●年間700杯以上を食べ歩く“ラーメン官僚”こと田中一明氏が、日本全国のローカル・ラーメンの最新事情&行く価値のある名店をご紹介。今回は兵庫県のラーメンシーンに迫ります。
兵庫県の総人口(約532万人)の約28%(約149万人)は、県庁所在地・神戸市に集中している。そして、兵庫県の人気ラーメン店も、神戸市を中心に、瀬戸内海沿岸部に(人口に比例する形で)集まっている。
兵庫県のラーメンシーンを知るには、神戸市を中心に、瀬戸内海沿いに東西へと広がる自治体(西宮市、尼崎市、伊丹市、明石市、加古川市、姫路市など)に足を運び、気になる店を食べ歩けば、ある程度の概要は把握できる。

ちなみに、私は関東を拠点とするラーメンマニアだが、実家は兵庫県にあり、帰省する度に同県のラーメンを食べ歩いてきた。そんな私の考える必訪店は以下の通り。
・神戸市:『もっこす総本店』、『丸高中華そば神戸二宮』、『つけ麺繁田』、『中華蕎麦しげ田』、『みそラーメンさつき』、『中華そばいまい』
・西宮市:『ラーメンたんろん』、『オカモト醤油ヌードル』、『らーめん専門和海』
・尼崎市:『らーめん専門和心』、『ぶたのほし』、『麺舎ヒゲイヌ』
・伊丹市:『がふうあん』、『ClutchHitter』
・明石市:『ななまる』
・加古川市:『もんど』、『二代目おかだラーメン』
・姫路市:『新生軒』、『麺屋本倉』
・揖保郡太子町:『中華そば麦右衛門』
ただし、瀬戸内海沿いだけではカバーできない例外が、西脇市・加東市とその周辺エリア。この地域には、兵庫随一のご当地麺〈播州ラーメン〉が根付いている。播州ラーメンとは、スープの甘みが非常に強い個性的な醤油ラーメン。代表店は、西脇市の『西脇大橋ラーメン』、『内橋ラーメン』、加東市の『大橋中華そば』、『紫川ラーメン』など。ラーメン好きなら、一度は食べてみてほしい。
そのほか、但馬、丹波、淡路エリアは、瀬戸内海沿岸部と比べるとラーメン店がかなり少ないが、丹波篠山市の『麺屋粉哲』、『Sらーめん丹波篠山本店』、淡路市の『中華そばいのうえ』など、スポット的には実力店が存在する。

今回は、私が2025年に入ってから食べ歩いた店の中で、ラーメンの味のみならず、アクセスの良さ等も加味して、推奨に値すると感じた店舗をご紹介したい。
丸高中華そば センタープラザ西館店

今回ご紹介するのは、2024年9月23日に、三宮駅から徒歩5分の飲食店街「センタープラザ西館」の地下1Fにオープンした『丸高中華そば センタープラザ西館店』。
ラーメンマニアであればご存知の方も少なくないと思うが、『丸高中華そば』は、神戸市を代表する〈和歌山ラーメン〉の専門店。特に本店である『二宮店』は、2000年4月の創業以来、閉店まで行列が絶えない超人気店として、兵庫県、特に神戸のラーメンを語る際には絶対に欠かすことができない存在だ。
もう少し詳しく述べると、同店は、和歌山県のご当地麺〈和歌山ラーメン〉の伝説的名店『本家アロチ丸高中華そば』(和歌山市)の系譜に連なる1軒で、和歌山まで足を運ばずとも神戸で本場の味が堪能できるという、非常に貴重な店舗。
これ以上、『丸高』の歴史に踏み込むとキリがなくなるのでこの程度に止めておくが、いずれにせよ、『丸高中華そば』は、〈和歌山ラーメン〉はおろか、日本のラーメン史を語る上でも避けて通ることができない最重要店舗のひとつだ。
が、今回ご紹介する『センタープラザ西館店』は、結論から先に申し上げれば、『丸高』の屋号を冠しながら〈和歌山ラーメン〉を提供しない、完全な新ブランド。

同店で提供する麺メニューは、『センタープラザ西館店』用に新たに開発された「出汁そば」と「油そば」の2品。屋号からは、新ブランドであるかどうかを判別できないため、〈和歌山ラーメン〉を提供していると勘違いしてやって来るお客さんもいる模様。くれぐれもお間違えのないようご注意願いたい。
さて、同店で私がオススメしたいのは「出汁そば」。

「出汁そば」のスープは、鰹出汁を主軸として構築されたもの。
チャーシュー、メンマなど、トッピングの完成度も高く、650円という低価格に見合わないハイクオリティな1杯に仕上がっている。
●SHOP INFO
丸高中華そば センタープラザ西館店
住:兵庫県神戸市中央区三宮町2-11-1 センタープラザ西館B1
営:11:00~15:15(土日祝~15:30)
席数:カウンター10席