●那覇市で35年続く朝食の名店『金壺食堂』の魅力をご紹介します。
沖縄ではここ数年、朝食営業を行うお店が圧倒的に増えています。
朝から沖縄グルメが楽しめる店が増えたことを喜びつつ、今回は35年続く朝食の名店をご紹介しましょう。それが那覇市にある台湾精進料理の専門店『金壺食堂』です。
現在のオーナー川上末雄さんは2代目。台湾出身のお母様が作ってきた料理を受け継ぎ、玉ねぎやニンニクといった香りが強い野菜類も使わない、優しい味が評判です。
那覇市の中心部・国際通りにほど近く、陶器店がならぶ「壺屋やちむん通り」の入り口あたりに、金壺食堂はあります。
目覚める前の市場の片隅でひっそりと開店し……と言いたいところですが、営業開始の朝8時には名物のちまきを買い求めるお客さんで大賑わい。
テイクアウトで10個20個は当たり前、かくいう私も東京に戻る当日にピックアップできるよう、事前注文を欠かしません。
1日300個が売り切れるちまきの魅力とは?

店内でいただくなら、600円のバイキングと300円のちまきのセット注文がおすすめ。バイキングは常時10種類程度の菜食メニューとスープが食べ放題です。
最初は味が薄いと感じる人もいるかもしれませんが、二口、三口と進むにつれ素材の滋味深さが体に沁み渡ります。

昆布や椎茸の出汁が効いた野菜スープは、動物性のうま味が入っていないことに何の不足も感じません。

大人気のちまきは1日300個作っても売り切れるほど。台湾から取り寄せる干し椎茸や大豆ミートがたっぷり入った大きなちまきです。

「笹の葉も台湾から(仕入れている)。台湾のものを使わないと、この味にならない」川上さんはそう言います。
米を炊く、ピーナッツを蒸す、笹の葉をお湯で戻す、具材を調味する。仕込みから完成までに2日を要し、全ての工程は手作業で行われます。

「食べる人に笑顔になってもらいたい」
川上さんが丁寧に食材と向き合う姿を見ていると、その想いがひしひしと伝わってきます。一つひとつの工程に込められた愛情が、言葉を超えて語りかけてくるようです。

そして料理の味わいもさることながら、川上さんの温かな眼差しや口調も絶大な癒しポイント。初めての訪問でも、通い続けてきた友人のように優しく迎え入れてくれます。
「またここに帰って来たい。この味に癒されたい」そんな気持ちになれる朝ごはんを知ってしまったら「最終日は金壺食堂を目当てに那覇に泊まる」、それが沖縄旅の定番になること間違いナシでしょう。
●SHOP INFO
金壺食堂(きんつぼしょくどう)
住:沖縄県那覇市壺屋1-7-9
TEL:098-867-8607
営:8:00~15:00(14:30LO)
休:木曜
※日曜はちまきのテイクアウト販売のみ(8時~12時)
●著者プロフィール

玉城久美子(たまきくみこ)
1級フードアナリスト。沖縄県那覇市出身。「人と地域を食でつなぎ新たな価値を生む」をモットーに執筆や食文化講座を行うほか、食イベントの企画や販路拡大など、自治体や企業のマーケティング支援に携わる。