築地場外市場は、どの路地もすんなり歩けないほど、いつでも賑わっています。日本人が外国の市場を楽しむように、様々な国の外国人が築地を訪れ、ここに集結する日本のグルメを楽しみに訪れているのです。

そんな市場の一角に、ワインショップ兼角打ち「酒美土場(シュビドゥバ)」はあります。出てきたのは、ワイン店とは思えぬ半纏姿の店主、岩井穂純さん。神楽坂の有名フレンチ「ラリアンス」のシェフソムリエを始め、インポーターやワイン講師なども務める面白い人物です。「ナチュールワインや日本の伝統食材の小売りをやりたかった」という岩井さんは、道具屋だったこの小さな場所で店を開店しました。
人を繋ぎ、飲んで楽しく元気になる
「ナチュールワイン」の魅力

「いいワイン、いい食材を見つけてオススメするのが楽しいし、喜んでもらえると幸せですよね」と語る岩井さん。しかし、なんで築地だったんだろう? 素朴な疑問を投げかけるとこう答えてくれました。
「築地は世界中の人も料理のプロもやってくる場所。ワイワイと食を楽しむ築地場外で、人を繋げる力のあるナチュールワインの店をやったら面白いと思って」。実際、ここには料理研究家の人や地方のワイン店を営む人まで、いいナチュールワインを求めて足繁く通ってくるのです。

「人を繋げる力」を持つというナチュールワインの魅力とは、他のワインと比べて難しい知識がいらず、すっと身体に入ってくること。それは初心者でもわかりやすく、「いいワインが身体に染み込めば、飲むほどに楽しく、元気になり、周囲の人との触れ合いも生まれます」
そんなナチュールワインの中でも岩井さんが推すのは、「オレンジワイン」。ここからは、一押しのオレンジワイン×おつまみのマリアージュをご紹介します。
和食とも合う「オレンジワイン」が面白い!

岩井さんがオレンジワインを推すのは、白ワインとも赤ワインとも違うその味わい。「オレンジワインは白ブドウの皮の持つ旨みやフェノールが強いんです。

確かに、このお店では漬物や味噌漬け、干し納豆や酒粕漬けなどの発酵食品がおつまみメニューとして並び、ワインと楽しむことができます。 「もちろん、持ち込みもOK。築地で買ったマグロやウニなどと合うワインも紹介しますよ」。築地の食材とのマリアージュ。これこそ、ここで食べ歩く醍醐味ってものですよね。
早速、オススメのオレンジワインをいただくとしましょう。
築地で買ったウニとの相性も抜群!

築地のウニ(今回は特別に『築地寿司清』のウニ軍艦を用意)、どうせなら新鮮なうちに、美味しいお酒と味わいたいですよね。岩井さんがウニとのマリアージュに選んだのは、ジョージア産「PHEASANT’S TEARS(フェザンツ ティアーズ)」。ブドウ品種はジョージアで一番作られているという「ルカツィテリ」で、日本のフルーツ“びわ”のような果実感と、ほうじ茶のような渋みがあり、ウニとワインの両方を引き立ててくれます。
漬物も味噌漬けも、味わい深くなる

懐かしくて新しい味わいが広がるこの店のおつまみも絶品です。今回合わせたのは、「豆腐の味噌漬け」と「自然栽培おつけもの」。これに合わせたのは、日本・栃木県で作られた「2017プティ・マンサンF.O.S.」と、イタリア・フリウリ産「QUINTO QUARTO(クイント・クアトロ)」です。

今回味わった「QUINTO QUARTO」は、イタリアで何代にも渡り、ワインを作ってきた生産者、フランコ・テルピン作。軽めの柑橘系の味で、酸もイキイキ、フレッシュ! 日本の癖のある食材にも負けない味わいを堪能できます。
気づけば、オレンジワインの魅力にすっかりやられ、和の食材の美味しさも再発見できた「酒美土場」。岩井さんと飲んで食べてワインの話をして、思わず “シュビドゥバ”ッとステップを踏みたくなる陽気な気分になりました。ナチュールワインは本来、こんな風にいろんな食材と気軽に楽しむものなのかもしれません。
(撮影・文◎草地麻巳)
●SHOP INFO
店名:酒美土場
住:東京都中央区築地 4-14-18 1F
TEL:03-3541-1295
営:9:00~15:00(木・金・土曜は~23:00、日曜は~18:00)
https://www.shubiduba-tsukiji.com/