都内の私立高校に通う良太(リョウタ)と周(シュウ)は、色気より食い気の腹ペコ男子。安くて旨くて、腹がいっぱいになる“俺らの三ツ星店”を探し、日曜の朝練後に食べに行くのが楽しみ。

創業45周年の老舗ラーメン屋『タロー軒』
高円寺の『タロー軒』は、JR高円寺駅に向かう道沿いにあり、その建物が目を引くほど細長くて薄っぺらいんです。風が吹けば飛ぶような感じのお店ですが、僕が通学の行き帰りに通るたびにひっきりなしにお客さんが出入りしています。
庶民食堂系が好きな僕らは、『タロー軒』のその佇まいに惹かれ、いつか味と量を確かめなくてはと思っていたんです。しかも店は24時間営業。そこで、朝練前の早朝に行ってみることにしたんです。

良太:45年前に創業したってことは、今ほどたくさんコンビニがない時代だよね。当時、24時間営業というのは、ラーメン屋としては最も最先端な営業スタイルだったのかもしれないね。
周:今だって24時間やっている個人経営のラーメン屋さんって少ないと思うよ。一般のラーメン屋が12時間営業だとしたら、その倍、つまり、90年間営業してきたと言っていいかもしれない。
良太:なるほど。しかもラーメン屋さんって人気がないとすぐ潰れるっていうから、相当、愛されてるってことだね。
周:とりあえず入ってみよう。

『タロー軒』 はラーメンだけではくカレーの評判もいい、と父から聞いてきたので、僕は「ラーメン+半カレーセット」840円、良太は「つけ麺」690円を食べることにしました。券売機にお金を入れようとしたら、お店のおばさんが、「今日は何にしますか?」って。まるで常連さんに対するような気さくな感じです。
早朝からラーメン&カレーでもペロリ

気取っていなくて食べやすいラーメン
最初に登場したのは「ラーメン」です。トッピングはチャーシューが2枚、メンマ、ワカメ、ネギ。細い縮れ麺で、濃い醤油色のスープです。この値段にしては量もたっぷり!スープを飲んでみると、醤油味であっさりしています。少し背脂が入っていてコクもあります。

最近の鶏白湯のような“さっぱり系”でもなく、豚骨魚介の“濃厚系”でもなく、かといってご当地系でもなければ、学食のような“レトルト系”でもない……

カウンターの前に立つと、でっかい寸胴があり、肉や香味野菜をたっぷり入れてスープを1から作っていることがわかります。だからと言ってスープが「ああだ、こうだ」と能書きは一切書いてなくて。
良太:どう?
周:大好きな味だけど、表現するのが難しい。優しい味と言えばいいのかな。食べてみて。
良太:本当だ。尖った感じがなくて、和む味っていうのかな。麺も緩~い感じで縮れていて、「ザ・東京ラーメン」って感じだね。
周:チャーシューもトロッとしていて、口の中でふんわりとろけるよ。

食べたその日からソウルフードになる!


続いてやってきたのは良太の「つけ麺」と僕の「半カレー」。最近のつけ麺というと、つけ汁が少ないけど、ここのはラーメン丼にたっぷり入っています。「半カレーライス」も普通の1人前は十分にありそうです。
良太:つけ麺は、麺も具材も多分ラーメンと一緒だよ。ただつけ汁はラーメンのスープより少し濃い目にしてあって、ゴマがたっぷり入っていて、ほんのり酸味がある感じかな。あと麺に載っている海苔の風味で、ラーメンとは違う感じになっているよ。


周:カレーライスは、まったりと甘くて、後味がほんのちょっとだけ辛くて、これもやっぱり昔懐かしい味で、俺は好きだなぁ。ラーメンもカレーも方向性が一緒だよ。
良太:ラーメンって好みがあるから期待はずれも案外多いけど、ここのは初めて食べたのに懐かしい味だなぁとか、飽きない味だなぁって思う。こういう期待通りのラーメンってありそうでないよね。
周:640円のラーメン1杯で腹一杯になるし、あっさりしていてくどくないし。味も店も、肩に力が入っていない感じいいね。さっきから年配のおじさんたちが次々入ってくるけど、安心できるからつい足が向かっちゃうんだろうね。

僕は器をカウンターに返す時、「24時間って大変じゃないですか?」って、お店のおばさんに声をかけてみました。
「吹けば飛ぶような店だから頑張んないとね。でも、3交代制でやっているんですよ。ここは環七や青梅街道が近くて、ドライバーさんたちや夜遅くまで働いている人たちが深夜や早朝でも来やすい場所だからね」って言ってました。
ラーメンの味だけではなく、お客さんに優しい。僕たちもまた来ようと思いました。
(撮影・構成◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:高円寺ラーメン タロー軒
住:東京都杉並区高円寺南2-16-3
TEL:03-3312-8634
営:24時間営業
休:なし