昭和・平成・令和と、時代が変わるにつれ、ものすごいスピードで世の中は便利になってきました。この“便利さ”を追求する人間の心理は、「ラクをしたいという本能によるもの」だと聞いたことがあります。
そして、「インスタント麺すらもっと早く作れないかな~」などと、昭和の主婦に聞かれたらお玉で殴られそうに横着なことを考えていた矢先。人気の300円ショップ『3 COINS』で、「ビストロヌードル」という商品が売られているのを発見したのです。
なんでも、即席麺と水を入れてレンチンするだけという時短商品。「どんだけ時短したいんだよ」という声も聞こえてきそうですが、ついつい筆者はこういうものに惹かれて買ってしまうのです。

しかし、買ってから家に帰り、すぐに冷静になってこう思いました。
「本当にレンチンでインスタント麺が美味しくできるのか? そもそも即席麺は、沸騰したお湯に麺を入れ、茹で加減を見たり、スープを入れるタイミングを図るなどの“ちょっとしたひと手間”があってこそ美味しくなるんじゃないの?」と。

300円というリーズナブルな商品で便利かつ時短になったとしても、通常の鍋で作るラーメンのほうが美味しかったら意味がありません。そこで、さっそく「ビストロヌードル」と「鍋」の両方で即席麺を作って食べ比べてみることにしました。
鍋とビストロヌードル、どっちで作るのが美味しい?

さっそく、筆者が最近、ハマっている袋麺「辛ラーメン キムチ」を、「ビストロヌードル」と鍋で調理してみます。鍋のほうは、レシピの指定どおり、水500mlが沸騰するのを待ち、乾麺とスープの粉末、かやくを一気に入れて4分間煮込んでいきます。

一方、「ビストロヌードル」には、指定の500mlの水と乾麺、スープの粉末、かやくを全て入れて、電子レンジにかけます。

さて、出来上がった鍋の「辛ラーメン キムチ」から見ていくと、いつものように濃厚なスープとモチモチの麺の仕上がり。完璧です。

一方、「ビストロヌードル」で作った「辛ラーメン キムチ」はというと、あれれ? スープの色が薄い。そして麺も、なんだか、入れたままの形状で、モチモチしていない感じです。少し食べてみると、麺もスープも通常よりあっさりしています。

むむむ。これはどうしたことか…
筆者が推察するに、鍋で作ると、加熱中にお湯が対流するのに合わせて麺が動き、スープが麺によく染み込む。そして、お湯が蒸発することでスープ濃度が濃くなり、さらに麺から小麦もスープにしみ出る。その結果、スープはとろりと濃厚になり、麺はモチモチになる…という仕組みなんだと思います。

一方、「ビストロヌードル」は電子レンジの加熱なので、水分がさほど蒸発しません。

というわけで結論です。「辛ラーメン キムチ」に限って言えば、「ビストロヌードル」より、鍋で作るほうが美味しい。これは正直、間違いありません。
ただし、1つ重要なことを追記しておかねばなりません。今回、筆者が好きな「辛ラーメン キムチ」で比較しましたが、そもそも韓国の即席麺は、鍋に最初からスープと麺を入れて、よく煮込んで食べるのが前提に作られています。つまり、煮込むことでスープが麺によく染み込み、モチモチするわけです。

一方、日本のインスタント麺は、麺とかやくを茹でて、最後に顆粒スープを入れ、スープの香り、旨みを味わうという特徴があります。そう、日本のインスタント麺は煮込まないのです。つまり、今回の比較だけで、一概に「ビストロヌードルより鍋の方が美味しくできる」とは言えないのです。
日本のインスタント麺ならビストロヌードルは合うのかもしれない。というわけで、今度は家にあった「サッポロ一番 塩ラーメン」を「ビストロヌードル」で作ってみたところ、これは何の問題もなく美味しかったです。やっぱり……。
ついでに、ちょうど「アラビヤン焼きそば」があったので、これも作ってみます。

指定どおりの水と麺と生キャベツを「ビストロヌードル」に入れて、レンジで2分(指定の時間)+3分。フタを開けて麺をほぐし、再びレンジで2分。水気がなくなったらソースを入れます。そして、完成したのがこちら。

これも大成功でした! 麺もしっかりほぐれていて、ソースとよく絡み、フライパンで作るのとほとんど遜色ありません。そしていつものように美味しい。
というわけで、この「ビストロヌードル」は、“スープ(調味料)先入れの煮込み系のインスタント麺”ではなく、“スープ(調味料)後入れのインスタント麺向き”であることが判明。というか、日本製のインスタント麺はほぼ後者ですが…。
見た目もお洒落で器としても使えるので、調理だけでなく後片付けも時短になるのもいいですね。前述の通り、温野菜や肉まんなどの蒸し料理にも使えるので、気になる人はぜひお試しあれ。
(撮影・文◎土原亜子)