東京・浅草――観光客でにぎわう浅草寺周辺を少し離れて“六区”と呼ばれるエリアへ。明治・大正期から劇場や映画館が立ち並び、現在も『浅草演芸ホール』や『浅草花やしき』などがあって、人気のエンターテインメントスポットとなっているのはご存知の通り。

そんな歴史ある街には食の名店もあり。今回ご紹介する『食事処 酒肴 浅草 水口』は昭和25年創業の老舗定食店です。地元・浅草で活躍する芸人たちにも愛される店で、定食のおかずをアテにお酒を楽しむ人も多くいます。特に、有名な名物メニュー「いり豚」は豚肉と玉ねぎをカレー風味のソースで炒めた、ちょっとスパイシーでやみつきになりそうな逸品。筆者も大好きな料理です。

しかし実はいり豚以外にも水口には美味しいメニューがたくさんあり、どれも定食か単品でオーダー可能。ご飯と味噌汁の単品もあるので、常連たちはこれらを自在に組み合わせることで、世界に一つだけの“マイ定食”を作っています。そう、これが実は水口では楽しいのです。というわけで今回は、訪れたらぜひ試してほしいオススメのおかずの組み合わせをご紹介しましょう。
自由自在に単品おかずを組み合わせて“マイ定食”を作る!

というわけで、さっそく筆者のオリジナル定食をオーダー。内容は次の通りです。
・手作りコロッケ(単品・450円)
・イカバター焼(単品・690円)
・栃尾油揚焼(450円)
・御飯 並(200円)
・なめこ汁(450円)
これに小鉢とお新香もついて、豪華この上ない定食が完成。
今回の定食は「手作りコロッケ」が主役。これをメインにしたのは、お店で毎朝、じゃがいもをふかすところから手作りしている絶品だから。とにかくウマいんです。これを軸に、「イカバター焼」と「栃尾揚げ」をサイドに配する布陣で攻めていきます。

まずは心を整えて、今回の主役「手作りコロッケ」を。最初は何も付けず、そのままいただきます。揚げたてのホクホク感がたまりません! “おいも感”が強く、ソフトな口当たり。何もかけなくても十分美味しいのですが、レモンを少し搾ったり、ソースをかけると、ちょっとフルーティーな酸味も加わって、めちゃくちゃ美味しくなります。いやぁ、これは絶品! これだけでご飯を何杯も食べられそうです。

続いて「イカバター焼」に箸をのばします。プリンとした弾力ある歯ざわりとともに、ほんのりとしたバターの塩気。

次に「栃尾油揚焼」へ。ご存知の人も多いでしょうが、新潟県長岡市の栃尾地区は油揚げが名物で、現地では「あぶらげ」と呼ぶそうです。その油揚焼、見た目は厚揚げのようですが、口に入れるとフワッとした食感。しかし噛むほどに旨みがにじみ出し、しっとり感が現れてきます。

このままでも十分に美味しいのですが、刻み白ネギにショウガ、そして醤油をほんのちょっとだけかけて食べてみると、さらに旨さが加速。焼いた油揚げの香ばしさにショウガと醤油の風味がピタリと寄り添います。このとき、醤油をかけ過ぎると油揚げの風味が楽しめなくなるのでご注意を。

最後は「なめこ汁」とご飯でフィニッシュ。このなめこ汁がとろとろでまたウマいんです。なめこの旨みも出ていて、深みのある味です。

ちなみに、水口はお刺身や焼魚、煮魚などの魚料理も充実しているほか、ハンバーグやナポリタン、オムレツなどの洋食メニューも豊富。世代を超えて、界隈の人や浅草芸人たちに愛され続ける理由がわかりますよね。
筆者が訪れたときは、お刺身やフライなどでお酒を飲んでいるお客さんの姿もちらほら見かけました。次回来店の際は、栃尾の油揚焼とたこ酢、そしてキスフライでビールを飲もうと思います。みなさんも浅草に立ち寄る機会があれば、ぜひ行ってみて、自分だけの定食を楽しんでみてください。
(撮影・文・◎松本壮平)
●SHOP INFO

店名:食事処 酒肴 浅草 水口
住:東京都台東区浅草2丁目4番9号
TEL:03-3844-2725
営:月・火・木・金10:00~20:30(20:00LO)
土・日9:00~21:30(21:00LO)
休:水曜(不定休あり。店内およびHPにて告知)