●東京生まれ東京育ち。JR中央線沿線の飲み屋をこよなく愛するライター・松田義人による中央線一人飲み案内。
「中央線沿線の3大焼鳥屋」と言えば、吉祥寺『いせや』、高円寺『大将』、そして西荻窪『やきとり戎』ではないでしょうか。
西荻窪の南口のディープな商店街・柳小路に複数の店を構え、通称「戎通り」と呼ばれるほど地元で親しまれる一方、北口にも店を構え多くの酒飲みたちの喉を潤してきました。筆者も例外ではなく、かつては週2回のペースで通っていたほど。
もちろん一人飲みもOK。特に北口店は、巨大な“コの字型”のカウンターが特徴で、団体客よりもむしろ一人飲み客のほうが多い印象です。今回は『やきとり戎』北口店へ、久しぶりに一人飲みしに行ってきました。
20年前は最低でも「週2回」は通ったが、果たして今は?

実は筆者「中央線沿線の3大焼鳥屋」のいずれの店にも思い出があるのですが、特に思い出深いのが『やきとり戎』です。20代の頃から通い始め、奥さんとの初デートもこの店でした。以来、通い続け当時の店員さんや常連さんとも顔見知りに。

出版社を退職後フリーランスになり、中央線カルチャーの不定期ムックを編んでいたことから、西荻窪のプラットホーム脇のマンションに事務所を構えた時期がありました。駅近だったこともあり、ふいに「近くに来た」という友人が訪ねてきては仕事をサボって『やきとり戎』で宴会に至る……30代はそんな日々を送っていたため、最低でも週2回は通っていました。
ただし、これももう20年ほど前の話。

西荻窪的には夜遅くにあたる21時過ぎであり雨ということもあってか客足は少なめですが、煌々と光る『やきとり戎』の看板と店構えも健在。酒飲み目線で言えば、西荻窪の街の温かみを『やきとり戎』が顕著に示してくれているように思うのでした。
一人飲み客が団体客よりも多い?『やきとり戎』北口店

西荻窪の南口の戎通り、そして柳小路のディープ飲み屋街の今をぐるっと偵察した後、北口へ。『やきとり戎』の中でも最もよく通った北口店へ。入り口は“コの字型”カウンターの2つの角にあたる2カ所にあります。
やや重い木製の引き戸をガラガラと開けると、スタッフが威勢よく人数を聞き、案内してくれます。おおむね“コの字”周辺が一人飲み客スペースで、その奥にいくつかのテーブルがあり、ここが団体客用スペースです。

一人飲みスペースでは、酒を飲みながら読書する人などが昔からいて、文化的な雰囲気がある中央線沿線らしい光景ではありますが、正直、酔っている状態で文章の内容が入ってくるってすごいなぁ、と感心します。
さて、『やきとり戎』は焼鳥、焼きとん類がかなり充実しているだけでなく、惣菜系の居酒屋メニューも豊富。その日によってメニューが異なる一方、いずれも安くて美味しいのがありがたいです。

大衆酒場の中にはおつまみをおざなりにする店も少なからずありますが、その点『やきとり戎』は抜かりなし。惣菜系メニューも絶品揃いです。

さて、まずはおでん(450円)と酎ハイ(370円)をオーダー。閉店間際に頼んだとしても、煮込まれすぎていない、さっぱり優しいお出汁の優しいおでんがいただけます。これをおつまみに、まずは酎ハイをグビグビっと飲み干しました。
一見さんにも優しい一方、厳しい「ハウスルール」も存在

酎ハイでエンジンをかけたところで、続いて焼酎(ストレート・240円)をオーダー。小さな受け皿に乗せられたグラスに、スタッフが並々注いでくれるスタイルで、お皿にあふれた焼酎をズッとすすっていただきます。
この焼酎は、その名も「戎」という宝焼酎のもの。クセのない甘みある味わいで一度「その小瓶ごと売ってくれ」とスタッフに頼んだことがありましたが、「売っていないし、どこでも買えないよ」と断られました。
この焼酎をチビチビ飲んでいると、この『やきとり戎』、そして西荻窪での思い出がどんどん蘇ってきて気づけば2杯。
一見さんも快く迎えてくれる懐の大きい『やきとり戎』ですが、唯一厳しい「ハウスルール」があり、「日本酒・梅酒は5杯まで。焼酎系は3杯まで」しか提供してもらえません。

最後の1杯を飲み始めたところで、スタッフに名物メニューの「イワシコロッケ」(ハーフ・300円)をオーダー。やはり『やきとり戎』が大好きな家族へのお土産に包んでもらい店を後にしたのでした。
(取材・文◎松田義人(deco))
●SHOP INFO
やきとり戎 西荻北口店
住:東京都杉並区西荻北3-19-12
TEL: 03-3390-8445
営:16:00~22:30(22:00LO)
土12:00~22:30(22:00LO)、
日・祝日12:00~21:30(21:00LO)
休:火曜