●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります
川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。
“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。

第2回は佐藤さんと、JR武蔵小杉駅より徒歩3分、生産者の意図を汲み取って作られるこだわりの料理と土鍋で炊いたご飯が評判の『米と肴 みなかわ』からお届けします。
紹介するお酒は日本酒「喜久醉 特別本醸造」(青島酒造)。静岡県藤枝市に蔵元があります。
伝統と革新が織りなす至極の一杯 「喜久醉 特別本醸造」の魅力を紐解く

静岡県藤枝市の『青島酒造』が醸す「喜久醉 特別本醸造」。この日本酒をめぐり、佐藤さんと『米と肴 みなかわ』の店主・皆川さん夫妻が語り合いました。その対話から浮かび上がるのは、職人の技と情熱、そして酒と料理の芳醇なハーモニーでした。
『米と肴 みなかわ』の店主・皆川さんと佐藤さんの出会いは、偶然と必然が重なった結果でした。『地酒や たけくま酒店』とはもともと、皆川さんが前職場の居酒屋で働いていた時から付き合いがあったといいます。その頃『地酒や たけくま酒店』は「本店」のみでしたが、『米と肴 みなかわ』として独立するタイミングと時同じくして2号店となる「元住吉店」をオープン。
しかし、コロナ禍に突入。
皆川さん:佐藤さんはウチに来ては、冒険だと言っていろんなお酒を燗つけさせられます(笑)。その変態級探究心を信頼して、僕の好みも知ってくれているので色々と相談しています。
佐藤さん:僕が飲みに行く時って、来店しているお客さんを見ちゃうんです。特に常連さんが何を飲んでいて、どんな好みなのか?そういうのを知ると、あの常連さんの好みのお酒ありますよ、って提案できるじゃないですか。
雅子さん:2人の日本酒の好みが違うので、佐藤さんに相談するとラインナップ的にバランスが良くなるので助かります。
佐藤さん:単純にお店のファンと愛されているお店との心地よい関係性を傍目で見ながら飲むのは、気分が良いですよ
3人の会話からは、酒屋と飲食店の深い信頼関係が垣間見えます。
「喜久醉 特別本醸造」の魅力

「艶がある」と佐藤さんは表現します。
「いろんな要素があると思いますが青島酒造では、大井川系の南アルプス伏流水を汲み上げているので、蛇口を捻るとジャバジャバ水が出てくる環境なんです。ほとんどミネラルがなくて、ものすごいなめらかなんです。そんな水でお酒を仕込んでいるために、口当たり、喉越しの質、香りが控えめでしっとりと寄り添ってくれるような色気を感じるお酒です」
皆川さんは「大好きなお酒で、とてもバランスがいい」と評します。
「料理の幅が広がります。

まずは、「鴨の粕漬け」。
身の締まった鴨を噛めば肉の旨みはもちろん、ほんのり酒粕の香りが鼻を抜ける。わさび正油のアクセントが抜群。わさびは多めがいい。「喜久醉 特別本醸造」を一口。間違いない。

トルコ料理からインスピレーションを受けた創作料理。サバの旨い脂とじゃがいもの甘み、それらをまとめるバターのいい仕事。「喜久醉 特別本醸造」を口に含めば、これがバターとは違った別ないい仕事をする。
季節を感じる食材へのこだわり

『米と肴 みなかわ』では、契約農家から直接仕入れる季節の食材にもこだわる。
「契約農家さんの食材を使う、ということを徐々に増やしています。今契約しているトマト農家さんは5月下旬までで品質管理ができなくなるという理由で夏に収穫しないんです。お客さまにも夏こそ『冷やしトマト』をメニューにしてと言われるんですが、できません(笑)。レンコン農家さんとも契約しているんですが、収穫できる時期だけメニューにする。そういうことを大切にしていきたいんです。その方が季節感、この時期だから食べられるものがある、という状態を自然に作れますし、なにしろおいしい。生産者さんの意図を汲み取って料理をして、そのおいしさをお客様の口に運びたいなと思っています」と皆川さん。
温度による味わいの変化

