キリリと冷えた炭酸にレモンをギュッ。いたってシンプルながら、やっぱり旨いレモンサワー。

今ではどこの居酒屋でも飲め、コンビニでも主力商品になっていますが、日本ではじめて、レモンサワーを売り出したお店を知っていますか? そのお店こそ、祐天寺にあるもつ焼き店『ばん』です。

 創業は60年前、当時は「酎炭(ちゅうたん)」と呼ばれていた焼酎の炭酸割りをサワーと命名し、それにレモンを入れた初めてのお店。東京中で大評判になった「レモンサワー」は、「わるならハイサワー」でおなじみの博水社の「ハイサワー」の開発に協力したことでも有名です。そんな、一度は行きたい歴史あるスゴイ大衆酒場『ばん』で“これだけは食べておきたい料理を教えちゃいます。

まずはレモンサワーで一杯

レモンサワー発祥の店・祐天寺の名居酒屋『ばん』で食べておきたい料理はこれ!

 レモンサワーの原点である『ばん』では、どのテーブルでもレモンサワーが注文されます。ここに来たらまずはビールじゃなくて、まずはレモンサワー。炭酸と甲類焼酎、レモン1個が別々になっていて、自分の好みでカスタマイズしていきます。とにかく最初の焼酎の量がジョッキの半分以上入っていて、一杯目はいま流行りのストロングよりもガツンとくる口当たり。このセットで普通のレモンサワー二杯分は優にあるので、これはとってもお得。あとで焼酎だけの「ナカ」、炭酸、レモンと必要な分だけ頼めるのもいい!

懐かしの味レバカツはレモンサワーとの相性抜群

レモンサワー発祥の店・祐天寺の名居酒屋『ばん』で食べておきたい料理はこれ!

 薄く伸ばしたレバーを揚げてソースに浸した下町の味。テーブルのからしをたっぷりつけていただきます。見た目よりも軽い口当たりのレバカツは、臭みも一切感じさせません。揚げたてのレバカツにレモンサワー、最高の組み合わせです。

ピリ辛具合がちょうどいい! 名物「とんび豆腐」

レモンサワー発祥の店・祐天寺の名居酒屋『ばん』で食べておきたい料理はこれ!

「とんび」とはイカの口ではなく「豚尾(トンビ)」。豚の尾をトロトロにやわらかくなるまで煮込んだ煮込み料理です。

スープはピリ辛というよりも、結構辛めでキリリとしたスープ。ネギとニンニク、豆腐が入って少しキムチのスープに近いような感じなのですが、時たま現れるセロリが良いアクセントになって、「ばん」ならではの味。いろいろ考えてみてもほかでは食べたことがない、近い料理がありそうでないんです。これを食べると、ああ『ばん』の味だと確認できる、ここでしか味わえない逸品です。とんびの本数は自由に注文可能。トンビのみ、豆腐のみの「トンビ汁豆腐」というメニューもあります。

異なる食感が面白い「ばん」のもつ焼き

レモンサワー発祥の店・祐天寺の名居酒屋『ばん』で食べておきたい料理はこれ!

「もつ焼きばん」というからには、もちろんもつ焼きは外せません。いろいろな部位をタレ、塩で。レバー、かしら、しろ、タン、ハツなどの定番から、なんやわ、ワッパ、オッパイ、フランスと珍しいものまでずらり。「なんやわ」はやわらかい軟骨、「ワッパ」は豚の膣、「オッパイ」は乳腺、「フランス」は首の部分。それぞれに違った食感が楽しめて、いろいろ頼んでみるのがオススメです。

 昭和32年に中目黒で開店して47年、いちどは駅前の再開発によって惜しまれながら閉店したことも。

「目黒にばんあり」と言われ愛された店は、常連客の熱い要望に応え、こちら祐天寺で復活を果たしました。それ以来13年、店はいつでも満席です。隣の人との距離もぐっと近いのもここでの楽しみ。いつも激混みの店だから、少しスペースがあればお客さん同士なんとか座れるようにと席を詰めてくれたりと、常連さんの雰囲気もいい。しかしなんといっても、最大の魅力は安くて旨いこと! もつ焼き100円、つまみは280円からで、お腹いっぱい飲んで食べても2千円でお釣りがきます。近くにあったら週3で通いたくなる、大衆居酒屋の名店です。

●SHOP INFO

レモンサワー発祥の店・祐天寺の名居酒屋『ばん』で食べておきたい料理はこれ!

店名:もつ焼き ばん

住:東京都目黒区祐天寺2-8-17
TEL:03-3792-3021
営:16:00~23:00、土曜15:00~23:00、日曜15:00~22:00
休:年末年始・お盆・他不定休

●著者プロフィール

矢巻美穂

国内、海外の旅行雑誌を中心に活動するカメラマン。趣味は温泉めぐりと食べ歩き。座右の銘は「美味しいものは産地で食べるに限る」。旬の美味しいものをその産地で食べることに興味津々。著書に「トレッキングとポップな街歩きネパールへ」「とっておき! 南台湾旅事情故事」「台北ナビが教えてくれる本当においしい台湾」「初めまして、東台湾。」がある。

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