2018年1月に、東急東横線の学芸大学駅と祐天寺駅の中ほどにオープンしたオーガニックカヌレ専門店『ダンラポッシュ』。半年たった今でも行列ができ、11時半のオープンから、数時間で完売してしまうほどの人気ぶりです。

 今までの最短完売記録は、開店からわずか30分。土日と祝日だけの営業のため、“幻のカヌレ”とさえ呼ばれるこのお店のカヌレには、一体どんな魅力があるのでしょうか。それに、数あるフランスの伝統菓子のなかでも、カヌレだけに特化した理由も気になりますよね。

 学芸大学駅、祐天寺駅から歩いて15分弱と、ちょっと距離はあるものの、それでもわざわざ行きたくなる魅惑のカヌレ専門店へ、完売する前に大急ぎで行ってきました!

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 まだシャッターが閉じた状態の店内にお邪魔すると、焼き立てのカヌレの香りに包まれながら、店長の内藤裕子さんがテキパキと作業中でした。内藤さんは、カヌレ作りを独学で学び、2018年1月、オーガニックカヌレ専門店『ダンラポッシュ』をオープンしました。広さ5坪に満たない小さなお店で、カヌレの製造から販売まで一人でこなしています。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

「1日100個作って販売していたのですが、売り切れた後にいらっしゃるお客様に申し訳なくて、最近130個に増やしたんです」

 そう笑顔で語りながらも、手を休めることはありません。店頭に並ぶカヌレは常時2種類で、「プレーンカヌレ」と日替わりの一品。取材した日は、マダガスカル産チョコレートをブレンドした、いちじくとくるみが詰まった「チョコカヌレ」でした。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 カヌレ型から出したカヌレが棚の上にズラリと並ぶ頃、店先にお客が一人、また一人と並び始めました。さあ、いよいよオープンです。

人を笑顔にするカヌレは、素材選びも妥協なし

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 内藤さんがカヌレ専門店を開いた理由は、自然派ワイン好きだったことがきっかけだったとのこと。「ワインを飲みながら食べたくなるスイーツは何だろう?」。

そう考えて行き着いたのがカヌレだったそうです。

 カヌレはフランス・ボルドー地方の伝統焼き菓子で、正式名は「カヌレ・ド・ボルドー」。ワインの澱を取り除くために卵白が大量に使われるため、余った黄身で作られ始めた、という、ワインとは深い縁のあるお菓子です。

求めたのは「安さ」ではなく、安心できる「美味しさ」

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 カヌレは日本でもフランス系のベーカリーで見かけますが、材料がオーガニックなものはなかなかありません。もともとお菓子作りが好きな内藤さんは「ないなら作ろう」と、最初はフランスのサイトをチェックしながら作ったそうです。そうして試行錯誤の末に完成したカヌレは、友人、知人の間で評判になり、いつしかワイン関連のイベントでケータリングを頼まれるまでになっていきました。

「お店をもちたい」。そう思い始めるようになって数カ月後のこと、前から気になっていた空き物件を扱う不動産屋と出会います。それが今の店舗。そして“ワインに合うカヌレ”をコンセプトに、2018年1月、『ダンラポッシュ』がオープンしたのです。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?
開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

「オーガニック小麦、平飼い卵など、安心して召し上がっていただける素材を厳選しています。そういう素材選びが、生産者さんを応援することにも繋がりますしね」と語る内藤さん。

 カヌレにエッセンスとして加えるアルコール類も、ボルドーで熟成されるラム酒「ネグリタ」、フランス産のリキュール「コアントロー」、そしてレモンカヌレには無農薬レモンを使った愛媛県の「大三島リモンチェッロ」と、とことんこだわっています。

もちろん、アルコール分は熱で飛ぶので、子どもでも安心して食べられます。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

これは可愛い! ひと手間かけた三角包みのパッケージ

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

「カヌレは温度にデリケートな焼き菓子で、カヌレ型もシリコン製やテフロン製よりも扱いが難しい、けれど美味しくできる銅製で焼いています。気を抜くと失敗するので、1日中ドキドキしています」と笑う内藤さん。

 カヌレの完成度の高さと美味しさはもちろん、実は内藤さんの接客にも定評があります。お客と会話をしながら手際よくカヌレを包んでいくのですが、その三角包みのパッケージが、また可愛いんです。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 フランス語で「パケ・モンテ」という、フランスのパテスリーの伝統的な包み方で、カヌレ1個でも丁寧に包んでくれます。

 その分、待ち時間はかかりますが、受け渡し時に「可愛い」「素敵」と自然と笑顔がこぼれ、並んでいる人たちもそれを微笑ましく眺めているのが印象的でした。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 そして“幻のカヌレ”の味はというと、表面はカリッカリで、中はしっとり。噛むほどに素材の味が口の中にやさしく広がり、カリッ&しっとりが最後まで続くので、小ぶりでも満足度は十分です。

 ワイン好きなら一口食べれば、「ワインに合うカヌレ」というコンセプトの意味が「あぁ、こういうことか」と感覚的にわかるはず。

開店30分で完売! 土日祝しか営業しない幻のカヌレ専門店『ダンラポッシュ』のカヌレはなぜ旨い?

 しかし、“ワイン”というブレない軸があるからこそ、ダンラポッシュのカヌレの個性が際立ち、ファンを増やし続けているのかもしれません。今週末も、数時間で完売するカヌレを求めて、多くの人が店先に列を作りそうです。

・・・・・・・

 小さな女の子から年配の男性まで客層に幅があり、多くの人に愛されている『ダンラポッシュ』。実は5月11日に当サイトで紹介した「タケノとおはぎ」とは目と鼻の先で、両店の行列は、今や週末の街の風物詩になっているようでした。

(取材・文◎浜堀晴子)

●SHOP INFO

店名:オーガニックカヌレ ダンラポッシュ

住:東京都目黒区中町1-36-6 1F
TEL:非公開
営:11:30~18:00(なくなり次第終了)
休:月~金
https://www.facebook.com/DanslaPocheTYO/

編集部おすすめ