古くから東京で変わらぬ味を守り続ける「東京遺産」の名品たち。それらには、長く愛され続ける理由があります。

今回ご紹介するのは、銀座の老舗和菓子店『空也(くうや)』。この店の代名詞ともいえる「空也もなか」をご存知でしょうか。東京の名品土産としても必ず名前があがり、予約でしか買えない日もあるほど人気を呼んでいます。その愛され続ける理由を、5代目の山口彦之さんに伺いました。
「朝作って、その日のうちに売る」姿勢に脱帽

『空也』は明治17年、上野・池の端で開業しました。しかし、戦災のために店が焼失。昭和24年に、現在の銀座6丁目並木通りに移転しました。
“もなか”をはじめとする『空也』の和菓子は、夏目漱石など多くの文豪が愛したことで知られ、その味わいは時代によって素材の違いによる差はあれど、変わらない美味しさを届けています。

なかでも「空也もなか」は、予約しないと手に入れることが難しい人気商品。朝から仕込んだ餡で仕上げた「もなか」は、1日8000個ほど作られますが、あっという間に完売してしまうのです。
「朝早くから作って、その日のうちに売る。こんなバカな商売しているところ、他にないでしょう」。たまたま出くわした4代目がそう、話してくれました。

もなかは、焦がし皮。これに餡がたっぷりと入っています。餡は、北海道・十勝の指定農家で作られる“小豆”と、白ザラメ、水飴を絶妙なバランスで配合し、4時間ほどかけて炊きあげます。どこか懐かしさを感じるほっこりした餡は、すっきりとキレのある甘さで程よい余韻を残します。

餡を包む「もなか」は創業当初、焦し皮ではなかったそう。「ある日、9代目団十郎を訪問した際に、火鉢で一寸焦がして食したものが美味しかったため、それをヒントに今の“焦し皮”になった」といわれています。
なんども食べたくなる飽きのこない美味しさ

箱を開けると、整然と並ぶ“もなか”の佇まいに見惚れます。ふわっと焦し皮の香りが漂い、その香ばしさと優しい甘さの餡が口の中で絶妙に絡み合います。手の平にすっぽり包まれる大きさもあり、もう一つ…とつい、手が伸びてしまいます。

もちろん、添加物や保存料は一切使っていません。自家用箱と贈呈用向きの化粧箱入りがあり、10個から購入可能。
銀座に赴き、風情あふれる『空也』の門をくぐって、ここでしか出会えない名品を手に取る。少し手間をかけて買った「空也もなか」を味わう瞬間、感慨もひとしおです。
(撮影・文◎草地麻巳)
●SHOP INFO

空也(くうや)
住:東京都港区銀座6丁目7-19(並木通り)
TEL:03-3571-3304
営:10:00~17:00(土曜~16:00まで)
休:日曜・祝日
「空也もなか」
10個入り1100円(化粧箱入1200円)、15個入り1650円(1800円)
そのほか20個、24個、30個入(最大70個入)などがあります
※賞味期限は1週間ほど
※カード使用不可