一部でプロ級の舌を持つと噂のタクシー運転手・荒川治さんに教えてもらう「東京・B級グルメ案内」。今回は、荒川運転手が「ドライバーの安らぎの場所です」と感謝する深夜営業の立ち蕎麦屋『そばひろ』(東京・本蓮沼)へ。
深夜のご乗車ありがとうございます!
今回ご案内したいお店は、ちょっと珍しい「立ち食い蕎麦屋」さんです。お客さんのような深夜遅くまで働いている方や夜勤がある方、夜遅くまで飲んだ人たちが集まるお店。遠方の深夜族にとっては「こんなお店が家の近くにあったらいいな」と心底思う夜間営業の立ち食い蕎麦屋なんです。なんたって営業時間が夜10時から朝7時なんですよ!
夜通し乗務をしている私たちタクシードライバーの間では、かなり有名なお店です。特に今みたいな真冬の真夜中に車を走らせていると、ヒーターが効いていても気持ちが寒々してくるので、ドライバーたちはつい『そばひろ』さんに行きたくなるんです。これぞ“タクシーめし”ですね。
場所は、駅で言うと志村坂上と本蓮沼の中間くらいで、中山道沿いにあります。私が『そばひろ』さんに行くのは、深夜2~4時の間。ちなみに私は朝8時から乗務を始め、翌朝5時に車庫に戻るという勤務スタイルなので、帰庫する前の1日の「〆メシ」になっています。


立ち蕎麦屋さんなのでカウンター方式ですが、外にテラス席(そんなにお洒落ではありませんが)が2席ほどあるので、私は必ずそちらでいただきます。このガタイでしょ。立っていると疲れるし、食事は座って食べたいのでこの席はありがたいです。

ご主人は天ぷらを寡黙に揚げていて、娘さんらしき女性の方がお蕎麦を茹でて仕上げていきます。ちなみに、こちらの人気メニューは、春菊天やかき揚げを入れた温かいお蕎麦。カレーセットもあります。


大好きな「たぬきの目玉そば」

しかし、私は人気メニューには目もくれず、注文するのは「たぬきの目玉そば」と決めています。実はそんなメニューはなくて私のオリジナル。「たぬき蕎麦」(400円)に「生玉子」2つ(100円)のせてもらうスタイルです。
こちらのお出汁は濃すぎず、ほどよい関東風の味ですが、あえてそこに玉子2つをかき混ぜると、とてもマイルドな優しい味になるので大好きなんです。ちなみに、私はどこの蕎麦屋でも「たぬきそば」を注文する時は、生卵を2つ入れてもらうようにしています。

お蕎麦のほうはというと「蕎麦」の香りや食感を味わう高級系とは違い、正直言ってかなり“やわやわ”です。でも、それが深夜の胃袋にはちょうどいいんです。たっぷりの揚げ玉と生卵のコクが混ざったまろやかなおつゆと、柔らかいお蕎麦の相性は最高で、何とも言えないくらいホッとするんです。両手でどんぶりを抱えて、この優しい味のおつゆを飲み干すと、今日1日がようやく終わる。
あれ、お客さん、お客さん、寝てますか? もうすぐ着きますよ。お仕事でお疲れだと思いますので、ぜひ『そばひろ』さんのおそばで癒やされてきてください。
そうそう、もう1軒、オススメのお蕎麦屋さんが近くにあります。そこはお昼にモリモリ食べたくなるボリューム満点のお蕎麦です。そのご案内は、また次の機会に。
(構成◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:そばひろ
住:東京都板橋区大原町10-16
TEL:非公開
営:22:00~翌7:00
休:土日祝
●プロフィール
荒川治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。