●大阪の老舗昆布屋『神宗 淀屋橋本店』。伝統の味を活かしたにゅうめんと、昆布の煮汁を使ったソフトクリームをご紹介します。
あるものを食べると、誰かの顔やしぐさを思い出すーーそんな経験、ありませんか?
筆者は昆布の佃煮を食べると、今年94歳になる祖母のしわくちゃの手と優しい笑顔が浮かびます。祖母の家へ遊びに行った帰りに「あんた、これ持って帰り」と紙袋におかきや明太子、みかんなどが詰められていく中に、大阪の名店『神宗(かんそう)』の昆布が入っていました。
1781年創業の老舗昆布屋『神宗』は、ガイドブックにも載っている人気店。全国に21店舗を構えていて、オンラインショップもありますが、大阪・淀屋橋にある本店限定で同店の商品を使った料理が食べられます。本格的な出汁で味わう「にゅうめん」や、塩昆布の煮汁を使ったスイーツがあると知り、気になって行ってみました。
江戸時代の町家を再現した『神宗 淀屋橋本店』

オフィスビルの1階にある『神宗 淀屋橋本店』。江戸時代の町家を再現しているらしく、入り口をくぐると静かな空間が広がっています。大きなガラス窓から陽が差し込む明るい雰囲気で、右側が売り場、左側がカフェスペースに分かれています。
平日の11時ごろ訪れると先客は一人だけ。「平日の昆布屋さんなんて閑散としているだろうな」と思っていたのですが、次々と人がやってきて気づけば席が埋まっていました。常連らしきお年寄りからサラリーマン、OLまで客層は広く、みんなサクッと食べてはちょっと商品を見て帰っていく。祖母からもらう特別なものだと思っていた『神宗』が、近所の人たちの日常に溶け込んでいました。
人気のメニューを一度に。出汁のおいしさを味わう「にゅうめん」、おにぎり&塩昆布

注文したのは「にゅうめん すっきり出汁(ミニおにぎり付)」。店頭で販売している商品を使っているので、気に入ったらその場で購入できます。ひと口すすると上品な出汁の香りがふわっと鼻をくすぐり、思わず深呼吸。出汁には天然真昆布とかつお本枯節を使用しているらしく、お吸い物のようなすっきりとした味わいです。

そうめんは三大産地である香川県・小豆島の手延べ麺。『神宗』の出汁に合うよう配合された特注品で、豊かな小麦の香りとツルツルとした舌ざわりがたまりません。トッピングのとろろ昆布、旨みと甘みを凝縮させたシャキシャキの乾燥ねぎ、出汁が染み込んだふわりとした油揚げ。それぞれがお互いを引き立て合っています。

おにぎりの横に添えられているのは、筆者の思い出の味「塩昆布」。一般的な細切りの塩昆布ではなく、醤油でしっとりと炊いた佃煮です。北海道産の肉厚な昆布と爽やかな山椒の実が使われていて、これさえあればご飯がいくらでも食べられます。
『神宗』の人気商品を一度に楽しめるこちらのセット。
なお、にゅうめんは平日の11:00から提供していますが、14時前には完売していることも。確実に食べたい方は早めに訪れるのがおすすめです。
“甘じょっぱさ”がクセになる新感覚ソフトクリーム

次に頼んだのは「塩昆布煮汁ソフトクリーム(五感「こぶしゃり」付)」。名前の通り、塩昆布の煮汁を使ったちょっと不思議な一品です。少し茶色がかったソフトクリームの横に、粒感がしっかり残った大納言小豆が添えられています。個包装のクッキー「こぶしゃり」に加え、クリームチーズと塩昆布をのせたクラッカーも付いてきました。

塩昆布とアイスって合うのかな……と恐る恐る食べてみると、ミルクのまろやかな風味のあとから、ほんのり甘じょっぱさが広がります。バニラアイスにみたらし団子のタレをかけた感じに近いかもしれません。がっつり昆布が主張するのではなく、味に深みを与えていて、まったく違和感のない和スイーツに仕上がっています。

セットの「こぶしゃり」は、昆布出汁醤油とお米のクッキー。国産米100%で作られたお米パフの香ばしさと、サックリ軽い歯ざわりが楽しめます。ソフトクリームもこぶしゃりも、どちらもほのかに塩気が効いていて甘すぎないのがうれしい。
伝統と新しい味を求めて

240年の伝統を守りながら、新しい味を追求し続けている『神宗』。長年愛される理由を垣間見たような気がして、なんだかうれしくなりました。出張や観光で大阪を訪れた際はぜひ立ち寄ってみてください。
●SHOP INFO
神宗 淀屋橋本店併設カフェ
住:大阪市中央区高麗橋3丁目4番10号(淀屋橋センタービル1階)
TEL:06-6201-2700
営:月曜~金曜10:00~17:00(L.O.16:30)、土曜10:00~15:00(L.O.14:30)
※にゅうめんは月~金、11:00~無くなり次第終了
休:日・祝日
https://kansou.co.jp/