代表格のレモンサワーをはじめ、ここ数年人気が定着しているサワー。近年、老舗の一杯からクリエイティブなものまで、ありとあらゆる進化を遂げています。
今回は、居酒屋の枠を越えて料理とのペアリングに力を入れている注目店や先駆けとなった王道店を紹介します。
酒呑倶楽部アタル(北千住)

滋味豊かな料理に寄り添う飲み心地良いサワーたち
“入谷の奇跡”と呼ばれる大衆酒場『オオイリヤ』の2号店が北千住の飲み屋横丁に昨夏誕生。瞬く間に人気店の仲間入りを果たしています。
朗らかな笑顔の沖縄出身の店主・當山さんが作るのは、せいろでむっちりと蒸し上げた名物「蒸しつくね」(5種880円)、カレーの香りとシルキーな舌触りに膝を打つ「ポテサラ」(380円)などの魅惑的な創作つまみ。そんな滋味溢れる料理にそっと寄り添うのが、圧倒的な飲みやすさが魅力のサワーです。
沖縄の市場から直送される減農薬スイートバジルをたっぷり使った爽快な「島バジルレモンサワー」、レモンの塩漬けペーストの旨みがじわりと広がる「自家製塩レモンサワー」、飽きのこない味わいで女性に人気の「五ウーカーピー加皮チャイサワー」など、飲み始めるともうどうにも止まらなくなります。ゴキゲンに酔える名酒場です。
●SHOP INFO

店名:酒呑倶楽部アタル
住:東京都足立区千住1-32-6
TEL:03-5284-8667
営:17:00~24:00(フードLO23:00、ドリンクLO23:30)
休:不定休
※価格は全て税抜
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U.TOKYO(不動前)

100種のクラフトメンチ×リモンチェッロサワーの妙に酔いしれる
リモンチェッロとは、イタリア発祥のレモンリキュールで作ったレモンサワーのこと。でも「国産リモンチェッロサワー」を東京で楽しめるんです。それが不動前にある『U.TOKYO』。
店の自慢は、広島・大崎下島の無農薬レモンの外皮を丁寧にむき、スピリタスに2週間以上漬け込んだ自家製リモンチェッロ。加糖した「スイート」と自然な甘みを生かした「ドライ」の2種を仕込みますが、「個体差や収穫時期、漬け込む時間で色も味も違うから奥深くて」と店長の松本さん。
魅力は何といってもサワーのバリエーションの豊かさ。パクチー、ブラックペッパー、ハチミツレモンなど、「どんな味?」と興味をそそられます。
●SHOP INFO

店名:U.TOKYO
住:東京都品川区西五反田4-8-4
TEL:03-6431-9137
営:18:00~翌1:00(フードLO24:00、ドリンクLO24:30)
休:なし
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サケフク(千葉県・市川)

飲みの仕上げに召し上がれ! 旬を体感する〆サワー
「〆サワーちょうだい!」が『サケフク』の合言葉。日本酒を楽しんだ後、果実サワーでさっぱりと仕上げるのが心地いいお店がこちら『サケフク』。
常時4種揃うサワーは定番の国産レモンサワーと有機トマトサワーのほか、春なら柑橘系、初夏は宮崎のローカル柑橘・へべす、秋にはシャインマスカットやネクタリン……と季節感満点。千住市場で仕入れる果実に合わせるのは、杜の蔵の酒粕焼酎“吟香露”。吟醸酒粕の柑橘類を思わせる香りが見事な一体感を生みます。
「フルーツ酵素がアルコールを分解してくれるらしい」と全種飲む猛者もいるそうですが、「オーダー後に果実を搾ってスライスしたり潰したりするから、数人に違うサワーを頼まれるとホント面倒臭くて(笑)」と店主の高橋さん。
自称・飽きっぽい性分で酒場をこよなく愛する彼は、旬つまみの名手でもあります。だからサワーも料理も毎日違うのが真骨頂、幻のメニューなんてのもざら。旬料理&サワーと楽しい店主と行くごとに市川を少し好きになる。通うほどに楽しいカウンターです。
●SHOP INFO

店名:サケフク
住:千葉県市川市市川1-2-17
TEL:047-374-3483
営:17:30~24:00(フードLO23:00、ドリンクLO23:30)、日曜・祝日15:00~22:30(フードLO21:30、ドリンクLO22:00)
休:月曜(祝日は営業)
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大岩食堂(西荻窪)

