先日、高級スーパー・成城石井でちょっと恥ずかしい経験をしました。ネットニュースなどで“入手困難でなかなか買えない”と噂の「あまおういちごバター」をあっさり見つけた時のことです。
ところが、前にいたお客さん2人の会話が耳に入ってきてびっくり。「いちごバターって抽選じゃないと買えないんだね」。そこで、自分のかごの中にある瓶をよくよく見ると、それは「あまおういちごバター」ではなく、「まるごと あまおういちごジャム」と書かれていたのです。確かに瓶の中身は真っ赤な苺ジャム一色。
よく確かめなかった自分が悪いのですが、「成城石井さん、ちょっとパッケージが似すぎちゃいませんかね」と恨めしい気持ちにもなりました。がっかりしながら瓶を元の棚に戻そうと列を外れて歩いている時、ふと考えたのです。

「あまおういちごバター」は、同じく成城石井のオリジナル「あまおういちごジャム」と無関係ではないはずです。バターとジャムといった大きな違いはあるにせよ、少なくとも福岡産の最高級の苺「あまおう」を使用している点では一緒。姉妹か兄弟か、親子らしい関係であることには違いない。そして、おそらく「あまおういちごバター」は、製造過程で苺をいったんジャムやコンフィチュール状にしてからバターを配合しているはず。つまり、この「あまおういちごジャム」に足りないのはバターだけではないのか……。
ならば、筆者はこのまま「あまおういちごジャム」を購入し、それにバターをコネコネと混ぜれば「あまおういちごバター」になるかもしれない。いやいや、そんな手間ヒマなどかけずに、単にこの「あまおういちごジャム」を、バターを塗ったパンにのせて食べれば、口の中で勝手に「あまおういちごバター」味が完成するんじゃないか? もちろん、実際のあまおういちごバターの味は知りませんが、悪魔的な推理が頭に閃いた筆者は、「あまおういちごジャム」を棚に戻さず、バターを買うことにしたのです。
ジャムのおかげで絶品のオリジナルバターとパンを発見!

バターの棚に移動すると、さすが成城石井、国内外のプレミアムなバターがずらりと並んでいます。ここでさらに熟考し、オリジナル商品のジャムに合わせるならば、オリジナルのバターを選ぶべきだと判断しました。1つだけオリジナル商品があったのです。それが「大山バター」。鳥取県産の生乳を使用し、昔ながらの、少量ずつ丁寧に造る「バターチャーン製法」で作っているそうです。特に “口当たりが滑らかでクリーミー”だという説明を見て、これはジャムにしっとり馴染みそうだと確信。しかも高級バターの中ではひときわお安い400円!

こうなると、パンも選りすぐりたくなります。そこで、パンの棚付近に移動をすると、これまたユニークな新商品を発見。それは「お家で焼きたてミニフランスパン」(339円)。名前通り、オーブンやトースターで10分ほど加熱すると焼きたてが味わえるというもの。

というわけで、成城石井オリジナルのジャムとバター、個性的なパンの3つを材料に、早速、作ってみました。
あのミニフランスパンに霧吹きで水をかけて、トースターを200℃に加熱し、焼くこと10分。まるでパン屋さんのオーブンから出てきたかのような焼きたての香りがぷ~んと立ち込めました。外側はキツネ色に焼け、パリッと香ばしく、中はフカフカ。かじるともっちりした食感。そこに「大山バター」をのせるとじゅわ~っと溶けていきます。そのまま食べると、バターは軽やかでクリーミー。きっと、あらゆる世界中のパンを100倍美味しく幸せにできると思うほどのリッチなバターです。

そして、肝心の「あまおういちごジャム」。スプーンですくってみると、丸ごといちごのずっしりとした重量感。

怪我の功名、不幸中の幸い、禍転じて福となす、塞翁が馬などの諺を並べて余りあるくらい幸せな朝食になりました。本物の「あまおういちごバター」はどんな味かはわかりませんが、この3つがあれば大丈夫。めちゃくちゃ満足できると思います。ぜひ、皆さんも、ぜひ試してみてください。
(撮影・文◎土原亜子)