愛知県で不動産の管理・仲介を行うブルーボックスは、管理物件の空室増加に直面する中、「門戸を広げなければ、オーナーに安定した収益を還元できない」という危機感から高齢者支援に踏み出しました。見守りと保険をパッケージ化した独自の仕組みで、他社に断られ続けた高齢者の住まいを確保しています。
賃貸営業部次長の吉川裕一(よしかわ・ゆういち)さんと課長の杉原勇樹(すぎはら・ゆうき)さんに、同社が取り組む居住支援について伺いました。
「空室問題」と「祖父の住まい探し」不動産会社の中で重なった2つの動機
ブルーボックスは、愛知県稲沢市に本社を置き、一宮市、春日井市、小牧市、岡崎市など名古屋市をぐるりと囲むエリアを中心に、不動産会社7店舗を展開しています。
「名古屋市は都会であるものの、その近郊となると地方都市と変わらず、人口減少とそれにともなう賃貸物件の空室増加という課題を抱えていました。グループ会社が建築を手がけており、その物件を管理するのが当社の事業の根幹です。建物が建てば管理する物件は増えていくんですが、年月とともに古くなっていく。地域の人口が減っていくと、古い物件では空室がどんどん増えてしまって、オーナーさんに収益をお返しできません。入居する人の門戸を広げていかないと入居率を維持できないと思ったのが、高齢者支援に取り組み始めたきっかけです」(吉川さん)
築古物件の増加と人口減少が重なる地方都市では、空室率の上昇は避けられません。地域に密着する建築・不動産会社グループの管理職として吉川さんが抱いた危機感は、「このままではオーナーさんに安定的な収益を得ていただくという“不動産管理会社としての使命”を果たせなくなる」という切迫したものでした。
空室問題への危機感から高齢者支援に取り組む吉川裕一さん(画像提供/ブルーボックス)
一方、現場の担当者である杉原さんには、身近な体験がありました。
「滋賀に住む祖父母が高齢になり、岐阜に住む父が定期的に様子を見に行っていました。しかし、仕事が終わった後に通うには距離があるので、父が住む家の近くに祖父母を引越しさせようということになったんです。ただ、父の住まいはかなり田舎で、まず賃貸物件が少ない。その中でさらに高齢者の夫婦が住むという話をすると、どの不動産会社からも『ないですね』と簡単に断られてしまいました」(杉原さん)
「自分の担当エリアではないとはいえ、不動産業に携わっている私がサポートしても高齢者の部屋探しは難しい」――この実体験が、杉原さんに「同様に困っている高齢の方は多いのではないか」という問題意識をもたらしました。
吉川さんが感じていた会社の危機感と、杉原さん個人の体験。2つの動機が重なり、ブルーボックスの高齢者支援は動き出しました。
祖父の体験から高齢者の住まい問題に向き合う杉原勇樹さん(画像提供/ブルーボックス)
向き合うのは、他社で断られ続けた高齢者たちです。一般の入居者であれば住居が決まるまで半月から1カ月程度ですが、高齢者の場合は状況が大きく異なります。
「高齢者の方だと、平均で2~3カ月はかかりますね。長いケースだと半年かかったこともあります」と杉原さん。時間がかかる理由は2つあります。ひとつは、物件探しの段階で断られ続けること。孤独死や家賃滞納などのリスクを懸念し、高齢者の入居を敬遠する管理会社やオーナーが少なくないのです。
もうひとつは、長年住んだ場所から移る高齢者ならではのこだわりです。
「ご高齢の方は長く同じところに住まれていた方が多いので、広さとか、予算はこのくらいだがもう少し質を求めたい、など、ご自身の希望や予算感と市場の相場が乖離していることが少なくありません。『それだとなかなか見つからないですよ』とやり取りしていると、どうしても時間がかかります」(杉原さん)
家賃月額にプラス1200円で実現する「見守りパッケージ」
こうした背景から、ブルーボックスでは、訪れる高齢者には手間暇を厭わずに本人が納得するまで丁寧な説明やサポートを心がけるようにしています。あわせて開発したのが、見守りサービスのパッケージです。
管理会社、入居者、オーナーの3者をつなぐ独自のパッケージ設計。オーナーのリスクを補償することで、高齢者の入居をサポートしている(画像提供/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
65歳以上の入居者を対象とする見守りサービスでは、電気使用量の変化をAIで分析することで安否を見守る中部電力の「テラシテ」を導入。さらに「スムービングサービス」が付いている家賃保証会社の商品を活用しています。スムービングサービスとは、賃貸物件の入居者が孤独死などをした場合に、各種契約の解除の手続きや残置物の撤去などに対応するサービスです。
入居者のプライバシーに配慮しながら、24時間体制で異変を察知できる仕組みとなっている(画像提供/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
ブルーボックスが管理する物件では、入居者は年齢にかかわらず「24時間駆けつけサービス」などのさまざまなサービスと特典を受けられる会員制度「BLCサポート」に加入します。65歳未満の人が支払う料金は月額1800円(外税)で、65歳以上の契約者は月額3000円(外税)。この1200円の差額で、「テラシテ」と孤独死保険が提供されます。
「65歳以上の方が入居される場合は、月額1800円から3000円に変わります、と説明します。サービス内容として見守りと保険が付いていますよ、と。
