続々とオープンするラーメン店。今回は東京・中野に10月15日にできたばかりの『ただいま、変身中』の「牡蠣ラーメン」をご紹介します。
今、日本を訪れる外国人観光客に、「日本食で一番美味しかったもの」を聞くと、寿司や天ぷらではなく、「ラーメン」と答える人が圧倒的に多いといいます。日本のラーメンがアメリカやヨーロッパに進出するとたちまち行列ができたり、外国人が日本にラーメン修業に来たりと、まさに日本のラーメンは諸外国の注目の的。
そんな中、また外国人に注目されそうな斬新なラーメンが登場しました。それが東京・中野にオープンした『ただいま、変身中』です。こちらでいただけるのが、フレンチ出身のシェフが作る一風変わった「牡蠣ラーメン」です。さっそくオープン直後に取材してきました。

もはやラーメンの域を超越したような一杯

メニューは鯛出汁を使った「牡蠣ラーメン」と「赤牡蠣ラーメン」、「汁なし牡蠣ラーメン」、さらに「プレミアム濃厚牡蠣ラーメン」(近日公開)という4品。まずは基本の「牡蠣ラーメン」を注文して待っていると、シェフが丼に入れたスープにハンドブレンダーを差し入れて、泡立てているではありませんか。
その白く泡立ったスープに、茹でた麺を投入し、トッピングには牡蠣、低温調理したチャーシュー、ほうれん草、トビコ、最後に薄くスライスしたバゲットを添えます。麺が見えない状態の丼を俯瞰して見ると、まるでフレンチのワンディッシュのような佇まいです。

スープを口に含むと、濃厚な牡蠣のエキスと豆乳のまろやかさが口中に広がります。さらにじっくり舌で味わってみると、鯛のお出汁を感じることもできます。塩味もフワッとやわらか。

麺をいただくと、クリーミーなスープがしっかり絡まります。なんとなく、パスタを食べているような気もしてきて、そもそも、これはラーメンなのだろうか? と少し哲学的な感覚すら湧いてきます。そこで、なぜこういうスタイルのラーメンになったのかを、メニューを考案した総料理長の坂祥太さんに聞いてみることにしました。
牡蠣ラーメンはどう作られるのか?

──牡蠣がとても濃厚なスープですね。
坂さん:広島産の牡蠣を調味料と一緒に炊き、そのエキスを濃縮した牡蠣ダレを作っています。基本の出汁は愛媛県の宇和島産の鯛と昆布でとっていて、その2つと豆乳を合わせたのが牡蠣ラーメンのスープです。

──鯛出汁×牡蠣というのも変わってますよね。
坂さん:鯛を使ったスープのラーメンは、私が2017年に東京・板橋にオープンした『鯛塩そば 縁』から始まっています。その後、同じく鯛スープを使ったラーメン店を3軒出し、4店舗目としてここをオープンしたんです。すべて鯛スープではありますが、店舗ごとに個性を出していて、今回は、牡蠣を合わせたお店にしたわけです。
──フレンチの技法を取り入れた理由は?
坂さん:私は14年間フレンチのシェフでしたし、シェフの樋口は多岐に渡るジャンルの料理に携わってきました。だから食材からとった美味しい出汁と、美味しいソースをを合わせようという発想はごく自然に出てきます。

──スープを泡立てる理由は?
坂さん:うちのスープは、鯛のフォン(出汁)、牡蠣のソース(タレ)、豆乳と油でできていて、鶏や豚などの動物系素材は0.1%程度しか入っていません。そうなると、スープにとろみがつかないんです。しかし、麺となめらかに絡ませたいので、この3つを泡立てて乳化させているんです。食べ進む際に、味の変化も出ますしね。また、バゲットを載せているのも、見た目をフレンチに寄せたいわけではなく、あくまでこのスープに合うからです。
辛い「赤牡蠣ラーメン」も絶品!

もう一品、基本の牡蠣ラーメンに唐辛子を加えた「赤牡蠣ラーメン」もいただいてみました。まろやかなスープにキレが出て、また牡蠣の風味に唐辛子の香りがよく合い、クセになりそうな味わいです。
「実はすでに次のラーメン店の構想もあって、海外出店も予定しているんですよ」と坂さん。「また魚で勝負ですか?」と聞くと、「それはまだ秘密です」とのこと。

最後に、なぜ“変身中”という店名なのかを聞いてみると、「鯛や牡蠣という日本の食材を変身させるという意味です。でもちょっとヘンな名前ですよね(笑)」。日本を代表する魚介を使った新しい「牡蠣ラーメン」は、海外でも確実に旋風を起こしそうな予感がします。開店早々、すでに行列ができていますが、ぜひ並んでみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:ただいま変身中
住:東京都中野区中野5-53-3 松本ビル1F
TEL:03-5942-6636
営:11:30~15:00
18:00~22:30(LO)
休:無休