活用しようという動きはあるものの、実際に行政が積極的に動いて契約・活用まで漕ぎ着けた事例はあまり多く見つかりません。そのような中、豊島区では2023年度以降、地域貢献のための利用が6件、共同居住としての利用は3件。マッチングのみも含めると件数はもう少し増えるそうで、少しずつですが着実に伸びてきています。
住宅部門と福祉部門をまたいだ連携で、空き家問題と居住支援、両面からの解決の糸口を模索する(画像提供/豊島区)
「消滅可能性都市」から始まったまちの転換
しかし、このような居住支援や空き家の活用が最初からスムーズに行われていたわけではありませんでした。
そのターニングポイントになったのは「2014年に日本創生会議の『消滅可能性都市』に東京23区で唯一指定を受けたことだった」と高橋さんは振り返ります。消滅可能性都市とは、少子化と人口流出によって将来、20歳~39歳の若年女性人口が50%以上減少し、地域社会や行政の存続が危ぶまれる自治体のことです。
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これをきっかけに、区内の若い女性割合をどのように増やしていくかという議論がなされ、その流れから、地域団体との連携や、空き家や遊休不動産の有効活用による持続可能なまちづくりへの機運が高まりました。
2014年に消滅可能性都市に指定されたことがターニングポイントに。それから毎年人口は少しずつ増えていったが、近年また減少に転じている。人口流出をいかに止めるかが課題だ(画像提供/豊島区)
「居住支援において区や居住支援協議会は民間支援団体の“後方支援”や“横のつながりづくり”に力を入れています。そして空き家の活用においては、オーナーと民間団体の契約になるので、空き家のマッチング・補助金制度を通じて活用を促進することが区の主な役目です」(戸田さん)
ただ、補助金の制度をつくって終わりではなく、区の担当者がオーナーや民間団体の活動に寄り添って不動産や法律の知識面のフォローにあたっていることも、事業がうまくいく一因となっているようです。実際に空き家活用の専門員として活用の相談に乗る都市整備部 住宅・マンション課の町田在功(まちだ・ありかつ)さんは、自らも住宅の売買・賃貸を行い宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ不動産のプロ。
「民間の支援団体では借りにくい物件も、区の職員が間に入り、空き家の活用の方向性をガイドすることで信頼度の面から借りやすくなり、事業が回っていくケースが多くあります。そのようなフォローも区に求められているのでしょう」(町田さん)
隙間や干渉のしすぎがないか、関わる人や団体が組織間や立場の隙間を埋めていくことを意識できるか。その距離の取り方や細やかな配慮が、豊島区では連携がうまくいっている要因ではないでしょうか。
UR都市機構とNPO法人2団体とともに「豊島区における若者の居場所創出の促進に関する協定」を締結したときの様子。行政と民間の協働が次々と形になっている(画像提供/豊島区)
「入居後の支援」という次の課題へ
一方、これまでの活動から見えてきた課題もあります。
2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行されましたが、住まいの総合相談について、法律では居住支援法人と居住支援協議会の連携を強く推奨していても、その具体的な手法は各自治体や居住支援協議会に丸投げされているとも受け取れることに、戸惑いを感じる部分もあるそう。
「地域によっても社会資源はそれぞれ違います。特に高齢者に対する、見守りや死後事務委任といった入居後の支援をどう具現化していくかが課題」と話すのは福祉部 自立支援担当課長の大曽根誠(おおそね・まこと)さんです。
「そのためには物件オーナーさんの理解を得ることが重要だと思います。配慮が必要な人への支援の必要性をオーナーさんに伝えるよう努力はしているものの、なかなか浸透していかないのが実情です」(大曽根さん)
最初に示したように、豊島区内の空室は多いので、オーナーの理解が進めばもっと住宅を必要としている人への支援が進み、オーナーにとっても家賃収益を得る機会となるはず。しかし、「オーナーや管理会社にも目に見える形でメリットを訴えていかないと、なかなか居住支援に物件を活用してもらうのは難しい」というのが現場での実感のようです。
豊島区としても見守りや死後事務委任などの入居中、入居後の支援は、今後さらに整備・強化していきたいと考えているそうです。
後列左から時計回りに大曽根さん、高橋さん、戸田さん、町田さん、玉井さん、そして、主に居住支援協議会との仕事に従事している佐々木枝里子(ささき・えりこ)さん(撮影/りんかく)
高齢者、ひとり親、若者、外国人と、支援を必要とする背景はそれぞれ異なりますが、豊島区では、行政がすべてを抱え込むのでも、民間に任せっきりにするのでもなく、それぞれの役割を分かち合いながら、支援を必要とする人を支えていく姿勢が、取り組みを持続可能なものにしていると感じました。
しかしながら、入居後の見守りや死後事務など、まだこれから解決しなければならない課題も残されています。居住支援は「住まいを見つけて終わり」ではなく、その後の暮らしまで含めて考える必要があるからです。豊島区のさまざまな取り組みや区の皆さんが意識する“距離感“や“立ち位置“は、これからの都市政策や居住支援のあり方を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
●取材協力
豊島区

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