●東京生まれ東京育ち。中央線の飲み屋をこよなく愛するライター・松田義人による中央線一人飲み案内。
中央線沿線の各駅には、一人飲みできる酒場が複数ありますが、もちろんエリアごと、各店ごとにその様相は異なります。中でも、特に古くから街の文化に溶け込み、地元酒場として古くから定着しているのが、高円寺の『大将』です。

JR高円寺駅前の『大将 本店』を筆頭に、南側の線路沿いの飲み屋街にある2号店、北口エリアにある3号店と、計3店舗を展開する焼鳥店で、各店ともに微妙に営業時間や定休日が異なるものの、おおむね明るい時間帯から酒を飲めます。もちろん一人飲みもOK。今回は14時オープンの『大将』本店へ一人飲みしに行くことにしました。
高円寺なら昼からの女性一人飲みも大丈夫

JR高円寺駅の南口を出て、バスロータリーの向こうに見える赤いオーニングの店、それが『大将』本店です。店内だけでなく、店外にもビールケースを積んだテーブルと椅子が置かれ、外でも一杯やれる仕組み。
筆者が訪れた14時半には、すでに女性の一人飲み客が外で焼鳥をおつまみにビールを飲んでいました。

いかにも高円寺的な光景で、これをとがめたり白い目で見る人がいないのは高円寺という街の懐の大きさでしょう。

さて、筆者も先客の女性にならい、瓶ビール(赤星・580円)と焼鳥おまかせ(タレ・3本400円)をオーダー。まずは ビールをグラスに注いで一人で乾杯。

テーブルの向こうには総武線が見え、さらにその手前の道路は、学校帰りの小学生、サラリーマン、夕飯の食材を買いに来たとおぼしき女性まで様々な人が行き交います。

そんな中、“昼間から呑気に酒を飲む”というこの背徳感は、筆者個人的に最高のおつまみ。
アッサリめのタレが『大将』流。素材の味を存分に引き上げる

さて、肝心の焼鳥は比較的大ぶり。『大将』のタレはサラッとしていて、しつこくないのが特徴。素材の味を存分に楽しめる味わいで、焦げも少なく焼き手のスタッフの丁寧な仕事が垣間見れます。
かつて存在した『大将』の「バンドマンお断り」ルール

ところで筆者は30年以上前の学生時代、高円寺には週に何度も足を運んでいました。高円寺のライブハウスで毎月筆者主宰のパンクバンドのイベントを開催していた時期があり、友人たちのバンドが別のライブハウスで演奏することがあれば、それを観に行くことが多かったからです。
そして、ライブの前後は友人らと居酒屋で宴会!
……となるわけですが、当時の『大将』は「バンドマンお断り」を死守しており、楽器を持っていたり、髪を染めている客は帰らされました。当時はバンドブーム、中には酒に酔って大暴れする血気盛んなパンクロッカーもおり、こういったトラブルの繰り返しで「バンドマンお断り」に至ったのでしょう。
筆者は、楽器も持たず髪も染めておらず、一見バンドマンには見えない風貌だったためライブ前などに『大将』に一人で通い、そんな一人飲みの楽しみを覚えたのも、ここ『大将』が初めての体験でした。
ユルくて懐のデカい「高円寺ならではの空気」

今も高円寺界隈にはライブハウスがありますが、粗暴なバンドマンが減ったことで、一時期から『大将』の「バンドマンお断り」は解禁。今では若者と年配客が共存して飲める店となりました。
そして、筆者が飲んでいたこの日も、高円寺の古着屋スタッフ風、大学生風の若者が続々とやってきて、のんびりと昼飲みを楽しんでいました。
(取材・文◎松田義人(deco))
●SHOP INFO
大将 本店
住:東京都杉並区高円寺南4-27-9
TEL:03-3312-1047
営: 14:00~0:00(23:00LO)
休:水