「いつの間にやら、はしご酒~♪」は昭和の話。令和のはしご酒のイメージは、明確な目的を持って狙いを定めて店を巡るものではないでしょうか。
「3番街」を始め、戦後バラックをそのままパッケージしたような風情が漂う三角地帯。かつてはスナックや小料理屋が主体で常連が秘かに集う街でしたが、昨今は若手店主が急増。料理ジャンルも多様化し、さらなる賑わいをみせています。同じ家屋に間口が3軒のような小さな店も多く、はしご酒が最高なのです。何より、どこもカジュアルが売りだから初心者にもオススメです。
赤提灯が酔客を引き寄せる『いざかや ほしぐみ』

三角地帯を象徴する「3番街」で目立つ赤提灯のお店が『いざかや ほしぐみ』。ここに立ち寄れば、ほぼ満席で熱気に驚くはず。メニューを見ると「リアルとんがりコーン」に「アールグレイサワー」!?日々、更新される手書きメニューは定番が2/3ほどで、あとは日替わり。

店主・柳生久輝さんによると、「思いつきもあるし、ネーミングから考えるパターンもあります(笑)」とのことですが、それも飲んで食べれば納得。コロンブスの卵的アイデアが料理と酒にあって、抜群に旨く、しかも安いとくれば連日賑わうのは自然な流れですよね。

開店は11年前と、それほど古くないのですが、内装は昭和から続く老舗の風格。それでいて、気安く入れる点も人気の理由ではないでしょうか。
●SHOP INFO

店名:いざかや ほしぐみ
住:東京都世田谷区三軒茶屋2-13-10
TEL:03-3487-9840
営:17:30~翌1:00
休:不定休
餃子が大人気の名店『GYOZA SHACK』

続いて「3番街」で今の賑わいを生んだ名店『GYOZA SHACK』へ。恐らく、ここが餃子の格を上げたパイオニアです。それまで餃子に自然派ワインや純米大吟醸と合わせるなんて聞いたことがありませんでした。餃子は使う分だけを毎日、手で包みます。

厳選素材の旨みを活かし切った“自然派餃子”で、“焼き”はもちろん、“水”も“揚”もあって常時22種。シグネチャーの「SHACK 餃子」は粗挽きの山形・舞米豚が餡の主役です。

スイーツの「ドルチー餃子」など、“映える”要素が注目されがちですが、実は、山形の食文化を発信することがこのお店の真の命題だそう。ここに来れば、昨今、急増している変わり餃子とは一線を画しているのがわかると思います。
●SHOP INFO

店名:GYOZA SHACK
住:東京都世田谷区三軒茶屋2-13-10
TEL:03-6805-4665
営:17:00~翌2:00、日・祝~24:00
休:不定休
裏路地の名店『.KUNIKAGE』

しっかり食べたいなら、裏路地の『.KUNIKAGE』へ。呑み屋が多い三角地帯にあって、この店は貴重な存在です。主人の坪川克彦さんは複数の和食店で修業した生粋の料理人。

食材調達も本式。鮮魚は毎朝、懇意にする豊洲の専門店から仕入れているそうです。九条葱など、契約農家から直に届く野菜もあり、旬を重んじる姿勢まで貫いています。それでいてリーズナブルなんです!

「都心より一歩下がった街に魅力を感じて」店を開いたというご主人もどこか飄々としており、伝統だけに固執することなく、創意を忍ばせたメニューも独自開発。これがまた旨いんです。あまり教えたくない三角地帯の良心的な存在です。
(撮影◎荒井真丞 取材・文◎田代いたる)
●SHOP INFO

店名:.KUNIKAGE
住:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-16
TEL:03-6413-8026
営:18:00~翌2:00、日17:00~24:00
休:月
※当記事は『食楽』2019年冬号の記事を再構成したものです