白小豆と書いて「しろしょうず」。小豆は「あずき」と読みますが、白小豆は「しろあずき」ではなく「しろしょうず」というのが一般的なのだそうです。
ここで素朴な疑問。白小豆って白あんの材料……ですよね?
「多くの和菓子屋さんの白あんは白小豆ではなく白手亡(白いんげん豆)が原材料の白あんが圧倒的多数です。もちろんこだわりのお店では白小豆を使った白あんもありますが、なにしろ白小豆は栽培が難しく、希少で高価。白小豆本来の美味しさが味わえる和菓子って実は少ないかもしれません」

そう話してくださったのは「しろしょうず」になみなみならぬ思いを抱く居山哲也さん。静岡・沼津を代表する菓舗『いせや本店』の四代目として老舗の暖簾を守りながら、和菓子の新たな世界を追求し続けています。
ちなみに『いせや本店』といえば、沼津を舞台とする歌舞伎の登場人物にちなんだ「平作もなか」が有名ですが、今回ご紹介するのは新作「TABERU COFFEE 珈琲最中」。
白小豆にマスカルポーネを加えた餡と珈琲生地の最中の皮を組み合わせた最中です。白小豆+マスカルポーネ+珈琲。後者ふたつの組み合わせだけならティラミスを連想しますが、いったいどんなお味なのでしょうか。
餡と最中の皮は別仕様

「TABERU COFFEE 珈琲最中」の餡は瓶詰め、最中の皮は個別包装の別仕様。自ら最中の皮に餡を詰めて食べるいわゆるセルフ最中タイプです。この手の最中はなんといっても皮のサクッと、そしてパリッとした食感が身上。
テイクアウトのカップをモチーフにした皮というところで、すでに既存の最中のイメージをくつがえされ、一口頬張ると瞬く間に芳醇なコーヒーのアロマに包まれます。すぐそこでコーヒー豆の焙煎でもしているのでは? と思うほどです。
「最中の生地は国内産のもち米に厳選したコーヒー豆を練りこんで仕上げました。ご縁あってスペシャルティコーヒー専門店『OBSCURA COFFEE ROASTERS』さんにご協力いただき、ブラジル産のコーヒー豆を細かくグラインドしたものを使っています」
食べるコーヒー。それは最中の皮にあり! そして気になるのは異色の組み合わせの餡です。
白小豆にマスカルポーネが合うんです!

「餡の主役である白小豆は北海道十勝地区の限定栽培のもの。希少な白小豆のうま味や風味はもちろん、白小豆の存在を知ってもらいたい一心で白小豆と向き合った結果、ひらめいたのがマスカルポーネとの組み合わせでした。
豆の形状を崩さぬように丁寧に炊き上げた白小豆にマスカルポーネをバランスよく加えることで、白小豆本来の上品な風味に絶妙なコクが感じられると思います。この餡と相性のいい最中の皮を考え、試行錯誤してコーヒーの香り漂う最中に行き着いたというわけです」
なにからなにまで最中の既存概念のハードルを軽快に越えていく居山さんの発想と、珈琲最中の誕生秘話に引き込まれてしまいました。
贈るシチュエーションで使い分けできるパッケージ2種

餡と最中の皮が別仕様になっているものが前述のギフトパッケージ。最中3組に対して瓶詰めの餡は若干多め。つまり、餡が少し余るのですが、そこはしめしめです。
そのまま食べても美味ですが、トーストやクラッカーにのせたり、アイスクリームなど乳製品とも好相性。

「みなさまのアイデアで季節のフルーツやコンポート、ヨーグルト、チーズなどお好みの素材と合わせて小さなドルチェにして楽しんでみてください」と居山さん。
残り餡には福あり! とほくそ笑みつつ、白小豆の粒感を楽しみながらいろんなアレンジにトライしたくなりますね。

さらにもう一種は単品パッケージ。こちらはすでに餡を詰めた状態なので、そのまますぐに食べられるスタンダード最中。プチギフトにはもちろん、あちこちに配りたいときにもちょうどいいかも! とひらめいた途端、夏の帰省で会う旧友の顔が浮かびました。
久しぶりに集まる地元の友人たちに配ったり、近所のいとこたちに届けたり、もちろん自分でじっくり味わう分も。それぞれ必要なギフトとバラの個数をカウントして、さっそくお取り寄せの手配をすることにしたのでした。
(取材・文◎笹森ゆうみ)
●DATA

『いせや本店』
静岡県沼津に店を構える老舗菓子舗。沼津を舞台とする歌舞伎の登場人物にちなんでつくられた「平作もなか」はお店の代表銘菓。また、沼津御用邸記念公園売店のみで販売する皇太子殿下・雅子妃殿下にご献上した記念菓「雪後の春」や、沼津御用邸記念公園と共同開発した和三盆干菓子「くぎかくしさがし」なども手がける。