カニといえば秋から冬にかけて食べるイメージが強いですが、実は夏場に旬を迎える「花咲ガニ」というカニがあるのをご存知ですか? この花咲ガニ、漁獲量が非常に少なく、「幻のカニ」とも呼ばれるほどレアな存在なんです。
そんな花咲ガニを味わえるのが、京丹後にある『竹林(ちくりん)』というカニ旅館。
今回、運良く花咲ガニが入荷したタイミングで帰省することがあったので、ズワイガニ、毛ガニと食べ比べてみました。幻のカニの実力はいかほどなのかご紹介しましょう。
夏だけ食べられる花咲ガニ

「花咲ガニ」はカニなのかと想いきや、実はヤドカリの仲間に分類されています。タラバガニもヤドカリの仲間なので、花咲ガニとタラバガニは近縁種だそうです。
花咲ガニは釧路や根室で捕獲されており、1977年以前は年間1000トンほどの漁獲量がありました。しかし、乱獲されたことで個体数が減り、現在は漁獲量や漁法を制限しているそうです。だからこそ「幻のカニ」といって珍重されているんですね。
ちなみに竹林では根室から仕入れた花咲ガニを提供しています。漁の解禁は根室が7月から9月、釧路が3月中旬から7月末までとなっており、今年は7月末から仕入れる予定だそうですが、仕入れられる数やサイズは漁次第。昨年は6月中旬頃から仕入れていたそうなので、少し早めから問い合わせてもらうといいとのことです。
赤黒い見た目が茹でると見事な朱色に変化

花咲ガニの一般的な食べ方は、茹でる、焼くなどの加熱調理。今回はほかのカニと同じように特製のだしで茹でたものをいただくことにしました。
茹で上がった花咲ガニを見て驚くのが、その見た目の変化です。先ほどの赤黒い見た目からは一変し、鮮やかな朱色になっています。ズワイガニや毛ガニとはまったく異なる色合いですね。

一般的な花咲ガニは甲羅の幅が15cmと言いましたが、実際はこんな感じ。筆者は女性にしては手が大きいほうなのですが、それでもここまで大きな甲羅なんです。

まずはボイルした脚をキッチンばさみでカットして食べてみたところ、とにかく味が濃厚で驚かされます。カニの旨みが強く、身がぎっしり詰まっているのも特徴的です。脚を1本食べるだけでもなかなかの満足感があり、これを1人で1杯食べるとかなり満足感が得られそうです。

今回はせっかくなので、ツメの部分は焼いて食べてみました。焼くことで香ばしさが加わり、香りを楽しむならこの食べ方がおすすめかもしれません。
ズワイガニや毛ガニの食べ比べもできる

『竹林』では新潟から仕入れたズワイガニや、根室から仕入れた毛ガニもいただけます。ズワイガニに関していえば、ボイルだけでなく、眼の前で捌きたてのカニをしゃぶしゃぶにしたり、陶板で焼いたり、さらには生のまま刺し身として食べられます。




花咲ガニがあれだけ濃厚な味わいだったので、ズワイガニだと物足りなく感じるのではないかと少し不安でしたが、そんな心配は無用でした。やはり、ズワイガニは甘みや旨みのバランスが良く、いくら食べても飽きないんです。生でいただけるのも花咲ガニにはない魅力です。

一方、毛ガニはボイルしたものを食べたのですが、味噌の旨みと身の甘さが特徴的。身は少しクリーミーな感じがします。個人的にはズワイガニのほうが好きなのですが、味噌の美味しさは毛ガニに軍配が上がりそうです。


ズワイガニのフルコースは2万800円(税・サ別)で、コース料理の茹でガニを毛ガニもしくは花咲ガニに変更する場合は2500円~5000円(時期により変動あり)の追加となっています。決して安くはないですが、なかなか生きたカニを目の前で捌いてもらう経験はできないはず。
実家なので良く書いているのではないかと思われるかもしれませんが、自分でお金を払ってコース料理を一般のお客さんと同じように楽しんだ経験もあるので、食べる価値は十分あると想います! 夏にしか食べられない花咲ガニを今年はぜひ味わってみてください。
●SHOP INFO

店名:いけ活がに料理旅館 竹林
住:京都府宮津市由良232
TEL:050-3374-2557
営:11:30~14:30、16:00~21:00(L.O.20:00)※完全予約制
休:不定休
https://chikurinrin.gorp.jp/
●著者プロフィール
今西絢美
編集プロダクション「ゴーズ」所属。デジタル製品やアプリなどIT関係の記事を執筆するかたわら、“おいしいものナビゲーター”として食にまつわる記事も執筆中。旅先でその土地ならではのローカルフードを探すのが好き。