春、新生活や模様替えでインテリアへの関心が高まる季節。今チェックしておきたいのは、年初にパリで開催された「メゾン・エ・オブジェ(MAISON&OBJET)」で示された最新の潮流です。

世界中のプロが注目したパリ発のトレンドには、日本の住まいを心地よく彩るヒントが詰まっていました。現地で見つけた「これからの暮らし」の種を日本へお届けします。

「MAISON&OBJET」ってなに?

【パリ発】インテリアトレンド2026年! 「変態」「ネオ民族」など”4大キーワード”が鍵、空間デザイナーが世界最高峰の見本市「メゾン・エ・オブジェ(MAISON&OBJET)」レポート

(撮影/坂田夏水)

「MAISON&OBJET」はパリのシャルルドゴール空港の近くにある地域、ヴィルパントで開催されています。 パリの中心部からRER(地域急行鉄道網(Réseau express régional))の電車に乗って30分程度。会場は東京ドームの5~6個分の広さで、インテリアデザインとライフスタイルのトレンドを発信する世界最高峰の国際見本市です。

イベント名にある「MAISON(メゾン)」とは「家」のことで、 「OBJET(オブジェ)」は「物」を意味します。とにかく会場が大きいので、1日では見て回れません。インテリアとひと口に言っても、空間の材料である床壁材はもちろん、家具、食器、照明、布、フレグランスなど幅は広いのです。

私は4年前からパリに住んでいますが、日本から「MAISON&OBJET」に出展していたころを含めると、毎年1月と9月に通い続けてもう17回目。 コロナ禍以降は出展数が減り、どこか不穏な空気が漂っていた時期もありましたが、今年は活気が戻り、出展者も増えて盛り上がり、とても良かったです!

今年のテーマは「PAST REVEALS FUTURE ――過去は未来を明かす」

2026年の「MAISON&OBJET」のテーマは、「PAST REVEALS FUTURE ――過去は未来を明かす」でした。
これは単に過去のデザインを再現するのではなく、過去を振り返り、そこから学び、本質を明らかにしていきましょう、というもの。 自然素材への回帰や、古くからの知恵、職人技、手仕事が改めて注目されており、それらを現代のインテリアデザインとして未来へつないでいくことが大きなテーマになっていました。

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「MAISON&OBJET」の特設ブースの前で毎年記念撮影。この記念撮影もかれこれもう14回目でした

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トレンド解析のブースの入り口。

入場者は必ず見て回る場所なので長蛇の列ができることもあります

毎年、インテリア業界ではその名を知らぬ者はいないフランソワ・デルクロー(François Delclaux)氏と、エリザベス・ルリッシュ(Elizabeth Leriche)氏によるトレンド解析のブースが公開されます。これが非常に面白いので、私はいつも真っ先にここを訪れます。

今回の展示では、テーマに沿って「未来のインテリアはどうあるべきか」が提示されていました。古典的な装飾や職人技を現代に再構成した作品が中心で、「新古典主義(ネオクラシズム)」的なアプローチなのだとか……。はい、少し難しいですね(笑)

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これはインテリアなのか!?壊れた石やブロックのパーツの組み合わせがが積木遊びのよう

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光るチェーンの形の照明、緻密な組石オブジェのミラーとベンチ、床は大理石モザイクのプリントのカーペット!

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このテーブルとミラーは全て陶器でパーツ毎に釜に入れて焼き上げたもの。なんと時間のかかる職人仕事なのでしょう

要するに、あえて割れたままの土器や荒削り石、もやもやとした不透明なガラス、さらには陶器の家具やクロームのギラギラとした光沢、そして膨大な時間をかけた手仕事などが評価されているのです。 ね、面白いでしょう?

