2025年1月、ニューヨークタイムズが選ぶ「2025年に行くべき52カ所」に選出された富山市。
「なんもないちゃ」
富山弁で「なにもない」と、富山市民が自分のまちを語ると口をそろえてこう言う。

しかし今回実際に街を歩き、暮らす方々に話を伺うことで見えてきたのは、日常の豊かさだった。

ダイナミックな地形と歴史背景が織りなす、独自の食文化

富山県は山から海までが極端に近く、標高3000m級の立山連峰から水深1000m超の富山湾と、高低差約4000mの世界的にも珍しい地形をもつ。山々から流れる雪解け水の恵みを受けた肥沃(ひよく)な大地は、米や野菜など豊かな食材を育んでいる。

NYタイムズ選出「行くべき場所」富山市は、”なにもない日常”が究極すぎる街。きときとな魚に野菜、立山を望む街並み…当たり前レベルの高さに迫る

迫るような迫力の立山連峰。山々から流れる川はすぐに富山湾へとそそぐ(写真撮影/竹田泰子)

“天然の生けす”と呼ばれる富山湾には多種多様な魚介類が生息し、日本海近海を泳ぐ約800種類のうち、なんと約500種類が獲れるという。白えび、ホタルイカなどここでしかお目にかかれない魚介類も多い。

また、富山県は昆布消費量が常に全国トップクラス。富山で昆布は採れないにもかかわらず広く流通したきっかけは、江戸時代中期から明治時代にかけて、大阪・北海道間を結ぶため日本海沿岸を行き来した商船群・北前船にある。北前船の寄港地だった富山市岩瀬地域には港町の面影が色濃く残り、当時北海道から運ばれた昆布は今なお富山の食文化に強い影響を与えている。

とろろ昆布が巻かれたおにぎりは、富山の定番フードだ。飲食店でおにぎりを頼むと「海苔か昆布か?」と、中に入れる具材ではなく、何を巻くかを尋ねられる。魚介類を昆布で挟む昆布締めは一般の家庭でもメジャーな保存方法で、さらには昆布パンや昆布餅など、富山の昆布文化は独自路線を突き進む。

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“富山湾の宝石”と呼ばれる白えびに、富山でおなじみの刺身の昆布締め。

昆布で挟むと保存がきくだけでなく、風味が魚に移りさらにおいしくなる(写真撮影/竹田泰子)

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ワゴン内すべてが昆布。一般的なスーパーでも多種多様な昆布が取り扱われる(写真撮影/竹田泰子)

静けさが価値!? 暮らしやすさにも直結する富山市の魅力とは

同紙に推薦したクレイグ・モドさんは富山市をこう評する。
「富山市はコンパクトで歩きやすく、おいしい食べ物と親切な人々に溢れているーこれこそ私が街に求めるすべてだ」(クレイグ・モドさんHPより)

富山市は、2000年代初頭より推進した「コンパクトシティ」戦略の先進都市としても名高い。公共交通を活性化し、商業店舗や文化施設などの都市機能と住居を沿線に集約することで、コンパクトな街づくりを実現している。

特に路面電車は、富山駅を起点に市内南北を結ぶ3ルートに加え、30分ほどで市街地を周回できる環状線も走っており、最も手軽かつ定番の交通手段だ。ガタゴトと立てる音も揺れる車窓も、富山市とは切っても切れない風景となっている。

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富山地方鉄道富山軌道線本線 西町駅で路面電車を降りてすぐの交差点は、目抜き通りの先に立山連峰が見える絶好の撮影スポット(写真撮影/竹田泰子)

ニューヨークタイムズに紹介されたバーや居酒屋もアクセスしやすい街中にあり、いずれも地域住民の間でも知る人ぞ知る飲食店ばかり。市街地には車だと見逃してしまうような小さな店舗が点在し、街歩きしてこそ楽しさを見出せる。

“木と光の大聖堂”と表現された隈研吾氏建築のTOYAMAキラリは、富山市ガラス美術館と富山市立図書館本館が併設された複合施設。外観に用いられたガラスやアルミはキラキラと光り輝き、建物内部に入ると一転、富山県産のスギ材が生み出す温かみのある空間となっている。

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TOYAMAキラリ外観。建物のインパクトの強さはあるが、街の光を反射させ風景とも馴染む(写真撮影/竹田泰子)

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天井からの光が吹き抜け空間に降り注ぎ、建物空間自体がアート作品のよう(写真撮影/竹田泰子)

