近年、田舎暮らしに憧れを抱く人が増えているが、本気で移住を実行している人は、どうやら西日本へ移り住むケースが多いようだ。なかでも熊本県は、阿蘇をはじめとした豊かな自然に囲まれており、移住先として高い人気を誇る。

そんな熊本へ移住し、そこで自給自足の生活を楽しんでいる若者たちがいる。熊本県宇城市にある「三角エコビレッジ サイハテ」で暮らす人々だ。

「三角エコビレッジ サイハテ」は宇土半島の真ん中に位置し、1万坪の敷地面積を誇る。村全体の理念として「衣食住を見直し、文化的循環型コミュニティーを創る」という考えを掲げており、それに共感した若者たちがこの地に訪れるという。

今回はこのサイハテの発起人である工藤真工さんに話を伺ったのでご紹介しよう。まずはサイハテの理念について聞いてみた。

「衣食住と文化を根源から見直し、かつ新しいやりかたを実践・提示したいというのが、ここで暮らす人たちの共通の想いです。個人的には『リーダーもルールも無く安定発展するコミュニティー』、そして『エコビレッジという名を冠した社会実験場』だと考えています」

自給自足を目指すサイハテでは、実践している農業も特徴的。持続可能な農業運営をするために、パーマカルチャーと呼ばれる概念を取り入れ、農地は土地の傾斜を利用、農業用水には地下水を使用している。

ちなみに、自給自足を目指した理由とはなんなのだろう?

「自分たちに必要なものは、自分たちの手でつくりたい。その想いが基本としてあり、あとは自然のなりゆきでこのような形になりました。農業に関してもそうですが、例えばモノづくりにおいても、『良いもの』を生産する世界中の人と繋がり、それを循環していきたいと考えています」

じつは、サイハテの住民の多くはクリエイター。

モノづくりのスペシャリストでもある。こうした自然豊かな環境で創作活動に邁進しながら、自分たちで企画したイベントも実施するなど、サイハテの生活はクリエイティブな側面も感じさせる。

現在ではメディアにも多く取り上げられ、工藤さんは新しい生き方を実践する人物としても注目を集めているが、周囲の反応はいかがだろうか?

「現在の住民は20人。サイハテに興味を持ってくれて、国内外からに訪れてくれた方は1千人を超えます。最近は、東京などの講演にも呼ばれるようになりましたし、反応は上々のようです」

このサイハテの理念は大きな反響を呼び、現在は熊本県菊池市で、また海を越えてニュージランドやメキシコなどでも、サイハテをモデルとした「村づくり」が動き出しているという。今後の活動にも注目していきたい。

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