デザインのルーツに回帰し、伝統を現代的な視点で再解釈すること。そして未来を見据え、知識や職人技、守るべき歴史の幅を広げること。それが重要なんだそうです。

確かに、これらの素材や作品に触れ、「どうやって制作されたのか」「どれほどの時間がかけられたのか」と背後にある物語に思いを巡らせると、自然とその作品への愛着が湧いてきます。

過去から学び、現代の感性でつくり直す――。
ここまで読んで、「まだ理解できない……」と落胆している方も、安心してください。

もう少しわかりやすいお話をしようと思います。

「MAISON&OBJET」が示す、2026年のトレンド「4つのキーワード」

1 Métamorphose(メタモルフォーゼ):変態
2 Mutation(ミューテーション):突然変異
3 Baroque revisité(バロック・ルヴィジテ):バロックの再来
4 Néo Folklore(ネオ・フォークロア):ネオ民族

要するに、「伝統と遊び心を組み合わせて楽しみなさい」ということなのですが……これだけでは難しいですよね。私もわかりません(笑)。でも、それがアートであり、 インテリアにはアートが必要なのだということなのでしょう。
もうちょっと具体的に、わかりやすく色や素材の話の中からトレンドキーワードの話をしましょうね。

自然素材への回帰と物語
2026年は、厚手のウールやリネン、土、石、木、コルクといった自然素材が主役。それも均一のものではなく、工業製品のセラミックなどの人工物より荒削りで不完全な「手仕事」を感じさせるものが注目されました。

背景にあるのは、歴史ある工芸の良き時代への“回帰”かもしれません。 会場ではどのメーカーも、その作品がどんな技でつくられたのか、素材がいかに貴重かといった「物語」を熱心に語っていたのが印象的でした。

単なる機能やデザインだけでなく、素材の成り立ちや職人の想いといった「物語」が、使う人の感情を動かし、新たな価値を生み出していく――。 そんな流れを象徴するように、会場では民族的なお面やトーテムポール、宗教的なオブジェなども多く見られました。こうした伝統的なフォークロア(伝承)を現代のインテリアに融合させる「Néo Folklore(ネオ・フォークロア)」は、今まさに世界が注目するスタイルといえそうです。

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ウールやリネン、土、石、木、コルクといった自然素材で構成された空間は居心地が良いですね

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綿や麻、蔓などで編まれた有機的な形状インテリアデコレーションたちは全て手仕事。

大量生産の人工物より荒削りで不完全な自然素材で造られたものがトレンド

有機的なフォルムと装飾
自然とのつながりをより身近に感じられる空間づくりのために、流動的で自然な形状や「バイオフィリックデザイン(生命や自然との調和を目指すデザイン)」の原則が積極的に取り入れられています。

その影響か、ここ数年は硬く角張った家具が影を潜め、柔らかく流れるような輪郭を持つ家具へのシフトが顕著です。会場を見渡すと、まさに「どこもかしこもぐにゃっとして」いると言いたくなるほどの曲線美にあふれていました。

そんな「ぐにゃぐにゃ」とした有機的なフォルムに加え、さらに華美で装飾的なインテリアが増えているのも今年の大きな特徴。これこそが、キーワードの一つである「Baroque revisité(バロック・ルヴィジテ) -バロックの再来」の動きなのでしょう。

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人の手で削られた大理石の中に照明を入れて華美で装飾的なアートのようなインテリア

ポジティブなアップサイクル
デザイナーたちは今、大量生産やスクラップ・アンド・ビルドの繰り返しに飽き飽きしています。
そこで、単に物を捨てるのではなく、形や機能を変容させる「アップサイクル」がますます注目されています。
これこそが、今回のトレンドの一つである「Métamorphose(メタモルフォーゼ) -変態」。デザイナーたちの手によって、何も捨てずに、まったく新しく役に立つものへと“メタモルフォーゼ”させているのです。

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石材屋のゴミ置き場に転がっていた石とか、捨てられるはずだった割れたガラスをまた溶かしてみるなど。アンチスクラップ・アンド・ビルドの動きは難解だけど面白い

自然とテクノロジーの融合
インテリア業界でも最近増えてきたのは、3DプリンターやAI、レーザーカットなどのハイテク技術を駆使した作品です。職人技や手仕事とは対極にあるテクノロジーの領域でしたが、最近はテクノロジーと
未加工の有機素材を組み合わせる新しい傾向が見られます。