混雑を避け、静かに過ごせる都市としてもニューヨークタイムズに評価された富山市。この文化施設は、街の中心に位置する観光地であるのと同時に、市民にとっての憩いの場でもある。

「市民の書斎としてサードプレイス的な役割も担い、幅広い年齢の方々が利用されています」と話すのは富山市立図書館本館の司書、工藤崇人(くどう・たかと)さん。

館内には、窓から外を望めるカウンター型の閲覧席やベンチ席、学習室など約500席が多種多様に整備され、訪れた人が目的に合わせ思い思いの時間を過ごせる。

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中高生が友人同士で勉強し合う姿も館内でよく見られる(写真撮影/竹田泰子)

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照明を落とし壁に囲まれながら読書できる“壁内席”は特に珍しく目を引く(出典/富山市立図書館本館)

「本館は”にぎわいの交流拠点”という役割が基本理念にあります。市民の方の読書環境、学習環境を確保する一方で、従来の貸出返却に留まらず、イベントを開催するなど滞在型図書館として交流が生まれる環境を整備しています」

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富山市立図書館本館司書・工藤崇人さん(写真撮影/竹田泰子)

子ども向けの絵本の読み聞かせ会なども含めほぼ毎週、年間で約160回ものイベントを開催。普段図書館を利用しない方に「来たい」と思わせるようなきっかけづくりも積極的に行う。立地上、図書館利用者が街中へ遊びに行くなど、良い相乗効果も生まれている。

「イベント時には本の紹介も同時にするなど、図書館としての既存の機能はしっかり果たしています。その上で、市民の方の日常的な居場所になるような仕掛けづくりは今後も継続していきたいですね」

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本棚は向こう側が見えるオープン型。柱が鏡になっており、建物全体がガラスのように透けて見える。美術館の建築基準に合わせ天井が高いため、より広く開放的に感じられる(写真撮影/竹田泰子)

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本を乗せる棚板は斜めにカットすることで耐荷重を確保しつつも見た目はスッキリしており、軽やかな印象を受ける(写真撮影/竹田泰子)

館内にはガラスアートに関する書籍や郷土資料が目に留まりやすい位置に配架され、観光客が本を読んだりパンフレットを手に取ったり、市民と一緒に利用する光景もよく見られる。観光客の増加により地域住民が暮らしづらくなるオーバーツーリズムは今のところ起こっておらず、魅力の1つと評された静けさは保たれている。

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富山市立図書館本館5階には郷土資料と合わせてガイドブックなどを配架した観光コーナーが設置されている(写真撮影/竹田泰子)

日常が観光になる街。
毎日見上げる景色が壮観すぎる

富山市観光協会の太田直(おおた・すなお)さんはニューヨークタイムズの選定を受け「観光地として選ばれたというより、飾らない日常にスポットライトが当たったと感じた」と話す。同協会のSNSも担当し、暮らしの風景を切り取る太田さんの投稿には、数万を超える「いいね!」がつくことも少なくない。

「過度に観光地化されていない、自然体の姿が富山市の魅力。日常が観光になるポテンシャルがある街だと思っています。
普段の生活をSNSにアップする世の中になり、今まで富山市民にとって“当たり前”だと感じていた景色が“実はすごい”と気づき始めたのかもしれません」

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富山市観光協会・太田直さん(写真撮影/竹田泰子)

市内を歩くとあちこちで立山連峰を仰ぐことができる。まるで幕のように空の下半分を覆う雄大さは、視界に入るたびに圧倒される。古くは奈良時代、越中守を務め、万葉集の編さんにも携わった大伴家持は立山を「神の住む山」と詠んだ。
そんなドラマチックな景色が、当たり前。年間通して曇天が多いため、よく晴れた日は「今日は立山がよく見えるね」で会話が始まるそう。

太田さんは「観光客の方が感じる魅力と、市民が誇りに思う部分が重なってきている」と話し、住むことでより良さが実感できる街だと感じた。

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太田さんのスマホには、市内の日常風景が多数収められている(写真撮影/竹田泰子)

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富山市観光協会が配布している市内の立山連峰眺望スポット20選のパンフレットは、上部が立山連峰の稜線に合わせて切り取られている。写真の姿ももちろん美しいが、壮大さは肉眼でこそ感じられる(出典/富山市観光協会)

街を歩くと垣間見える日常生活の豊かさ

富山地方鉄道富山軌道線 上本町駅で路面電車を降りると目を引く真っ赤な外観の小さな建物。ROSETTA O MICHETTA(ロゼッタオミケッタ)は、朝から営業している隠れ家のようなサンドイッチ店だ。