スパイス料理をまとめる包容力ある優しい味わいのサワー
西荻窪にある『大岩食堂』のレモンサワーは、皮付きの瀬戸内レモン、スパイスをドライジンに1か月以上漬け、強炭酸とシチリア海塩で仕上げた1杯。レモンときび糖の柔らかな甘みが程良く、塩が全体を締めています。
このサワーが生まれたきっかけは、お酒好きの店主・大岩さんが仕事終わりに飲みたいと思ったお疲れサワー。「ジンもコリアンダーシートなどが特徴になるし、クローブとカルダモンと唐辛子を入れたら面白いかも」と半年かけて完成させた、スパイス専門家によるレモンサワーなのです。
そんなサワーと共に楽しみたいのは、個性豊かなスパイス料理の数々。「本日のおつまみセット」ならサワー&おかず4種が付いて1,000円ポッキリ、「ミールス」とシンプルに味わうも良し、アチャール(冷菜)や串焼きなどのスパイス小皿でさらにつまみカスタマイズするも良しと、心ニクい呑兵衛仕様。サワー熱はじわじわ広がり、これしか頼まないファンも増加中だそう。
「レモンサワーとおつまみセットで1日をリセットしに気軽に寄って」という店主の想いが溶けた優しい1杯、ぜひお試しを。
●SHOP INFO

店名:大岩食堂
住:東京都杉並区西荻南3-24-1 西荻マイロード内(西荻窪駅高架下)
TEL:03-6913-6641
営:11:00~15:00(LO14:30)、18:00~23:00(LO22:00)
休:月曜の夜、木曜(祝日の場合は営業)
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発酵居酒屋5(表参道)

おいしくて健やかにいいこと尽くしの発酵系サワー
店名に「発酵」を冠しているだけあり、レモンサワーだって発酵系。主役はノンワックスレモンピールに酒粕、きび糖、ハチミツを混ぜて作った「レモンの酵素漬け」。レモンの風味を生かす甲乙混合焼酎と炭酸を足せば、濃厚な「発酵レモンサワー」の出来上がり。酒蔵直送の酒粕ホイップを載せた風味豊かな「強発酵レモンサワー」、和風モヒート的存在の「フレッシュミントレモンサワー」のサワー三傑が揃っています。
料理だってもちろん発酵系。自家製米麹で柔らかく発酵させた「発酵からあげ」、シュワッと不思議な発酵感がクセになる「アボカドの酒粕醤油漬け」などの定番料理に加え、二十四節気で変わる季節料理も多彩で「日本の発酵文化」をとことん楽しめます。3種のサワーを頼んで料理との“発酵マリアージュ”を楽しむのも一興かも。
レモンの美肌効果と酒粕の整腸作用により「肌とお腹の調子が良くなった」と感謝する常連客も多く、帰り際には身体に良いことをした気持ちに。おや、ランチでも飲める……これは危険かも(笑)
●SHOP INFO

店名:発酵居酒屋5
住:東京都港区南青山3-18-3 B1
TEL:03-5413-8701
営:11:30~15:00(LO14:30)、17:00~23:00(フードLO22:00、ドリンクLO22:30)
休:日曜
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ヨツバー(渋谷)

渋谷に登場した話題のフルーツサワー専門店
まるで果実を食べているような、フレッシュで濃厚な味わい。創業77年のフルーツショップ『フタバフルーツ』が厳選した自慢の果実を使ったサワーが楽しめるのがこちら。2018年6月にオープンしたフルーツサワー専門バーです。
スイート系からさっぱり系まで14種、夏は20種と幅広いラインナップとキャッチーなルックスに、「こんなの初めて!」と喜ぶ人が続出。果実の香りと味に負けないようにとウォッカがベースですが、炭酸が優しいので1杯をゆっくりと楽しめるうえ、毎月新メニューに出合えるのも嬉しいところ。
「フルーツを通して新しい体験をしてほしい」と語るエンターテイナーな人気バーテンダー兼店長・田中ジェームスさんは、「インスタ映えするやつで!」「テキーラベースはない?」などワガママもウェルカム。サワーの進化はまだまだ止まりません!
●SHOP INFO

店名:ヨツバー
住:東京都渋谷区神宮前5-30-3 ニューアートビル2F
TEL:03-6336-4647
営:18:00~24:00(23:00LO)
休:三連休の月
(文◎森本亮子 撮影◎川原崎 宣喜)
※当記事は『食楽』2019年春号の記事を再構成したものです