歴史ある名商店街に降臨した超新星。要諦を捉えた味づくりに思わずニンマリ
JR阿佐ヶ谷駅南口と青梅街道との間をほぼ南北に貫く商店街『阿佐谷パールセンター』。
『らぁ麺いしばし』は、そんな商店街の一画に、本年(2019年)1月15日にオープンした生まれたてホヤホヤの新店。白地の看板には『らぁ麺』の文字が大書され、同文字の直下に赤で描かれた丼の絵が輝く。比較的距離がある地点からでもしっかりと視認できるこの看板の存在は、同商店街の新たなランドマークとなるに違いない。

現在、同店が提供するのは「塩らぁ麺」「醤油らぁ麺」「鶏白湯つけ麺」の3種類とそのバリエーション。「作り手としての経験はありませんでしたが、私は、ラーメンが大好物で。食べ続けている内に自分自身の手で理想の1杯を創り上げてみたくなったんです」。店の雰囲気や店主の人柄に強く魅せられ、特に、西新宿の『麺屋翔』には足繁く通ったという。「『いしばし』の開業へと漕ぎ着ける直前まで、勉強も兼ねて様々な実力店を巡り歩いてました」と、目を輝かせながらお気に入りの店の名を挙げる店主は、どこからどう見ても完璧なラーメンマニアだ。

老若男女が睦まじく同居する阿佐ヶ谷の土地柄を反映し、醤油の魅力を実直に表現した「醤油らぁ麺」の完成度も高いが、まず召し上がっていただきたいのが、券売機筆頭メニューである「塩らぁ麺」。

まず思い知らされるのは、出汁から透けて見えるラーメンに対する深い愛情。
出汁だけではない。薫り高く濃密な味わいが印象深い「鶏節」をトッピングに採用するとともに、チャーシューにも『信玄鶏』を採用。
出汁・トッピング・チャーシューへと姿を変えた鶏が、食べ手の口内で一体と化し舌上で雄々しく躍動する。時流に流されない骨太で個性的な筆致に、思わず感動のため息を漏らしてしまった。

この出汁に合わせる塩ダレもまた、こだわりの塊だ。赤穂の塩・ゲランド塩(フランス産)・天外天塩(フランス産)に、節・煮干し・日高昆布・干し椎茸等の素材を掛け合わせ、コクとキレの双方を過不足なく演出。
オープン初日から、同店の1杯を求める客が引きも切らず訪れる人気ぶり。小麦の芳香艶やかな全粒粉麺をズズっと啜りながら「ここまでレベルが高ければ、話題になって当然だ」と、深く納得した。
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(※)『信玄鶏』とは?
富士山麓の水と、添加物を排除した飼料で出荷まで育てた、山梨県産の銘柄鶏。鶏特有の臭みが徹底的に排除され食べ手を選ばない、歯ごたえが良好などの特長がある。
●SHOP INFO

店名:らぁ麺いしばし(らぁめんいしばし)
住:東京都杉並区阿佐谷南1-32-8
TEL:03-6383-2885
営:11:30~22:00 ※スープが無くなり次第終了
休:なし
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。