近年、東京では四川の汁なし担々麺や蘭州の牛肉麺など、本場・中国のローカルの麺を味わえる専門店が続々とオープンしています。ただ、なにしろ広大な中国のこと、まだまだ珍しい郷土麺が無数に存在しており、本邦初上陸のレアな麺料理を出すお店も少しずつ増えています。

というわけで、いま東京で注目の最旬「中国麺」を3品ご紹介します。

西安のソウルフード! 神保町『秦唐記』の「ヨウポー麺」

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 いま最も注目されているのが、西安の三大汁なし麺の1つと言われている「ヨウポー麺」です。そのヨウポー麺を看板にするのが、今年(2020年)2月にオープンした『西安麺荘 秦唐記 神保町店』。

 西安の汁なし麺の一番の特徴は、包丁を使わず手だけで生地を麺にする「ビャンビャン麺」という製法です。「ヨウポー麺」は、そのビャンビャン麺を使い、酢、塩、醤油などの調味料のタレと、具材に刻んだ野菜や肉、唐辛子、花椒、ネギなどを合わせて、最後に上から高温の油をジャッとかけていただく料理です。

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 こちらのお店『秦唐記』では、本場・西安から招聘したプロの麺職人が麺作りを担当。最も太い3~4cmの「ベルト麺」や、1~1.5cmの幅広麺「ビャンビャン麺」、5~6mmの麺や2~3mmの超細麺もなどもあり、すべて注文が入ってから麺を打ち、茹でたてを提供してくれます。

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

「ヨウポー麺」が登場したら、麺と具材、そして丼の底のタレをよ~くかき混ぜて食べるのがポイント。すすってみると、タレの酸味と辛味、甘み、そして花椒のしびれ。これらが絶妙な一体感を醸し出しています。また、ビャンビャン麺の厚みやうねり、そしてコシの食感。さらにキャベツやチャーシューといった具材のバランスも最高で、食べ終わるのが惜しいと思うほど。世の中には、こんなに美味しい麺料理があったんだ、と感激する一品だと思います。

●SHOP INFO

店名:泰唐記 神保町店

住:東京都千代田区神田神保町3-2-5
TEL:03-6256-9787
営:11:00~15:00、17:00~23:00
休:無休

これぞシルクロードの味! 本郷『ムーサ蘭州牛肉拉麺』の「干拌麺」

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 ここ数年、「蘭州牛肉麺」専門店が続々とオープンしています。2019年1月に東京文京区・本郷の東京大学のすぐそばにオープンした『ムーサ蘭州牛肉拉麺』もその一つ。

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 ご存知のように「蘭州牛肉麺」は、中国西北部に位置する甘粛省の省都・蘭州で日常的に食べられている麺を指しますが、『ムーサ』のご主人は、その蘭州よりも西北部に位置する青海省の出身。故郷の名物麺も出しており、実は牛肉麺と並ぶ人気メニューとなっています。それが「干拌麺(ガンバンメン)」です。

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 パッと見た感じは、あんかけ焼きそばやミートソースのようですが、よく見ると、太くて丸い中太麺の上に、サイコロ状に切った玉ネギ、セロリ、ジャガイモ、そして羊肉がゴロゴロと入ったソースがかかっています。その味は、トマトの酸味と牛骨スープの味。そして羊肉の独特のクセも大きなポイントです。初めて食べる味なのですが、なぜか懐かしさも感じる、穏やかで優しい麺料理です。

●SHOP INFO

店名:ムーサ 蘭州牛肉拉麺

住:東京都文京区本郷5-23-13
TEL:080-6710-0509
営:11:00~23:00
休:無休

香港避風塘料理! 銀座『喜記』の「香港風焼きそば」

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 最後に、ご紹介するのは香港の焼きそば。正確にいうと、香港に本店がある『喜記(ヘイゲイ)銀座店』の名物「焼きそば」です。『喜記』は、香港の漁師料理「避風塘料理」専門店で、本店は、世界各国のセレブが訪れるほどの有名なお店。新鮮な魚介を使ったお料理がたくさんありますが、実は、その〆に食べる「焼きそば」が絶品だと言われているのです。

 ただ、この焼きそばには、上の写真を見てわかるように、エビやカニなどのシーフードは入っていません。味も香港のたまり醤油がベースで、至ってシンプル。

 しかし、オリジナルの特製ガーリックスパイス「極品 蟹油蒜蓉王」をふんだんに使っており、これこそが『喜記』が超人気店になった理由でもあるのです。何しろ、このスパイスが欲しいと、世界各国の人が香港の本店を訪れるくらいなのです。

ビャンビャン麺に牛肉麵も! 東京に上陸した最旬「中国麺」3選

 いただいてみると、麺は揚げたようにパリッとしていてコシがあり、独特な香港のたまり醤油の味が染み込んでいます。そして麺の合間合間に独特なガーリックスパイスが感じられ、非常に香ばしく、コクがあって、しかも上品。普通のガーリックチップなどとは全然違います。

 料理長のサイ・エイリョウさんによると、このガーリックスパイスは、蟹油(シェユ)でニンニクを揚げて作るのだそうです。蟹油とは、蟹を蒸すときにできる油のこと。だから、海鮮のダシと風味が染みていて、香ばしさもひと味違うのです。

 こんなにもシンプルなのに、料理の深さに驚かされる「焼きそば」です。ぜひお試しを。

●SHOP INFO

店名:喜記銀座店

住:東京都中央区銀座6-3-11 西銀座ビル2F
TEL:03-3289-0505
営:平日ランチ11:30~15:00(L.O.14:30)、ディナー17:30~23:00(L.O.22:00)
  土・日・祝ランチ11:30~15:00(L.O.14:30)、ディナー17:30~22:00(L.O.21:00)
休:無休

(撮影・文◎土原亜子)

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