リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳~49歳の男女9000人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2026首都圏版」を発表しました。ここでは初めて発表された「得点ジャンプアップした自治体ランキング」から、上位を占めた東京区部北側エリア=“東京ノース”に注目します。
板橋区の名物商店街「ハッピーロード大山商店街」(写真/PIXTA)
大躍進した“東京ノース”の中でTOP2にランクイン
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング2026」
これまでリクルートが発表してきた「得点ジャンプアップした街(駅)ランキング」に加えて、初めての発表となった「得点ジャンプアップした自治体ランキング」。TOP10のうち、4つが東京区部北側エリア=“東京ノース”となりました。なかでも躍進したのが、1位の北区と4位の板橋区です。
なぜこの2区の人気が高いのでしょうか。その大きな理由が手ごろな住居費です。
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
都心6区との比較では家賃相場は2~3割安く、中古マンション市場に至ってはおよそ半額。同じ東京23区内であるにもかかわらず、この数字はちょっと驚きです。
さらに都心へのアクセスが良好な路線が多いことも、この2区に共通する魅力。
以下は駅別シングル向けの家賃相場です。注目してほしいのは、主に板橋区を走る都営三田線、東武東上線、北区を通る埼京線、京浜東北線、東京メトロ南北線の各駅。
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
また、この2区には、女性からの支持が伸びている共通項も。
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
さらにライフステージ別の投票者数シェアでは、シングル女性、加えて共働きファミリーからの人気も上昇しています。
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
東京屈指の商店街充実度+ユニークな創作、自然体験施設も
北区、板橋区が、特に女性、子育てファミリー層に評価される理由は何なのでしょうか。
まず考えられるのは買い物環境の充実度です。特に注目すべきは個人経営の店舗が連なる商店街の集積でしょう。事実、北区は65、板橋区は77と、都内でも屈指の高密度です。それぞれの商店街が競い合う形で独自の売り出しセールや会員向けキャンペーン、季節のイベントなどを展開。住民の利便性向上はもちろん、地域コミュニティのハブとなる側面もあります。
出典: 「SUUMO住みたい街ランキング 2026首都圏版 記者発表会」
また、体験型の子育て環境が整っていることも、女性、子育てファミリー層に支持されている要因といえそうです。
北区の公共施設「ジェイトエル」のクリエイティブルームには、3Dプリンターをはじめとした最新デジタル機器を活用し、誰もが気軽にモノづくりやアートに親しめる環境が用意されています。
埼京線十条駅前にあるジェイトエル。左はラウンジ、右はクリエイティブルーム(写真提供/北区)
板橋区では無料でヤギやヒツジ、モルモットなどの小動物と触れ合える「板橋区立こども動物園」が人気。
都営三田線板橋区役所前駅徒歩約8分の住宅街の一角にある「板橋区立こども動物園」。区内在住の小学3年生~中学生を対象に飼育や餌づくり、接客等の活動を行う「こども動物クラブ」も好評(写真提供/板橋区)
ほかに、23区らしからぬ豊かな自然体験ができる場も。北区には、自然との触れ合いをテーマにつくられた「赤羽自然観察公園」、自然環境学習の拠点として生き物観察会などが催される「自然ふれあい情報館」、板橋区には東南アジアの熱帯雨林を再現した「板橋区立熱帯環境植物館」、野菜の収穫体験や食育をテーマにしたイベントなどに参加できる「板橋区立赤塚植物園」があります。
ちなみに、北区・板橋区の両区にまたがる「都立浮間公園」には、カワセミやカモなど多様な野鳥が観察できるバードサンクチュアリや無料の釣り池、じゃぶじゃぶ池などもそろい、こちらも人気の施設となっています。
