●カレー激戦区で異彩を放つハヤシライス専門店。大阪・中津の隠れた名店『林家とん平』の誕生秘話と唯一無二の味わいを探ってきた。
大阪・梅田から徒歩圏内でありながら、昭和の雰囲気を色濃く残す街「中津」。 細い路地や長屋が連なる下町情緒あふれる風景が広がり、近年では古民家をリノベーションしたカフェや雑貨店が増え、若者を中心に注目を集めています。

そんな中津に、全国的にも珍しいハヤシライス専門店『林家とん平』があります。
「使っているお肉はね、豚肉なんです。ハヤシライスの”はやし”と豚肉の”とん”で林家とん平」と気さくなご主人が店名の由来を教えてくれました。コンセプトは「酸味を抑え、コクを追求し、ホロホロに炊いた豚肉を使った"らしくない"ハヤシライス」。一般的なハヤシライスとは一線を画す逸品です。
40年の歴史を持つ名店が、新しい形で中津に復活

昼はハヤシライス専門店、夜はイタリアンレストラン『トラットリアあるふぁ』として営業するこちらのお店。長年イタリアンに携わってきたご夫婦が切り盛りしています。
もともと『トラットリアあるふぁ』は梅田の地下街で40年間営業を続けていましたが、2020年のコロナ禍で地下街がクローズし、移転が決定。移転後の営業スタイルを模索する中で『スパイスカレー専門 梵平』『DIAMOND BIRYANI』など、中津で複数の人気カレー店を営むご子息・奥山浩平さんに相談したところ、ランチタイムには週4日限定のハヤシライス専門店をオープンすることに。料理は以前から共に店を支えてきた坂下未来シェフが作り、奥様が盛り付け、ご主人が提供を担当しています。
メインは濃厚デミグラスの「ハヤシライス」と、甘辛な「カレーハヤシライス」

メインメニューは「ハヤシライス」と、大人味の甘辛カレー「カレーハヤシライス」。トッピングは粉チーズと卵(全卵/卵黄)、カレー風味の駄菓子・BIG KATSU(ビッグカツ)の3種類があります。

お皿にはルウとご飯、卵黄が盛られていて、副菜はコールスローとポテトサラダ。豚肉がとにかくほろほろで、口の中でとろけるやわらかさです。ハーブと一緒にじっくり煮込んで細かくなった豚肉がどっさりと入っており、ところどころにゴロっとした塊もあります。
ハヤシライスといえばトマトの酸味を効かせたものが多いですが、こちらは濃厚で深みのあるデミグラスソースがベース。卵黄を崩して食べるとまったりとしたコクが加わり、味わいがまろやかになります。
スパイスペーストで楽しむ大人の味変

「これをお使いいただきますとスパイスカレーに変わります。本格的な味ですよ」とおすすめされた味変スパイスペースト。インドの炊き込みご飯・ビリヤニを提供する姉妹店『DIAMOND BIRYANI』で作られています。
少し加えてみると、鼻に抜ける爽やかな香りと辛み、旨みが複雑に合わさってまた違った美味しさに。普通のカレーでもスパイスカレーでもない、ハヤシライスでもない。全てを良いとこどりしたような贅沢な味わいが楽しめます。卓上には「辛増しチリパウダー」も置かれているので、辛党も満足できるはずです。
カレー激戦区・中津で「ハヤシライス」を選んだ理由
大阪の中でも、有名なスパイスカレー専門店が軒を連ねる中津エリア。
「カレーライスやったら皆さん今までのところに行きますから。一般的なハヤシライスはトマトベースで甘酸っぱくて、そしてお肉が牛。それをここでお出ししても、たぶん皆さん『なんやこんなハヤシライス』ってなるでしょ」とご主人。カレー激戦区での差別化を図るため、あえて違うものを選んだそうです。
「なかなかでしょ。皆さん美味しいって言っていただきますね」と嬉しそう話す姿が印象的でした。
ここでしか出会えない記憶に残る味
オープンから4年になる『林家とん平』。週4日営業、1日30食限定のハヤシライスはテレビでも紹介され、奈良や神戸から訪れるお客さんもいるのだとか。こだわりが詰まった逸品をぜひ味わってみてください。
(撮影・文◎安達春香)
●SHOP INFO
林家とん平
住:大阪府大阪市北区中津3-5-12
TEL:090-5732-9169
営:11:00~14:00(売り切れ次第終了)
休:日・月・金曜