サービス開始前の設計時には、入居する高齢の方から『年齢が高いと余分にお金を取るのか』などと指摘されることも想定していたんです。ところが、意外にもそのような指摘はほぼありませんでした。
他の会社で高齢での入居を断られる経験をした人たちは、希望条件に合う賃貸住宅にスムーズに入居できること自体を喜び、料金への理解につながっているのです。
丁寧な支援でオーナーの理解が深まり、年間契約数が50件以上増加
見守りサービスのパッケージと、丁寧な説明・サポートを組み合わせた対応の積み重ねは、着実に成果につながっています。
ブルーボックスでは、高齢者の入居に対する物件オーナーの不安が軽減したことで高齢者へ紹介できる自社管理物件が増加し、全体の半数程度は紹介可能に。高齢入居者の契約数は、取り組み開始後1年で50件以上増えました。丁寧な対応が必要とされるため時間はかかりますが、その分、オーナーと入居者双方の納得感・満足度は高く、サービスへの理解も深まっています。
他社で断られ続けた高齢者にも、時間をかけて寄り添う丁寧な対応が信頼を生み、契約につながっている(画像/PIXTA)
現状、これらのサービスが導入されているのは同社が管理業務の委託を受けている物件のみですが、将来的にはオーナーが自主管理している物件への展開も視野に入れています。
「弊社がこういう取り組みを進めることで、高齢者の入居が促進され、同様の取り組みを行う管理会社が増えるといいなと思っています」と杉原さん。吉川さんも「ほかの不動産会社や管理会社さんとも手を取り合って、変わっていかないといけないと思います。全面的に協力して高齢者の入居しやすい環境づくりを進めていきたい」と語ります。
地域連携にも注力。稲沢市社協がハブとなるネットワークを活用
社内の体制づくりと並行して、同社が力を入れているのが地域との連携です。愛知県の居住支援法人としての指定に向け、事業計画の策定や関係各所との調整を進めています。中でも意識的に取り組むのは、本社を置く稲沢市の社会福祉協議会(以下、社協)との強固なパートナーシップです。
同社は全国居住支援法人協議会(以下、全居協)の会員でもあることから、吉川さんは全国各地で全居協の主催するセミナーなどに参加し、多くの地域が抱える課題を目の当たりにしてきました。
「全居協のセミナーや討論会に参加すると、地域の社協さんやサポートセンターの方たちが、本当に困っていらっしゃる。社協と市役所の福祉課、あるいは地域包括センターなどは、地域によっては連携があまり強くないことも多いんです。そして福祉領域の皆さんが口をそろえて言うのは『賃貸不動産管理会社のような民間の協力がないと、住居を確保できない』ということでした」(吉川さん)
ところが、ブルーボックスが本社を置く稲沢市では、少々状況が異なります。
「稲沢市では、社協さんがハブになって市役所や国交省、弁護士などをつないでいます。稲沢市の社協さんは非常に熱心で、愛知県の居住支援法人の指定を受けています。多くの地域では行政・福祉・不動産業界などが連携するために『居住支援協議会』という正式な組織を立ち上げていますが、稲沢市ではそういった枠組みがなくても、社協さんを中心に組織的な動きができているんです」(吉川さん)
全国の社協の中でも熱心に居住支援に取り組んでいるという稲沢市社協。写真は市内の協力不動産店を交えて行われた2025年度の居住支援意見交換会の様子。縦割りになりがちな行政・福祉・不動産業界などの連携ができている(画像/稲沢市社会福祉協議会)
ブルーボックスでは、この恵まれた地域の連携基盤を活用し、行政や専門家ともつながることで組織間の壁を超えた支援が実現できているようです。
「住みやすい街づくり」への取り組みが、不動産の事業を支える
実績を積み重ねる中で「高齢者支援は社会貢献であると同時に、事業継続のための必須戦略」だという認識が、吉川さんの中で強まっていきます。
「不動産業って地域に根づいた事業なんです。なので、稲沢市の人口を増やすことが自社の利益にも直結していくし、地域にも貢献できる。
高齢者が人口の3割を超える時代に『高齢者は入居できない』と言っていたら、事業自体が成り立たなくなる。そういう危機感もあって、居住支援法人の申請前から、全国の居住支援法人協議会の会員になるなど、準備を進めてきました」(吉川さん)
一方、祖父の住まい探しにおける困難という原体験を持つ杉原さんには、また別の強い思いがあります。
「オーナーさんも安心できて、住む人も安心できる。そして自分が高齢者になったときに、ちゃんと部屋を借りられる。その条件を整えていきたい。僕らの発信で地域が変わって、誰もが安心して賃貸住宅に入居できる状態が当たり前になって、日本全体が変わっていく――その始まりになれたらいいなと思っています」(杉原さん)
地方の管理会社から始まった小さな取り組みが、やがて日本全体を変えていく。その壮大なビジョンを、吉川さんと杉原さんはひとつひとつの入居支援を通じて実現しようとしています。
空室問題という経営課題と、祖父の住まい探しという個人的な原体験。2つの動機から始まったブルーボックスの高齢者支援は、見守りサービスのパッケージ化、時間をかけた丁寧な入居支援、そして恵まれた地域ネットワークという3つの要素を組み合わせることで、成果を上げています。
「高齢者は入居できない」と拒否し続けることは、管理会社にとってもオーナーにとっても自らの首を絞めることに等しいもの。
●取材協力
株式会社ブルーボックス
稲沢市社会福祉協議会

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