「喜久醉 特別本醸造」は温度によっても表情を変えます。「40度くらいの、火照った感じがちょうどいい」と佐藤さん。
伝統を守り、進化を続ける『青島酒造』

「お米の洗い方で味が決まると言っていました。吸水時間、触った感じでの糠の取れ方で判断するので、洗米機は使わずに必ず手作業で行うそうです。そうすると、発酵する時の泡の色と音が違うとも言っていました。言ってしまうと、安いお酒ですよ。
佐藤さん:青島酒造の今の杜氏、青島孝さんは一度家を出て、ニューヨークで金融の仕事をバリバリしていた方なんです。酒造りに戻るきっかけとなったのが、アメリカでの膨大な仕事、素早く過ぎていく時間の中にいると、日本人として大事なことを見失っているように感じたそうです。一度離れた家業の酒造りも日本文化。そこに立ち戻ることで改めて日本の風土、文化を見つめていきたいと(今では蔵元としての経営、杜氏、米作りの三刀流)。季節の話をすると、日本酒は折々で味の変化を楽しめる飲みものですが、青島酒造では季節酒としての販売はしません。新酒を搾った時期の味、貯蔵した秋あがりの味。青島さんにとっての季節酒はそのくらいのものです。それってもう、単なる季節の移ろいですよね。
皆川さん:そこらへんにもストイックさを感じますよね。格好いい!
佐藤さん:ベースの味わいも変えないような酒造りもされています。米の出来や気候変動など、酒造りに影響を及ぼすことって毎年変わって起こりうるはずですが、それでも味わいを変えないために自分たち周りが変わっていく必要性を常に大事にされています。
皆川さん:そういう話を聞くと、ちゃんと売らなきゃ、美味しい料理を出さなきゃって思いますよね。作り手の想いを踏みにじってはいけない。
佐藤さん:喜久醉の味わいを表現するためには、美しい日本語を当てはめたくなります。皆川さんも僕も、和食や日本酒と関わってしまったばっかりに、日本文化の継承を課せられているわけで(笑)。『米と肴 みなかわ』でお客さんが楽しそうに日本酒を飲んでいる姿を見ると嬉しくなります。文化を守ってくれている、繋いでくれているって。
まとめ
「喜久醉 特別本醸造」を通じて垣間見えたのは、日本の酒造りの奥深さと、それを支える人々の情熱でした。酒蔵、酒屋、飲食店、そして生産者。それぞれの想いが重なり合って、私たちの舌を楽しませてくれている。
この一杯に込められた物語を知れば、さらに深い味わいが感じられるはず。
『地酒や たけくま酒店』と『米と肴 みなかわ』のおいしい関係、いかがでしたでしょうか。
次回はどんなお酒とどんな飲食店が登場するか?お楽しみに。
*みなさんの好きなお酒の銘柄を教えてください。好きなお酒の思い出、エピソードなどもあると思います。是非、『好きなお酒の銘柄』を下記のフォームにお寄せください。
●『好きなお酒の銘柄』書き込みフォーム
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『米と肴 みなかわ』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「喜久醉 特別本醸造」一杯サービス!
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●SHOP INFO

米と肴 みなかわ
住:神奈川県川崎市中原区新丸子町915 紫扇マルエスビル20
TEL:070-1525-0521
営業時間:15:00~23:00(L.O22:00)
定休日:水
https://www.instagram.com/kometosakana_minakawa/
*営業時間などは店舗SNSでご確認ください
●SHOP INFO

地酒や たけくま酒店
本店
住:神奈川県川崎市幸区紺屋町92
TEL:044-522-0022
元住吉店
住:神奈川県川崎市中原区木月3丁目10-17
TEL:044789-5561
オンラインストア
(企画・取材◎ヨネダ商店)