●年間700杯以上を食べ歩く“ラーメン官僚”こと田中一明氏が、日本全国のローカル・ラーメンの最新事情&行く価値のある名店をご紹介。今回は千葉県のラーメンシーンに迫ります。
千葉県は全国第6位の人口規模(約630万人)を誇る「大県」だ。人口規模に比例して、実力店・人気店として位置付けられるラーメン店の数も極めて多い。
千葉県のラーメンシーンを読み解くに当たっては、千葉市を中心に、その西側に位置する東葛、湾岸、北総を〈西部〉、東側に位置する九十九里、中房総、南房総を〈東部〉と考えれば、千葉のラーメンシーンの全体像が見えてくる。

【1】東京に近接し、都内と同質のラーメンシーンが展開される〈西部〉
⇒地理的にも東京の延長線上にあるため、都内のラーメン好きが注目するような実力店が多い。例えば、都内の実力店で修業した人が千葉県で店舗を構えるのも西部が多い
【2】東京から距離があり、地域独自の麺文化が展開されている〈東部〉
⇒東京から距離があり、都内の空気を感じさせる店はそう多くない(市原市、東金市、茂原市など一部を除く)が、土地の風土に根差した地方色豊かな“地元の名店”が各地に点在。「竹岡式ラーメン」、「勝浦タンタンメン」、「アリランラーメン」といった千葉のご当地麺はすべて〈東部〉発祥
【3】西部と東部、双方のラーメン文化が入り交じる〈千葉市〉
⇒〈西部〉と〈東部〉、両者の要素が絶妙な塩梅でミクスチャーされたエリア

上記の3つの要素を併せ持つのが千葉県のラーメンシーンと言えるだろう。その中から今回は、前述のカテゴリーで言えば〈西部〉エリアに属する松戸市の『ら~麺 瑞藤(みづふじ)』をご紹介したい。
都内で研鑽を積んだ店主による至極の一杯

『ら~麺 瑞藤』が松戸市にオープンしたのは2024年11月22日。店主の坂本氏は、都内を代表する名店のひとつ『麺屋武蔵』で長年にわたり研鑽を重ね、『武蔵武骨』の店長を務めた経験もあるベテランラーメン職人。
坂本氏が手掛けるのは、ラーメン職人としての自分のルーツを具現化させた1杯。「スープの素材のひとつとして、『麺屋武蔵』創業時におけるトレードマークだったサンマ節を使用し、天然素材の等身大のうま味だけをかけ合わせてスープをつくり上げること」。それが、同氏のこだわりだ。
現在、同店が提供する麺メニューは、サンマ出汁ベースの「醤油」、「塩」、「背脂」の3種類。いずれの商品も、新店とは思えないほどの完成度を誇るが、私のオススメは、店側も推している「醤油」だ。

スープを構成する素材は、サンマ節をはじめ、鶏(老鶏の丸鶏・鶏ガラ・モミジ)・豚(ゲンコツ・豚足)・焼きアゴ・鰹・昆布・煮干し・シイタケなど。多種多様な天然素材を、店主が望むうま味が的確に引き出せるよう素材の分量に気を配りながら寸胴で丁寧に炊き上げる。
こうして完成したスープは、すすり上げた瞬間、サンマの艶やかな香気が鼻腔を直撃。その余韻に浸る間もなく、各々の素材のうま味が手を取り合い、舌上で一体化。膨らみのあるリッチなうま味が快楽中枢を直撃し、レンゲを持つ手を止めさせない。このスープに合わせる名門『菅野製麺所』の手揉み太麺も、モッチリとした麺肌が口内を幸福感で満たし切る絶品だ。
都内の名店で培った技術が惜しげもなく投入された、千葉県西部ならではの1杯。ぜひ足を運び、珠玉の味わいに舌鼓を打ってもらいたい。
●SHOP INFO
ら~麺 瑞藤
住:千葉県松戸市上本郷3386
TEL:070-3307-1388
営:11:00~20:30
休:水曜、第2・第4火曜
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●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。