都内の私立高校に通う良太(リョウタ)と周(シュウ)は、色気より食い気の腹ペコ男子。安くて旨くて、腹がいっぱいになる“俺らの三ツ星店”を探し、食べに行くのが楽しみ。
俺たちは中学生まで地元・杉並区の中でちまちまと生きてきました。しかし、この春、高校生になったし、「たまには区外にでて、旨いものを食べに行こう」と良太と約束していたんです。そんな矢先。
6月某日(日曜日)朝練後
良太が、「お父さんから面白い情報を聞いた」というのです。「神田・末広町のあたりは、ハイレベルなラーメン屋が密集する場所で、面白いよ」と。
調べてみると、その辺りは「ジャンク・ロード」と呼ばれているエリア。そして良太父は、1軒のラーメン店『肉汁麺ススム』を薦めてくれたんです。さっそく僕らはそこに行くことにしました。
男気を見せるなら麺量より肉量だ!

神田末広町は「ラーメン・ジャングル」だ!
東京メトロ銀座線の「末広町」を降りると、見回しただけでラーメン屋さんがあちこちにあって、「ジャンク・ロード」というより「ラーメン・ジャングル」のようです。もし、行く店を決めていなかったら、どこに入ろうかかなり悩んだかもしれません。でも、僕らはキョロキョロしつつも、スマホのマップ片手に『肉汁麺ススム』までまっすぐ進みます。


到着すると、店の前には券売機がありました。
良太:この店は、「肉汁麺」のレベルが、“麺の量”ではなく、“肉量”なんだね。しかも肉量レベル1~3は、130g、200g、300gと増えていくけど、マックスのレベル4は800gだって。どうする?
周:う、うん……どうしようかな。
僕はちょっと不安でした。一般的なラーメン屋さんの、一般的な量のラーメンなら、白飯や半チャーハンを食べるのは余裕です。しかし、ここの量は麺量ではなく肉量。レベル3が300gなのに、レベル4がその2.5倍以上なんて、どういう狙いなのか、計り知れません。
僕はつい日和ってしまい、「レベル1とライス」にしたんです。しかし今日の良太は男気をみせるつもりなのか、「レベル4(マックス)とライス」。

店内は、4人用テーブル席とカウンター席がありました。 “卓上チェック”をすると、肉汁麺を食べるためのトリセツが2種類あります。1つは、「ススム君おすすめの食べ方」、もう1つは「たまごの手引き」。


僕らはこの取説を教科書の暗記のようにしっかり頭に叩き込みました。そして、最初に登場したのはキーマン2つ「白飯と生卵」です。僕らは卵と黄身を分ける「セパレーター」という器具を使ってみたくて、すぐにやってみました。

セパレーターに卵を割って載せると、まるで砂時計のようにじわじわと白身と黄身が別れていきます。それをじっと見ているうちに、良太のレベル4(マックス)が登場しました!

周&良太:うわ、やばっ!(心の声)
これまで見たことがないビジュアルのラーメンです!!! 肉が、丼の縁をはるかに超えて富士山のよう。ヘルシーとか、野菜で色とりどりとか、健康志向とか、そういうものを一切無視したかのような肉一色、茶色一色。しかも麺はちょっとも見えません。
周:良太、大丈夫か。マジで覚悟して食べないと。

続いて僕の「レベル1」も登場。こちらは、丼内に肉やもやし、青ネギの具材がほぼ収まっていて、麺もちらりと見えます。僕は内心、レベル1にして良かったとホッとしました。しかし、この後、僕の方が「しくじっていた」ことが明らかになっていくのです。
白飯を楽しむには肉の増量は必要不可欠!

やべ、肉が足りない!
着丼して最初に肉を食べると、ふんわりと柔らかく甘みの濃い焼肉ダレの味。たぶん炙っているのだと思います。とっても香ばしいんです。麺は太くて平らで、よく見ると色が茶色いので全粒粉を使っているようです。コシがしっかりあって、麺と肉汁の脂が絡まると最高に旨い!

あまりに美味しくてどんどん食べ進んでしまい、気づくと、僕の丼ぶりには肉がなくなっていました。そうなんです。ススムくんのオススメの食べ方にあった「白飯に肉載せ」ができない状況に陥ってしまったのです。
これは僕がうっかりしていたというよりも、白飯に肉を載せて楽しむには、レベル1では肉が足りないということなんです。
でも、幸いにも良太の「マックス」の方にはかなり肉の余裕があり、僕の白飯の上に肉を載せてくれました。

ここで、反省すべく、「肉汁麺」の楽しみ方と注意事項をまとめてみます。
【1】まず肉を楽しむ
着丼したら、まず卵と肉を絡めて、それだけを食べると、「すき焼き」のようで甘辛くて美味しいです。ただ、ここで肉を完食してはダメです。
【2】次に麺と肉汁を楽しむ
続いて麺をすすります。太平麺で、コシがあって、肉汁によく絡めて食べると「油そば」のようで美味しいです。麺は食べきってしまっても大丈夫ですが、肉と汁は完食してはダメです。
【3】白飯と肉、白飯と肉汁を楽しむ
最後に肉をご飯の上に載せて「肉丼」にして楽しみます。でもご飯を全部食べ切らずに少し残しておき、残っていた肉汁スープをかけておじやにします。
この3つの項目をしっかり把握しておくと、「肉汁麺」を120%楽しむことができます。


というわけで、僕と良太は「肉汁麺」を残すことなく全部楽しむことができました。
周:良太のお父さんが言ってた通り「白飯が必要不可欠」だって意味がよくわかったよ。
良太:そうだね。もし、白飯がなかったら、いくら「肉汁麺」が美味しくても、途中で飽きてしまいそうだしね。肉を食べて、麺を食べて、締めに飯を食う。ジャンクのコース料理のようだね。

そして僕らは帰り際、店内の上にある超クールな言葉に気づきました。

「美味い、早い、多い、肉は男のロマン」
『肉汁麺ススム』は、間違いなく僕らのススムべき道標となりました。三ツ星店に決定です。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:肉汁麺ススム
住:東京都千代田区外神田3-7-12
TEL:050-5592-5255
営:11:00~20:45
休:無