●群馬県に、客がうなぎを捕り、自分でうなぎを焼く人気の鰻屋があるとの噂。実際に行って食べてみた。
うなぎといえば、お重に入ったうな重や蒲焼、あるいは白焼きなどを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、群馬県太田市には、自分でうなぎを焼き網の上で焼いて食べるお店があります。その名も『野沢屋 本店』。焼肉ならぬ“焼きうなぎ”が楽しめるのです。
とはいえ、俗に「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と言われるように、うなぎを焼く=職人芸。素人が焼いて美味しいのかどうか、まったく想像できません。

しかし、そんな心配をよそに、このお店、地元で愛されているのはもちろん、かつてテレビ番組『オモウマい店』に取り上げられたこともあり、県外はおろか海外からのお客さんも増えているのだとか。
一体どんなお店なのか気になり、いざ群馬県太田市にある『野沢屋 本店』に取材に行ってきました。
謎多き自分で焼くうなぎ店とは?

うなぎ屋『野沢屋 本店』は、東武伊勢崎線・太田駅から徒歩5分の場所にあります。店に入ると、70代後半の人情味あふれる店主に「よう来たな!」と勢いよくお出迎えいただきました。現在の店主で3代目、店の歴史としては100年ほど続いているそう。
いつからお客が自分でうなぎを焼くスタイルになったのか訊いてみると、「もう20年くらい前かな。お客さんが『俺たちでうなぎを焼くよ』と言って自分で焼くようになったんだ。
「さっそく食べさせていただいて良いですか?」と尋ねると「ほら、捕ってこい!」とカゴを渡されました。え、自分でうなぎをすくうの!? なんだか楽しそう! 店内には筆者の他に2組のお客さん。ややとまどいつつも、みんな笑顔で生け簀に向かいます。
自分ですくって焼くうなぎの味は?

店の前には、小さい生け簀が鎮座。ここで網を使って、うなぎを捕ります。ニョロニョロと端のほうに逃げて、なかなか捕まえられない! 普段はできない体験なのでワクワクします。ちなみに、うなぎは昔から付き合いのある川魚問屋に条件を指定して仕入れているそう。

無事に捕まえられたら、店主の元に持参して捌いてもらいます。さすがこの道60年。ものの数分でパパっと捌いてくれました。うなぎの身、肝、兜(うなぎの頭)が揃っていて、捌いたばかりの尾はウネウネと動いています。

そして、いざ焼き網で焼くわけですが、その前に店主が焼き方を教えてくれました。
「丸まっちまうから皮から15秒焼く。次にひっくり返して身の部分を15秒。これが白焼の状態。最後にタレをつけて15秒。合計で3回焼く。レアで焼きたい場合は2回、こんがり焼きたい場合は4回。好きに調整してみてくれ。肝は、5秒ごとに裏返していく。5、6回繰り返すとツヤが出てくる。そしたら食べごろだ」

うなぎを網の上で焼き始めると、香ばしい香りがブワッと立ち昇ります。

まずは、パリッと焼き上がった身の部分を、90年継ぎ足し続けているという伝統のタレにつけてパクリ。めちゃくちゃウマい……! うなぎの上品なコクと旨味が押し寄せてきます。正直、予想以上の美味しさです。
いわゆる「蒸し」の工程がないからでしょうか、うなぎってこんなに美味しかったっけ? と思うほど、とにかく素材の味がダイレクトに感じられるワイルドな旨さ。タレにもコクと奥行があって最高。いくらでもご飯が食べられそうです。

続いて、肝焼きもいただきます。ふんわりやわらかい食感の後、苦味と旨みがじんわりと広がります。

身と同じくみずみずしく新鮮で、上品な味です。うなぎの頭も独特の骨の食感が楽しく、ジューシーな旨みが口の中にあふれる逸品でした。
焼いては食べ、焼いては食べ……まさに焼肉のようにうなぎを食べ続けるうちに、あっという間に完食。けっこうな満腹感です。
「この美味しさとボリュームで2800円は驚きです」と店主に伝えると、「そうだろ。よく言われるよ、おトクだってな。自分のペースで店をやらしてもらっている分、価格にもこだわってんだ」と笑顔で応えてくれました。
まとめ

本当に素人がうなぎを焼いて美味しいのか? と半信半疑で向かった『野沢屋 本店』は、新鮮かつ極上のうなぎを味わえる唯一無二のお店でした。
人情味があって、懐の深い店主とのやりとりも楽しく、自然と他のお客さんとも会話が弾みます。うなぎを生け捕りにして自分で焼くという体験も面白かった! 群馬旅行の際のランチにぜひどうぞ。またとないうなぎ体験ができますよ。
(取材・文◎中たんぺい)
●SHOP INFO

店名:野沢屋 本店
住:群馬県太田市東本町22-6
TEL:非公開
営:11:00~14:00(うなぎがなくなり次第終了)
休:年中無休