商店街の肉屋で売られているコロッケには、人を惹き付けてやまないものすごい魅力があると思いませんか? こんがり揚がった茶色い衣が視界に入ると、つい立ち止まって、お腹が空いてもいないのに、1個買ってその場で食べてしまう……。まさに不要不急のカロリー摂取です。

先日、まさに筆者は東京・神楽坂の商店街でその予期せぬ遭遇をしてしまいました。お昼過ぎ、牛丼を食べたばかりでお腹いっぱいなのに、『大野屋牛肉店』という肉屋の前を通りかかってしまったのです。その店のガラスケースは、あろうことか一面、フライ。茶色のカラコンをつけたかのごとく、視界はこんがりきつね色の衣一色になり、催眠術にかかったように体が固まってしまいました。ついさっき牛丼を食べた記憶はふっ飛び、あれもこれも食べたい!

でもここは冷静に、牛肉店なのでメンチにしよう、と「ビーフメンチ」(260円)を1個買ってみたのです。手渡されただけで、牛肉の上品かつジューシーな香りが立ちこめます。ひとかじりすると、カリッカリの衣の中から、ゴロゴロした牛肉ミンチと甘い玉ネギ。食感はホクホクとしていて、牛肉の肉汁の甘みがじんわりと口中に広がっていきます。これは確実に、自分史上最高ランクのメンチです。

そこで、他の商品もテイクアウトをしたくなり、お店の方にオススメを聞いてみると、1番売れているのはコロッケで、平日で1日200個以上も出るんだとか。また、この店の名物は「スコッチエッグ」、さらに「ビーフメンチ」、「ポークメンチ」。
名物のメンチ三兄弟の味わいは?

スコッチエッグも、ポークメンチも、コロッケも、少々時間が経ってから食べたにも関わらず、脂っこい感じがせず、中の肉の味に高級感があります。ソースをかけなくても旨みたっぷり。まるでレストランで食べるような上質なフライなのです。そこで改めて、『大野屋牛肉店』のフライの美味しさの秘訣をお店の方に聞いてみることにしました。

店長の藤森福治さんによると、『大野屋牛肉店』は約70年以上前に創業。以前は、とんかつ屋さんも併設していたそうですが、今のような揚げ物が名物の肉の販売店スタイルになったのは20年ほど前。
「肉屋なので、ビーフメンチには松坂牛や黒毛和牛、コロッケやポークメンチには埼玉県や茨城県のブランド豚などから、揚げ物に最適な部位を厳選して使用しています。また大きな特徴としては、揚げ油です。豚のお腹の脂を挽肉にして、それを炊いてラードにした揚げ油にしているんですよ」
藤森さんがその挽肉を見せてくれました。大きなビニール袋に入ったそれは、薄いピンクで、新鮮そのもの! 1日30kgも使用するそう。

ちなみにパン粉は、常連さんのリクエストもあって、あまり口中への攻撃性の高くない細かめのものを使用しているんだとか。上品な衣と上質なお肉。そして新鮮な油。美味しい理由がよくわかった気がします。
なお、こちらのお店ではお弁当も販売しており、イチオシは、好きなおかずを詰め合わせることができるお弁当「ごはんセット」です。ここにぜひメンチ三兄弟を並べてみたくなります。

偶然のコロッケとの遭遇でしたが、次回は、わざわざ目がけて行きたいと思います。今度は、オリジナルのソーセージやフランクフルト、ベーコンなど大量買いしたいと決意。皆さんもぜひ、神楽坂散策のついでに『大野屋牛肉店』に足を運んでみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:大野屋牛肉店
住:東京都新宿区神楽坂6-8-58
TEL:03-3260-2947
営:10:30~19:00
休:祝日