通いたくなる素敵な公共図書館の存在も共通の魅力
また、魅力的な図書館施設があることも2区共通の特徴です。
北区には、“赤レンガ図書館”として親しまれる「北区立中央図書館」。大正時代に建てられ、帝国陸軍や自衛隊が利用した赤レンガ建物の歴史的な意匠が特徴です。2025年には館内にベーカリーがオープンし、焼き立てパンやコーヒーを楽しむことができます。
北区立中央図書館の蔵書は約44万冊。王子駅から徒歩約15分の場所にある(写真提供/北区)
一方、板橋区にあるのは、公園一体型の「板橋区立中央図書館」。公園の緑とつながる自然光に満ちた空間設計は、2022年度のグッドデザイン賞を受賞しました。世界中の絵本約3万3000冊を所蔵する「いたばしボローニャ絵本館」を併設しており、特に子育てファミリーの人気を集めています。
2021年に板橋区平和公園内に移転改築された板橋区立中央図書館。東武東上線上板橋駅徒歩約7分の場所にある(写真提供/板橋区)
歴史的建造物を活用した地域活性化の取り組みも
首都圏全域に点在し、多くの人を魅了する歴史的建造物。北区、板橋区でも同様に複数の建物が見られますが、この両区ではそこを保存するだけでなく、活用して人や情報を集め、地域の活性化につなげている点がユニークです。
北区でピックアップするのは、大正時代に創業した「滝野川稲荷湯」。1930年築の宮造り建築の銭湯で、2019年に国の登録有形文化財となりました。長屋の再生を手掛けた一般社団法人「せんとうとまち」が伝統工法を活かした修復や地域住民を巻き込む運営を実施。カフェ、マルシェ、居酒屋、ワークショップなどのイベントが行われ、銭湯と地域をつなぐコミュニティ拠点として親しまれています。
左の2点は「滝野川稲荷湯」。右は滝野川稲荷湯隣の、まちに開かれた二軒長屋を再生したコミュニティースペース「稲荷湯長屋」(写真提供/せんとうとまち 撮影/TADA)
続いて板橋区は「板橋ととと」です。こちらは1650年ごろから地域の名主として親しまれてきた蓮沼家の邸宅を改装した複合施設。敷地内に母屋や蔵など計4棟の建物が配置され、東ノ蔵にはタイムトラベル専門書店utouto(ウトウト)、こだわりの焼き菓子とスペシャルティコーヒーをいただけるカフェapollon(アポロン)が入居中。2026年春には西ノ蔵をレンタルスペースとして貸し出す予定で、残る母屋+土蔵+離れ、二階屋も別用途の施設として活用するべく検討しているそうです。
アポロンとウトウトが入る東ノ蔵(撮影/SUUMO編集部)
板橋ととと正門(写真提供/板橋ととと)
西ノ蔵(写真提供/板橋ととと)
“それでも東京派”注目の大規模再開発が続々
最後に、北区、板橋区内で計画されている再開発プロジェクトについても触れておきましょう。
まず北区では、URの敷地と隣接する旧赤羽台東小学校跡地の一部を一体開発する「赤羽台ゲートウェイ計画」。タワー棟とレジデンス棟で構成される総戸数550戸の大規模プロジェクトが、2028年度に完成予定です。またこの他に、住宅約270戸を含む商住一体開発「赤羽一丁目第一地区第一種市街地再開発事業」も進められています。
次に板橋区では2つの注目プロジェクトが進行中。まず東武東上線上板橋駅周辺の「上板橋駅南口駅前東地区第一種市街地再開発事業」です。駅前への幅員16mの道路や交通広場などの整備とともに、商住一体型のタワー2街区を含む計3街区の開発を予定。完成は2027年以降順次となっています。もうひとつは埼京線板橋駅西口に直結する「板橋駅板橋口地区一体開発事業」で、こちらは2027年竣工予定の商住公一体開発。地上34階、総戸数388戸のタワーマンションで、低層階には商業施設アトレや区民プラザ、子育て支援施設などが入る計画です。
生活コストの高騰が収まらず、東京23区が住みにくくなってきたと感じる人は少なくないでしょう。ただ、それでも東京アドレスにこだわる人たちの目には、“東京ノース”の北区・板橋区は、アクセス、住居費、住環境のバランスが取れた、魅力的なエリアに映るはず。今後、この2区の人気はさらに高くなりそうです。
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