シチューといえば、ホワイトシチューをイメージする人がほとんどでしょう。もちろん筆者もホワイトシチューで育ってきたひとり。
お店があるのは、天神橋筋商店街から少し外れた場所。下町風情あふれる民家には、「特製シチュー」と「かね又 食堂」と書かれた大きな青い看板を掲げています。
年季を感じる佇まいは長年、地域の方から親しまれている証。年配の夫婦が切り盛りしており、聞くと戦前からあるお店なのだとか。現在の主人は2代目で、「かね又といえば、このシチューですよ」と奥様が話してくれました。
早速、「特製シチュー」の定食を注文。特製シチューに昔懐かしい味の玉子焼、小鉢を2つ、ご飯が付いてくるセットです。このシチュー、朝ごはんとして味わいにくる人も多いのだとか。韓国でも朝ごはんにスープとキムチ、ごはんのセットを味わう習慣がありますが、それに似ていますよね。それでは早速、味わってみましょう。
「特製シチュー」は定食で味わうのがベスト!
待ちに待った透明の「特製シチュー」がやってきました。シチューの概念を覆す透明のルウの味なんて、想像ができません。
器ごとすすってみると、出汁がしっかりきいたあっさり塩味。どことなく、大阪発祥の「肉吸い」にも似たような口当たりを感じます。あっさりしていながら、薄味というにはちょっと違う深みがあり、ビジュアルとのギャップに驚かされます。
具材は牛肉と玉ねぎ、じゃがいものみ。
感動したのは、それぞれの具材に出汁の味がしっかりと染み込んでいること。玉ねぎもじゃがいもも、食べ応えのある食感を残しながらも味わい深く、「特製シチュー」の真髄を感じた瞬間でした。
絶対裏切らない! 昔懐かしの「玉子焼き」にも大満足
正方形の玉子焼きは、分厚くてふわふわ! ところどころ表面に焦げ目が付いていて香ばしく、箸を入れてみると中は半熟状態になっていました。
具にはシンプルに青ねぎのみが入っていて、ふわとろの食感とやさしい出汁の味わいに、一気飲みならず一気食べしてしまうほどの旨さ!
小鉢はカウンターの上に並べられているものから2品選びます。今回選んだのは、れんこんのきんぴらと、切り干し大根。
洋食としての印象が強いシチューですが、スープ仕立ての和シチュー「特製シチュー」はじわじわと出汁の旨みが広がっていきます。斬新と思われがちですが、昔から伝わる大阪の味の一つ。冷え切った体もほっこりと温めてくれました。
(撮影・文◎道面 梓)
●SHOP INFO
店名:かね又
住:大阪市北区黒崎町12-15
TEL:06-6373-0324
営:9:00~17:00
休:日・祝日