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海外のお店のような雰囲気が漂う、ひっそりとした店の入口(写真撮影/竹田泰子)

「路面電車の音を聞きながら仕事をするのもいい」と富山市内でイタリア料理店を営んでいたオーナーがオープン前から構想し、朝8時から昼過ぎまでの営業スタイルとなったそう。ここでしか食べられないオリジナリティあるサンドイッチを朝食にすれば、最高の一日のスタートを切れる。

お店に立つコマさんは、兵庫のご出身。ご家族の仕事の都合で12年ほど前に富山市へ引越してきた。
「静かでおだやかで、とても居心地がいい街。少しずついいところを知り、年々好きになりました」

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ロゼッタオミケッタ・コマさん(写真撮影/竹田泰子)

最近の街の変化を尋ねると、国内・海外ともに来店者数が増えたそうだが、コマさんはいつもどおりを粛々と続けることだけを考えていると話す。
「お店の雰囲気はお客様がつくるもの。常連の方も、観光でいらっしゃる方のにぎわいを受け入れてくれているように感じます。お店側から特別なことはしませんが、リラックスして過ごすひとときを気に入ってもらえたらうれしいですね」

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イートインスペースは6席と、ぎゅっとつまった店内。映画ポスターなど店内装飾と調理器具が、絶妙なバランスで共存する(写真撮影/竹田泰子)

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サンドイッチに挟む具材もメニューも、季節の食材に合わせて変化するという(写真撮影/竹田泰子)

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お店のすぐ目の前には路面電車が止まる。カウンターからも見えるおかげで電車が好きになったと笑うコマさんの推し車両は7018系(写真撮影/竹田泰子)

当たり前が濃い

ロゼッタオミケッタから路面電車で2駅、富山地方鉄道富山軌道線 中町駅で降りてアーケード街へ入るとひときわ賑わう店、「地場もん屋総本店」がある。街中にいながら新鮮な富山の農産物が手に入る稀有な存在。産直市場として約450組もの生産者会員を有し、市内で生産された野菜や米、果物などを中心に新鮮でおいしい食べ物を市民の食卓へ届ける一翼を担う。

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緑色の暖簾と、木の看板が目印。店外にも溢れんばかりの品々が並ぶ(写真撮影/竹田泰子)

収穫したばかりの農産物が所狭しと並び、添えられたPOPが目を引く。人が行き交うと同時に会話も飛び交う活気のある店内。
「迷っている方に『おいしいですよ!』と声をかけたり、食べ方をお伝えしたり、結構お客様には話しかけますね」と笑うのは、チーフの岩城祥子(いわき・しょうこ)さん。

店長の田近寛充(たぢか・ひろみつ)さんが「15年前のオープン時は、中心市街地のにぎわい創出が大きなテーマでした。当時掲げた目標の成果は出ていると思う」と話すと、岩城さんはこう続ける。
「生活に寄り添い、おいしいものを皆さんに届け、今よりもうちょっといい生活を過ごせるようにするにはどうするかを最近は考えています」

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地場もん屋総本店店長・田近寛充さん(写真撮影/竹田泰子)

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平日・週末問わず、どの時間帯も賑わう(写真撮影/竹田泰子)

店内に並ぶ農産物や商品は旬を追って顔ぶれが変わる。富山の食材の豊富さに魅せられ、移住して店を構える料理人の方も多いそう。

「『富山は日本の中でも特に四季がはっきりしている』と、料理人の方に最近言われました。春になったら山菜、白えびやホタルイカが短い旬を迎え、夏は鮎や立山連峰の伏流水でみずみずしく育った夏野菜が出回る。秋には原木しいたけなどキノコ類、呉羽梨、そしてもちろんお米。冬が来ると寒ブリ。

一年中、おいしい食材がなくならない」(田近さん)

同じ種類の野菜でも、さまざまな生産者さんから届く。納品は生産者さんに任せているため、時期によって白菜ばかり並ぶ日もあると田近さんと岩城さんは笑う。豊かな土地の恵みと、生産者・市場・消費者のよい循環を感じられるとともに、富山での日常的な食生活が上質だと実感する場だった。

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街中の飲食店店主たちは足繫く地場もん屋に通う。飲食店と生産者をつなぐ役割も果たしている(写真撮影/竹田泰子)

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珍しい野菜も数多く並び、食べ方などを紹介している(写真撮影/竹田泰子)

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富山らしい昆布商品も取り扱う。昆布ガリはここ最近の売れ筋商品(写真撮影/竹田泰子)

