⚫︎蕎麦が好きでお酒が好きな小宮山雄飛さんが、美味しいお蕎麦屋さん、そして蕎麦屋呑みの魅力を伝える連載。今回は百名店にも選ばれ、すだち蕎麦の名店として有名な『東京 土山人』です。
夏になると食べたくなるお蕎麦がある、それは『東京 土山人』の「冷かけすだち蕎麦」。
輪切りのすだちが蕎麦の上にびっしりと並べられた、見た目にも涼しい一杯。今年も涼を求めて『東京 土山人』へ伺いつつも、はやる気持ちを抑えて、まずは蕎麦前から。

まずは1番人気の「だし巻き玉子」から味わう

数ある蕎麦前の中から、絶対頼みたいのが、「だし巻き玉子」。もともと兵庫県・芦屋発祥のお店なので、だし巻きは東京に合わせた甘口の関東風に加えて、だしの味をしっかりきかせた関西風の2種類から選べます。

関東風は東京の他のお店でもいただけるので、僕はたいてい関西風をチョイス。だしの風味をしっかりきかせて、ふっくらと焼かれた玉子焼きを口いっぱいに頬張れば、思わず笑みが溢れる美味しさ。
内装もモダンでゆったりと料理を楽しめるこちらのお店では、お蕎麦屋さんには珍しいナチュールワインのボトルまで取り揃えています。

おひとりの昼の蕎麦呑みで、さすがにボトルを開けるのもなんなので(笑)、白のグラスを。香りも爽やかなソーヴェニヨン・ブランが関西風の味付けの蕎麦前によく合います。
酒のアテに「からすみそば」もいい

冷やしすだち蕎麦に行く前に、酒のアテにもなる冷たい「からすみそば」を注文。店内で石臼挽きした十割の蕎麦に、からすみの風味が見事にマッチして、実に贅沢な味。

冬だったら、これをアテに熱燗でちびちびもいけそうですが、蕎麦は茹でたてが一番ですから、しっかり味わいつつもさくっと早めにいただきましょう。
お腹が満たされる名物の太巻き寿司

丼などのいわゆるご飯ものはありませんが、「しっかりお腹を満たしてほしい」ということでメニューにあるのが、名物の「太巻き寿司」。厚焼き玉子、椎茸と干瓢の甘露煮、マグロ、うなぎの蒲焼きを巻いた贅沢な一品。
一切れが、一口では食べきれないほどのサイズで、お酒を呑まない人も蕎麦にもう一品としてちょうどいい。半分と1本を選べますが、2人で半分でも十分なサイズ感です。
一度は食べたい看板メニュー「冷かけすだち蕎麦」
締めはお待ちかねの、冷かけすだち蕎麦!
何度見ても、器一面に敷き詰められた輪切りのすだちは圧巻。絞らず輪切りにしていることで、すだちの酸味より、香りが強く感じられます。


こちらの特徴は、なんといっても関西風の冷かけつゆ。すっきり透明感のあるつゆは、昆布の出汁がきいていて塩味もしっかりあり、あっさりながらパンチのある味。
そこにすだちの香りが合わさって、つゆだけでもゴクゴクと飲み干してしまいたくなる美味しさ。蕎麦、つゆ、蕎麦、つゆと食べすすんだら、途中で原了郭の黒七味を加えれば、さらに風味豊かになります。

蕎麦はもちろん、つゆも最後の一滴まで飲み干せば、爽やかな見た目とは裏腹に、しっかりと満足感を得られる一杯。
目黒川のほとり、自然の光も入るオシャレな店内で、ちょっぴり優雅にお蕎麦を楽しめる名店です。
(文◎小宮山雄飛、撮影◎橋本 真美、構成◎編集部)
●SHOP INFO

東京 土山人
住:東京都目黒区青葉台3-19-8
TEL:03-6427-7759
営:11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~22:00(21:30) ※夜のみ予約可
休:月・火曜(月1) ※9月より変更あり。詳細はInstagramをご確認ください。
@ tokyo_dosanjin
●著者プロフィール
小宮山雄飛
ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組の出演なども多数。