夏の“冷たい食べモノ”は色々ありますが、その最高峰といえばやっぱり「かき氷」。例年ならあっちこっちのかき氷屋さんに行き、並んででも食べるのですが、今年の東京はヒートアイランド現象の無限ループに陥り、危険な暑さ。
ところで、唐突ですが、戦国時代はどのくらい暑かったのでしょう?
なぜそんなことを言うのかというと、茶人であり商人であった千利休は、夏のおもてなしに「千利氷(せんりひょう)」という氷を作ったそうです。それは宇治抹茶と茶葉を閉じ込めた氷。そのまま削り出して、最初は「かき氷」として食べ、最後は溶け出した冷たいお抹茶をいただくというもの。
1度で2度の涼を、なんて考えるあたり、エアコンのない時代ですから、よっぽど暑かったのか。ともあれ、さすが天下一のもてなしです。

千利氷のかき氷が味わえる『大山園』へ

その「千利氷」を使ったかき氷をいただけるという穴場スポットがあります。それが今回ご紹介する板橋区の『大山園』。メインはお茶のショップで、イートインでそのかき氷が食べられます。商店街のアーケードの下にあり、並んでも炎天下を避けられそう。そこで気温30度越えの猛暑日に行ってきました。

入店すると、様々な茶葉の陳列棚の奥に7~8席のイートインスペースがあります。

最初に登場したのは「宇治金時」。白いかき氷に鮮やか深緑の茶葉が散りばめられていて、お茶の香りがふわ~っと立ち込めます。横には白玉と小豆餡。さらに別の器には濃いお抹茶が添えられていました。
一口いただくと、氷の粒子がこまかくて雪のようにふわふわ。舌の上でひんやりしたかと思うと、スーッと消えるように溶けていき、後には、茶葉の清々しい香りが残ります。別添えのほんのり甘い抹茶と小豆餡を少しずつすくいながらいただくと優しい甘さで、上品!
「ガバガバかけたシロップを味わうのではなく、これこそ氷そのものを味わう日本の伝統的なかき氷だ!」などとしきりに感動していたら、お店のご主人が厨房から出てきて、「千利氷」を見せてくれました。

そして、「千利氷で作るかき氷は、素材そのものを氷に閉じ込め、新鮮な茶葉や、苺の果肉が削り出されるので、最後の1滴まで素材の風味をしっかり味わえるんですよ」と教えてくれました。


ほうじ茶氷はいつまでも香ばしい香りがしますし、また苺氷は、自然の甘酸っぱさが、最後まで続きます。とくに「宇治金時」は、途中でわざと食べる手を止めて置いておくと、氷が溶け出して……。

ひんやり冷たいお抹茶が完成! 両手でお椀をもってススッといただくと、香り高く、濃厚です。さすがプロのお茶屋さん! 店内には、茶審査技術七段の認定書が飾られており、こちらのご主人はなんと、利き茶競技会の東京予選会で準優勝し、全国大会に東京代表で出場も果たした経歴の持ち主だということが判明! どうりでお茶が美味しいわけです。

心も体もすっかり涼に包まれ、改めて千利休の偉大さを知りました。ぜひ皆さんも試してみてください。休日は込み合いますが、平日は狙い目です!
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:大山園
住:東京都板橋区大山町6-8
TEL:03-3956-0471
営:10:00~20:00
喫茶10:30~19:30LO
火11:00~19:00
休:第3火もしくは第4火
https://www.ohyamaen.jp/