地場もん屋総本店から10分ほど歩いた先に、親子で営む寿司店「江戸前 寿司正」がある。二代目店主、山下稔(やました・みのる)さんは「富山の魚は味が濃い」と話す。

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江戸前 寿司正二代目店主・山下稔さん(写真撮影/竹田泰子)

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街中の千石町通り商店街にお店を構える「江戸前 寿司正」。富山地方鉄道環状線 大手モール駅からも徒歩すぐ(写真撮影/竹田泰子)

立山連峰の雪解け水は表層を流れるだけでなく、地中に浸み込みゆっくりと湧き水となる。富山湾海底で湧く深層水は栄養が豊富で、湾内でプランクトンを食べる魚も食物連鎖でおいしくなるという。
「約80年かけて地底から湧いてくるそうです。この店を始めた父が、ちょうど80歳。父が生まれたときの水が海洋深層水となり、魚を通じて今、自分たちの口に入っている」

さらに市内から近距離に漁港が点在しているため、鮮度は抜群。きときとのネタ(「きときと」は、富山弁で「新鮮な」の意味)と、立山からの水脈を受けた米で握られる寿司は当然おいしい。

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目の前には毎朝漁港で仕入れたネタが並び、寿司を握る様子も間近で見られる(写真撮影/竹田泰子)

「スーパーに売っているお寿司も刺身もどれも新鮮で、美味しい魚は特別なものではなく日常に近い存在。今日も富山へ帰省した方が来店され、第一声が『やっぱり富山の魚はうまい』でした。暮らしていると当たり前で感動が薄くなるけど、一度外に出てみたら分かりますよ。口に入るものは間違いなく美味しい」

ご自身も県外で修行をした身。修行先で魚を扱っている間も、富山の魚を食べたいとずっと思っていたと笑う。外から見ないと分からないほど“当たり前”のレベルが高いのだろう。だからこそ、観光で訪れた方の目には富山の日常がより魅力的に映るのかもしれない。

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富山湾で獲れた地魚だけを使い、富山県産米と握った富山湾鮨。左上から時計回りに、紅ズワイガニ、ヒラメの昆布締め、甘えび、白えびの軍艦巻き、カワハギ。富山県の形のお皿にもご注目。軍艦巻きには海苔ではなくとろろ昆布を使い、昆布締めの魚を握るのは、山下さんこだわりの富山らしさ(写真撮影/竹田泰子)

ないものがない。見えざる魅力が暮らしのあちこちに潜む街

富山市観光協会によれば、ニューヨークタイムズに選出される前の2024年から選出後の2025年を比較すると、富山市を訪れる外国人宿泊者数は1.4倍にも増加。特に海外からの観光客率は伸び率が高く、宿泊者数も上昇したという。また富山市ガラス美術館の入館者数は前年に比べ約13万人も増えた一方で、街の混雑さは気にならなかった。一過性のものではなく緩やかに増えているという。

「県内には立山黒部アルペンルートがあり、観光地として人気の金沢、飛騨高山も近い。近さゆえに富山市は宿泊のみの中継地とする方が今までは多かったんです。でもホテルのチェックイン・アウト前後の数時間だけでもいいから、ぜひ街を歩いてもらいたい。二度三度と来ることでより楽しめる街だと思っています」(富山市観光協会・太田さん)

県外から移住したコマさんは旅行ではなく暮らすことで富山市の魅力に気付いたと話す。
「実は高校の修学旅行先が富山でした。ですが、すっかり忘れていて移住前の印象は正直ゼロ(笑)
『田舎でなにもない』と富山の方は謙遜して言いますが、なんて奥ゆかしいんだろうって。おいしいお水も食べものもたくさんあり、必要なものは全部あります」(ロゼッタオミケッタ・コマさん)

「なにもない」のではなく、ないものがない。

おいしい食べものに雄大な景色、さらに図書館が下支えする文化度の高さも感じられた。コンパクトにまとまった街は観光の利便性がいいのはもちろんだが、何よりそこに住む住民にとって暮らしやすい。
日々の生活水準が高いがゆえに、ずっと住んでいると見えにくい価値が富山市のそこかしこに眠っている。飾らない日常の魅力を、四季を通じた暮らしの中で探してみたいと感じさせる街だった。

●取材協力(五十音順)
江戸前 寿司正
地場もん屋総本店
富山市観光協会
富山市立図書館本館
ROSETTA O MICHETTA(ロゼッタ オ ミケッタ)
Ink&Dive 居場梓(構成案・取材アテンド)

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