ペコちゃん、ポコちゃんでお馴染み『不二家』。外はサックリ、中はしっとりの「カントリーマアム」、いろんな味が楽しめるチョコレート「LOOK」と並んで人気の商品といえば「ホームパイ」です。

1968年に誕生し今年で50周年。「懐かしい!」という人もいるのではないでしょうか。実は、ホームパイは誕生以来、その美味しさが進化をし続けているお菓子なんです。久しぶりに食べた人はびっくりするかもしれません。いつの時代も新しい美味しさを教えてくれる「ホームパイ」のヒミツをご紹介します。

あれ?「ホームパイ」昔と変わった?

 いきなり個人的な話で申し訳ないのですが、子どもの頃、「ホームパイ」は“おやつの王様”でした。学校から帰ってきてまっすぐに“おやつの引き出し”を開け、黄色の「ホームパイ」の大袋を見つけた時の嬉しいことと言ったら! 「食べていい?」と確認し、すぐに冷蔵庫の牛乳を取り出してゴクゴク、そしてパイをかじり、うっとりして、不思議とお姫様気分になれる。「ホームパイ」は子どもにとって贅沢なお菓子だったんです。

 その「ホームパイ」を最近、スーパーで見かけた時、パッケージに「50th Anniversary」の文字を見つけました。しばらく食べていなかったので懐かしくて買ってみたんです。

 食べてみると、ウンウン、サクサクでやっぱり美味しい。ほんのりした甘さで、バター風味だけど、軽くてさっぱりしていて。昔みたいに親の目を気にしたり、兄弟に気を使ったりすることなく思う存分食べられる。

大人になった今、さらに美味しく感じます。

誕生50周年、不二家「ホームパイ」は昔の味と違うって知ってた? サクサク感の秘密を取材してきた

 そうだ、子供時分には考えもつかなかった大人の食べ方をしてみよう! クリームチーズをのっけてカナッぺ風に、さらにスモークサーモンや杏ジャム、スモークハムを載せてみたりもしました。案外、塩系の具材にも「ホームパイ」は合うんです。

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 ワインと共に“ホームパイカナッペ”をつまんでいて、ふと気づきました。袋に「エキストラバージン オリーブオイル使用」という文字があります。さらに「バターのコクと発酵種の豊かな味わい」とも書いてあります。「ん? もしかして、昔と同じ味じゃないのかな?」 そういえば、サクサク感がよりアップしていて軽くなっているような……。そんな疑問がふつふつと湧き上がってきたのです。そこで、直接、不二家さんに聞いてみることにしました。

ホームパイの美味しい歴史がすごかった!

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ホームパイの生みの親は「デリシャスパイ」

 東京・文京区音羽にある不二家さんを訪問しました。入り口でペコちゃん、ポコちゃんにお出迎えされてウキウキ。「ホームパイ」の美味しさの秘密は、同社菓子事業本部マーケティング部の岡部桂子さんが答えてくれました。

 まずはホームパイの歴史から。

「ホームパイの誕生は今から50年前ですが、実はそれよりも前に、ホームパイの生みの親とも言える“デリシャスパイ”があったんですよ」(岡部さん・以下同)

 昭和20(1945)年代後半から、戦後の日本は洋式化が進み、“洋菓子店”が大人気でした。明治43年(1910年)創業、すでに超人気店であった「不二家洋菓子店」は生菓子、焼菓子を多数揃えており、その商品の中に、ギフト用「パイ・アラカルト」という詰め合わせがあったといいます。

「そこに入っていた手作りのデリシャスパイがとても評判が良く、昭和40(1965)年に、当社の菓子事業部でも扱おうということになったんです。菓子事業部というのは、スーパーなど量販店用の商品を扱う部門。ただし、大量に卸す必要があり、早急に機械設備を開発することになったんです」

手間暇がかかるパイ製法の機械化に成功

 パイというのは小麦粉と水などの原料を混ぜて練り、薄く伸ばして、さらに生地と生地の間に油脂(バター)を何度も重ねて焼くというのが基本製法。不二家の「ホームパイ」はその層数がなんと約700層もあるそうです。

 実はパイというのは焼菓子の中でも丸めて焼くクッキーとは違って、非常に難しいお菓子。層が少ないリーフパイのようなものは、間に空気が入る分、壊れやすい特徴があり、かといって層を増やせばそれだけ手間ひまがかかります。

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「最初にデリシャスパイを作った職人の方は、かなりこだわりを持って完成させたようで、薄い生地を重ねて密度を濃くしつつ、あのサクサク感を出すには、どのような配合でどのくらいの層の数が一番良いのかを研究していたんだと思います。その職人技をそのまま機械で作ること自体が非常に難しく、機械化するにもかなり苦労したと聞いています」

 それでもなんとか1968(昭和43)年に、半自動設備が完成。沼津にあった工場にそのラインを導入し、「ホームパイ」がデビューしたのです。

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進化し続けるホームパイ

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ところで肝心な味の変化について聞かねば!

「1991年、沼津から富士裾野工場に移管して、今と同じように全自動化するようになりました。それから少しずつ素材のリニューアルも行っているんですよ。富士山の天然水を生地の原料に使うようになったり、またパンのように発酵種を使用するようにもなりました。


 本来、パイは発酵種とは無縁のお菓子ですが、パンの製法からヒントを得て、発酵種を入れて寝かすことで、風味が良くなり、さらにサクサクした食感を向上させることができました。また、今年から、エキストラバージンオリーブオイルを少し加えるようになりました。バターの風味をしっかり残しつつ、さっぱりとしたヘルシー感を出しているんです」

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新しい味の「ホームパイ」の続々、登場

 やっぱり、美味しくするための工夫が到るところにこらされて、レベルアップしていたんですね。また、スタンダードな「ホームパイ」だけではなく、この50年の間に様々な種類の「ホームパイ」が登場していたことも知りました。実はホームパイは味をつけても飛びやすい性質があり、しっかり味をつけることも簡単ではないそう。ようやく1997年頃からココアフレーバーなど、少しずつ味を変えた商品を発売し始めたそうす。

「今年は50周年ということもあって、こうした味変えの新商品を毎月、限定で出していきます。ちなみに今は、ビターショコラ、スイートバニラ、レモンティーなどを発売しています」

 また最近は、「アフタヌーングルメ」シリーズという新しいタイプのホームパイの「ショコラアーモンド」、「塩バターキャラメル」も発売しているそうです。「ショコラアーモンド」は、下がパイ生地で上のココア生地のクッキーの上にアーモンドが載っています。また、「塩バターキャラメル」は、パイ生地の間にココアサブレが入っています。いただいてみると、「ホームパイ」とはちょっと違いますが、袋菓子とは思えない贅沢なお菓子。さすがパイの不二家さんです。

誕生50周年、不二家「ホームパイ」は昔の味と違うって知ってた? サクサク感の秘密を取材してきた

 歴史から製法、そして新しい味の開発までを伺い、常に新しい美味しさを創り出してきているホームパイを知って、改めて感動しました。皆さんもぜひホームパイの最新の美味しさを味わってみてください。今年は限定のニューフレーバーがたくさん出てきますよ~!

(撮影・文◎土原亜子)

誕生50周年、不二家「ホームパイ」は昔の味と違うって知ってた? サクサク感の秘密を取材してきた

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