博多といえば、豚骨の「博多ラーメン」がメジャーですが、実は博多っ子が大好きなのが、“水炊き”の〆に入れるラーメンだったりします。
実は水炊きは全国各地に多様な作り方・食べ方があるのですが、博多の水炊きは、鶏と鶏ガラからとるスープを使い、そこに鶏肉の各部位や鶏のつくね、野菜などを入れて食べる“鶏づくし”が特徴の鍋。
今回、取材に伺ったのは、東京・練馬にある水炊きラーメン専門店『うかんむり』。福岡出身の店主・角隆行(すみ・たかゆき)さんが、2016年にオープンした店です。実は地元・博多に水炊き専門店は数あれど、水炊きラーメン専門店はほとんどありません。オープン当初から注目され、2年たった今でも、連日「売り切れ御免」の“超人気店”なんです。
その店が6月1日、同じ練馬で広い店舗に移転し、リニューアルオープン。噂の博多水炊きラーメンを食べに、さっそく行ってきました。

濃厚なのにサラサラ

メニューは「博多水炊きラーメン」のほか、「鶏つけそば」「汁なし担々麺」「鶏まぜそば」の4種類。今回は、鶏白湯のスープを味わいたいので、看板料理「博多水炊きラーメン」(780円)をオーダーしました。
スープはクリーミーな白濁色で、具材には、塩だけで低温調理した鶏むね肉、一夜干しして焼き目をつけた鶏もも肉、柚子つくねの味わいの違う3種の肉が入ります。加えて、きくらげ、刻みねぎが配されています。

スープはとてもサラサラとしていますが、鶏の出汁が驚くほど濃厚です。麺は低加水のストレート細麺で、一般的な博多ラーメンよりやや太く、スープをしっかり吸うので、麺からも鶏の旨みを感じることができます。
そういえば、店頭の張り紙に、「当店のスープは ただ濃度のみを高めるのではなく 鶏本来の自然な旨みを追求した 博多水炊き製法を基に作られております。尚、「豚骨」「魚節」「化学調味料」は 一切使用しておりません」と書いてありました。

この一文で気になるのは「濃度のみを高めるのではなく」という部分。そこで角さんに聞いてみると、
「国産の丸鶏と鶏の骨、ネギの青い部分と生姜を水だけで煮込む、昔ながらの博多水炊きのスープの製法で作っています。スープは煮詰めれば煮詰めるほどドロドロになって、確かに鶏の味が濃厚になりますが、同時に鶏の良くない部分も出てきてしまう。そこで、ドロドロにするのではなく、サラサラの状態でも旨みがぎゅっと出るギリギリの塩梅を見極めているんです」と解説してくれました。
鶏の旨みを倍増させるための秘密

「ただ、鶏白湯スープだけで旨みを出すというのはすごく難しいんですよ」と角さんは言います。
確かに、鶏白湯に豚骨や魚介系素材を合わせる“ダブルスープ”のお店は多くあります。豚骨や魚介の“脂”が加わることで、コクや旨みが引き出しやすくなるからです。しかし、鶏だけのスープの場合、他の素材の脂が足されない分、旨みを出すのが難しくなるわけです。
では「鶏油(チーユ)などのオイルを入れているのですか?」と質問してみると、
「うちはオイルの後入れもしていないんです。

では一体、どうやって旨みを出しているのでしょうか。いただいたスープには、しっかりとした旨みを感じましたが…。筆者が納得いかない顔をしていたからか、角さんが、鶏白湯スープに濃厚な旨みを出すヒミツを教えてくれました。
「うちの場合、スープと同じくらいカエシを重要視しています。入れているのは4種類。【1】北海道の鶏醤(とりしょう)、【2】塩麹、【3】福岡・大牟田市の薄口醤油、【4】しじみ醤油です。どれも鶏白湯スープと相性が良く、ナチュラルな成分の力で、鶏の成分の旨みを何倍にもしてくれる。そして、とても柔らかな味になるんですよ」

ところで、他のメニューも気になります。「やっぱり博多水炊ラーメンが一番人気なんですか?」と聞くと、意外な答えが返ってきました。
「それがそうでもないんですよね(笑)。他の3つは脇役的なメニューに思われるかもしれませんが、開店当時からある柱メニューで、それぞれ他では食べられないような味を目指して作りました。
特に「汁なし担々麺」(800円)は、ちょっと異質な気がします。
「うちのメニューはすべてに鶏白湯スープを使っているんです。だから汁なし担々麺も一般的な味とはちょっと違い、あっさりしていると思います」
「汁なし担々麺」は、こちらで唯一、具材に“豚ミンチ”を使用しているそうですが、お客さんから「あの“鶏ミンチ”が美味しかった」なんて言われたりもするそう。それだけ鶏スープの旨みが強烈なんですね。
今回は、「博多水炊ラーメン」のみでしたが、確実に全メニューを制覇したくなりました。みなさんも、ぜひ食べ比べて見て、お気に入りのメニューを見つけてみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:博多水炊きらーめん うかんむり
住:東京都練馬区豊玉北6-2-1ディアマークスキャピタルタワー1F
TEL:03-5999-0252
営:11:30~15:00、17:30~23:00
日・祝17:00~20:00
休:月