忙しく仕事をして、終わったらもうこんな時間。腹も減っているけど、今からじゃもうチェーンのレストランしかやってないかな…なんてこと、ありせんか? でもせっかく食事を楽しむなら、しみじみ美味しい店に行きたい…。
そうだ、それなら料理人に聞いてみよう! ということで今回は、今までにないスタイルで業界をざわつかせた鮨業界の風雲児、『はっこく』の佐藤博之さんが通う“REAL深夜食堂”を教えてもらいました。
滋味深い鍋が、仲間との距離を近づけてくれる

プライベートでも、美味しいものへのアンテナは、フレンチから和食までジャンルを問わず、常に張り巡らせているという佐藤博之さん。2018年の2月に独立。銀座にオープンした『はっこく』では、怒涛のおまかせ握り30貫コースで鮨通らの注視を集めた鮨業界の風雲児です。その佐藤さんが、ひと仕事終えたあと、スタッフらと時折足を向けるのが、同じビルの4階にある鹿児島居酒屋『ひご家』です。

「月に2~3回は来ますよ。スタッフと来たり、遠くから知り合いが訪ねて来た時にもよく使わせてもらってます。イベントの打ち上げで、20~30人ぐらいの集まりをお願いしたこともありますよ。60席とお店もけっこう広いですから」
豚しゃぶの鍋を囲みながら、和んだ表情でそう語るのは、佐藤さん。撮影当日も、総勢五人での、真夜中のプチ宴会と相成りました。佐藤さんがいつも必ず頼むお気に入りの一品が、冒頭の写真の「ひご家のかごしま黒豚ネギしゃぶ」。同店のおすすめメニューの1つだそうで、鹿児島出身の店長が、次のように説明してくれました。
「豚は、鹿児島の六白黒豚。薄くスライスしたばら肉を、たっぷりの白髪ネギと共に味わって頂く鍋です。六白黒豚というのは、鹿児島の宝とも言われているほど貴重な豚なんですよ。筋繊維が細くて肉に締まりがあるうえ、脂が美味しい。上質な豚ならではの柔らかな甘みがあるんです。融点も低いので、口どけが良く、夜遅くてもサッパリと食べられますよ」
また、スープにもひと手間かけています。聞けば、昆布出汁をベースに干し貝柱や干し海老をプラス。乾物ならではのコクが舌に広がり、心なしか味に伸びがあります。そこに、しゃぶしゃぶにする豚の旨味が、更に加わることで、食べ進むうち、ますます味に深みが増していくという寸法。

「締めのラーメンが、また美味しいんですよ」との佐藤さんの一言も頷けます。その他「黒豚の角煮」や「黒豚シューマイ」、「自家製さつまあげ」等々、鹿児島の食材を駆使した料理が満載。「ここの料理は、何を食べても美味しい。

料理が運ばれてくるや、あっという間にたいらげていく佐藤さんらスタッフ面々の食欲も実にあっぱれ! 佐藤さん曰く「同じ釜の飯を食った仲、とよくいうけれど、一緒にごはんを食べることでコミニケーションもとれて、より絆が深まりますね」
(文◎森脇慶子 撮影◎上田佳代子)
●SHOP INFO

店名:ひご家 GINZA
住:東京都中央区銀座6-7-6 ラペビル4F
TEL:03-6228-5510
営:17:30~翌3:00(翌2:00LO)
休:日曜、祝日
●プロフィール
紹介人/佐藤博之
飲食業界のスタートはウェイターから。25歳で鮨の世界に入り、神泉『秋月』等で修業。銀座『とかみ』の大将を務め、去年の2月、『はっこく』をオープン。
※当記事は『食楽』2019年秋号の記事を再構成したものです