中国の街角や屋台街で頻繁に見かけるグルメの一つが「羊肉串」です。羊をぶつ切りにし、クミンや唐辛子などのスパイスをふりかけて焼いた串焼きで、中国の“路上のソウルフード”と言ってもいいかもしれません。
筆者は20年ほど前に北京に留学していたのですが、当時は路地裏の屋台に質素なロースターが置いてあり、炭火であぶった肉汁したたる羊肉串をぬるいビールとともに食べる…そんなイメージでした。

しかし! そんなイメージも今は昔。現代中国では、この羊肉串にもニューウェーブの串焼き専門店が登場して人気を博しています。その名も『羊不同カオ小串(カオは火へんに考/以下同じ)』。発音は“ヤン・ブ・ドン・カオ・シャオチュアン”。「羊不同」を無理やり日本語にすると、「羊が違うぜ!」というような感じでしょうか。名前からしてすんごいインパクト。
中国の東北地方を中心に、かなりの数の店舗を展開している串焼きチェーンで、本店は中国の東北地方・吉林省延辺市にあります。つまり、こちらは延辺風の串焼き専門店なのです。

そんなお店が、とうとう日本上陸を果たしました。場所は東京・御徒町。写真のとおり、謎にポップでサイバーな店内、そしてギラギラのネオンと看板。
串焼きが50種! 串の種類の多さに圧倒される

このお店の最大の特徴は、テーブルに据え付けられたロースターで、お客が自ら串を焼いていく点です。中国では朝鮮族(中国国内に住む朝鮮系の人)のお店でこの形態が多く、私も北京在住時に足しげく通いました。昔は手でくるくる回して焼いたのですが、今は全自動。セットして放置しておけばどんどん串が焼けていく夢のマシーンとなっています。その肉が焼ける過程を見ているだけで胸がワクワク。なぜ人は肉が焼けるのを見ると心が躍るのか。永遠の謎であります。

わかりにくいんですが、串の根元に歯車があり、自動的に串がくるくると回る構造なんです。たまに焼き具合を見るだけで、話しながら飲みながら焼きたての串をどんどん食べられるこのシステム、超便利です。しかも上部にせり出したダクトが煙を吸うので目の前でもくもくと煙が上がっているのに、服に匂いが付いたりもしません。

メニューはたくさんあるのですが、例えばベーシックな羊肉串10本で950円といった感じ。肉は小ぶりですが、この大きさがパクパクいけて丁度いいのです。間に挟まった脂を焦げる寸前までカリカリに焼いて、スパイスや卓上のソースをつけていただきます。
ちなみにこちらのお店、羊だけではなく、牛・豚・鶏と約50種類の串焼きが楽しめます。例えば日本ではなかなかお目にかかれない、コリコリと美味しい牛の大動脈(1串180円)、独特の羊の香りがたまらない羊の肝臓(1串500円)など、さすが食い倒れの国・中国らしいと思わせる珍しい部位も多数。1回ですべてのメニューはとても食べきれません。

そして、肉以外のサイドメニューや冷菜も非常に美味。串焼きの合間に冷菜で箸休めし、その後さっぱりした口でさらに串焼きを食べるという、“無限羊肉串状態”に陥ります。個人的には、ほくほく感がたまらない「じゃが芋」(1本100円)、香ばしい「マントウ」(1本180円)などもおすすめです。

もうとにかくメニューが豊富で、かつ店の雰囲気を含めて情報量が多すぎる店なので、ぜひご自身でお店に行って体験してみてください。中国で今ブームの「庶民的な料理をポップな雰囲気のなかで楽しむ」という独特の雰囲気を肌で感じられますよ。
●SHOP INFO

店名:羊不同カオ小串 上野本店
住:東京都台東区上野1-20-1 ユニゾ上野一丁目ビル2F
TEL:03-6284-2898
営:11:30~23:00(22:30LO)
休:無休
●プロフィール
菊池一弘
羊齧協会主席。