2010年本屋大賞第1位に輝いた、冲方丁のベストセラー小説を映画化した「天地明察」には、日本初の和暦づくりに挑戦した実在の人物・安井算哲の物語が描かれている。

この安井算哲、天文学者としてだけでなく、数学者としても優れていたことで有名な人物。

本作でも和算(西洋数学が導入される以前の日本で独自に発達していた数学)が得意な人物として描かれ、太陽や星の動きから1年=365.2417日という、かなり正確な数値を算出している。そんな算哲が使っていたのが、赤がプラス、黒がマイナスを示す「算木(さんぎ)」と呼ばれる棒状の計算道具。映画「天地明察」宣伝担当・水野さんはこの算木について次のように話す。

「算木が映画の画面に映るのは和算史上初めてのことなんです。江戸時代当時の計算の様子はとても興味深いと思いますよ」

また、そんな珍しい道具が登場するシーンについてを、

「算哲役の岡田准一が、巧みに算木を使って計算している姿はとてもかっこ良いですよ! 岡田准一のレアなワンシーンとして、ファンは必見です」

と語ってくれた。

そんな算木に代わって16世紀に台頭したのが「そろばん」だ。国立国会図書館によるサイト「江戸の数学」によれば、そろばんは当時としては非常に簡便な計算道具で、貿易の現場のほか、土木工事や開墾にあたった人々の必需品になっていたそうだ。

また、和算家・吉田光由によって1627年に執筆された『塵劫記』には、そろばんの使用法や測量法などに加え、継子立てやねずみ算といった数学遊戯が紹介されベストセラーに。和算は当時の日本で大きなブームとなり、庶民の娯楽として親しまれた。

時を越え現代、「たけしのコマ大数学科」が深夜番組ながら人気を博すなど、再び数学に注目が集まっている。さらに最近では、数学界最大の難問といわれる「ABC予想」が京都大学の望月新一教授によって証明されたというニュースも飛び出した。

何かと活気づいている数学界。

これを機に新たなブームが訪れるかもしれない。

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