羊肉業界の最近のトレンドとして挙げられるのが、多種多様なコラボです。羊肉のみならず、様々な料理人が羊肉のお店などとタッグを組み、業種間の垣根を越えて、次から次へと新しい羊肉料理を生み出しているんです。
そんな流れを踏まえて、今回ご紹介するお取り寄せグルメは、ミシュラン星付きレストランのトップ・シェフと、老舗羊肉専門『東洋肉店』がコラボして手掛けた「羊肉粽」(ヤンバーツァン)、つまり「羊の中華ちまき」。これがめちゃくちゃ美味しくて、一緒に食べた筆者の友人は「人生で一番美味しいちまきだった」と感動していたほど。
ミシュラン店のシェフは、東 浩司さん。皇室・文豪・政財界など各界の著名人も足繁く通うことで知られる台湾料理の超有名店『ビーフン東』(東京・新橋)の三代目で、現在は大阪でミシュラン一つ星店『Chi-Fu』を開いています。
一方の『東洋肉店』は、昭和3年創業。日本における羊肉小売のオンライン販売の先駆者的なお店です。三代目に当たる東澤壮晃さんは、豊富な肉の知識・経験と自由な発想を生かし、「羊の心臓燻製」や「羊の生ハム」などの比類なきオリジナル羊肉加工品を世に送り出し、人気を博しています。
今からご紹介する「羊肉粽」はこの二人のコラボが生んだ商品なんです。
食べる人に「人生で一番美味しい」と言わしめる逸品

この「羊肉粽」は、『ビーフン東』の看板メニュー「中華ちまき(バーツァン)」を羊で作ってしまおうというのが趣旨。東洋肉店とのコラボということで、肉も「北海道産の純血サフォーク羊」のホゲット(永久歯が1本だけ生えたラム以上、マトン未満の羊)のもも肉を使用するこだわりぶり。羊肉のフレーバーが主張しすぎず、赤身肉ならではの旨みがもち米に絡む、まさにこのちまきのために厳選された羊肉です。
もう、これは絶対に食べてみなければ! というわけで、お取り寄せして食べてみました。

サイトの説明を確認したところ、冷凍のまま20~30分蒸すのが一番美味しいということで、そのように調理。醤油と蓮の葉の芳香が部屋中に漂います。ああ、たまらん! とじりじりしながら待つこと20分。蓮の葉を開くと、さらに強烈で芳しい香りが辺りに広がりました。
ひとくち食べて浮かんだ感想は「優しい」。本当に味わいが穏やか。いわゆる外食するときに感じる、「わかりやすく美味しいけど、味が濃くて食べ疲れる」ということが一切なく、ひたすらに優しく、シンプルで、そして滋味深い……控えめに言って「旨すぎる」と表現してもいいかもしれません。
この優しさは一体どこから来るのか。実はこのちまき、味付けは醤油味のみで、香辛料を一切使っていないそうなんです。「え、それだけ?」と思うかもしれませんが、これ、実は非常に難しいことなんです。シンプルであればあるほど、料理人の腕と肉質が試されることになります。この羊肉は、穏やかな味わいの中に、しっかりと羊肉ならではの旨さと香りをたたえており、思わずうなってしまいました。

特に、羊は扱い次第で美味しくもなり、逆にクセが強く出過ぎもする食材。その羊特有のクセを一番わかっている専門肉屋と、その羊の味わいをしっかり理解しているトップレベルのシェフがタッグを組めば、美味しくなるのも当然といえば当然なのかもしれません。
そして、ゴテゴテと味を盛らず、シンプルに仕上げているのに、しっかり旨いのは、流石のひと言。この優しさとシンプルさに完全にやられて、リピート決定です。羊好きにとどまらず、美味しいものが好きな方でしたら、このシンプルで優しい旨さにハマること請け合い。ぜひ経験してみてください。
●SHOP INFO
店名:東洋肉店
住:北海道名寄市西1条南6丁目22-2
TEL:01654-3-5511
営:10:00~17:00
休:日曜
http://www.29notoyo.co.jp/
●プロフィール
菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で、羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼し羊好きの消費 者団体「羊齧協会」を結成。本業は、イベントの開催・運営、場作りのプロとしてのアドバイザー業務などに携わっている。最近は四川フェスの運営団体麻辣連盟の幹事長も兼務。監修書籍に「東京ラムストーリー(実業之日本社)」「家庭で作るおいしい羊肉料理(講談社)」がある。
http://hitujikajiri.com/