これがトレンドキーワードの、今まで見たことないものを創造し“変態”させること、これが「Mutation(ミューテーション) -突然変異」です。

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こちらはミラーなのですが、一見中に空気が入っている風船のような不思議なインテリア。柔らかいのか、硬いのか、確かめるために触れて確かめました。3Dプリンターとテクノロジーの進化があってこそできる形状ですね

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こちらは会場でも一際目立っていたロシアの会社。ギラギラのインテリアは特別に光っていましたが、案内してくれるお姉さんも美しくギラギラしておりました

大胆で鮮やかなカラー
会場では、黄土色や淡いピンク、エメラルドグリーン、ボルドーなどといった大胆で鮮やかなカラーが多く見られました。 洗練された深みのある色調や、ナチュラルなアースカラーも根強い人気ですが、一方で、「やっぱり白だけじゃ物足りない!」と言わんばかりの、思い切った配色を取り入れるメゾンも増えています。

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自然素材と黄土色、有機的な装飾品を合わせる空間演出が多く人気でした

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こちらはミッドセンチュリーな色柄と家具を組み合わせた空間。淡いピンクも会場で見られ、流行の予感です

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土色とボルドー色の空間に合わせる家具や照明はやっぱり曲線的な自然素材

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エメラルドグリーンの空間はなかなか日本人には真似できないハイレベルなコーディネートですが、世界敵基準で見ると派手な色使いのお部屋は人気です

2026年の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」は、ハリー・ヌリエフ氏

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「MAISON&OBJET」HPより

2026年の一番のデザイナーこと、今回の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、こちらのイケメンさん。ロシア出身のハリー・ヌリエフ氏(HARRY NURIEV)の「MAISON&OBJET」のインスタレーションは、まさに“ぶっ飛んで”いました!
彼は、バレンシアガやジミー・チュウ、ヴァレンティノといったハイブランドから、ルーブル美術館、アート・バーゼルまで、その活動は多岐にわたります。今、世界が最も注目する若手デザイナーの一人です。

彼の表現手法は非常にユニーク。たとえば、クラッシックな家具をあえて単一の素材ですべて覆い尽くして(巻いて)しまうのです。

そうすることで、家具本来の個性を一度「中立」の状態に戻し、新たな調和を生み出すことで唯一無二の作品へと昇華させます。物やデータ、そしてアイデアがあふれ、飽和状態にある今の世界。彼の作品には、そうした「アンチ過剰消費」に対する強いアンチテーゼが込められているのでしょう。

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(撮影/坂田夏水)

自らの器を変え進化する、彼の哲学「トランスフォーミズム(変容主義)」について、彼はこう語ります。

「Transformism is the act of turning one thing into another – not by denying its origin, but by illuminating it. It is the art of giving a second life to what no longer has a place.
(トランスフォーミズム(変容主義)」とは、あるものを別のものへと変える行為であり、その起源を否定するのではなく、むしろそこに光を当てること。それは、もはや居場所を失ったものに「第2の命」を与える芸術です)」

さらに、彼は現代を生きる私たちにこう問いかけます。
「私たちは、物、データ、そして無限のアイデアに圧倒される時代に生きています。色彩は18世紀、形態は19世紀、そして哲学は20世紀のまま。今日、真の課題は『発明』ではなく、『認識』です。 今は革新の時ではなく、必要なのは明晰さ、感受性、そして共感です。私たちが既にやりすぎてしまったものを、再考し、再構築する時です。過去を消し去るのではなく、その本質を増幅させるのです。

重み、光、声……失われたもの、忘れ去られ、捨てられ、発見されるのを待っているものを取り戻します」

いかがでしたでしょうか? 最新トレンドはなかなか難解でしたね!(笑)
私自身も毎年現地で見て感じて……。「やっぱりわからない!」と思うこともありますが、その中でもデザイナーたちのメッセージを受け取り、自分の家(MAISON)と物(OBJET)を再考し、暮らしを見直すきっかけにしています。

私たちが何を選び、どう消費するかが、次の未来に繋がっていく――。そんなことを考えながら、今回はパリから最新のインテリアトレンドをお届けしました。

この記事が、 皆さんの住まいをより楽しく彩るヒントになればうれしいです。

(写真撮影/坂田夏水)

●関連サイト
MAISON&OBJET

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