2022年も、引き続きからあげブームに後押しされ、美味しく、そして特徴あるからあげが続々と登場しています。
そこで今回は、日本唐揚協会認定カラアゲニストとして日夜「から活=からあげ食べ歩き活動」に励み、本サイトでもからあげにまつわる記事を連載中の松本壮平氏が、2022年上半期にご紹介したからあげの名店の中から、特にオススメというからあげのお店を5軒、厳選してご紹介します!
どのお店もこだわりを持ってからあげを作っています。
味もボリュームも満足度100%! 老舗の「唐揚げライス」|『鳥割烹 大金』(日本橋浜町)

東京・日本橋浜町の『鳥割烹 大金(だいきん)』は長い歴史と風格を感じるお店です。もともとは料亭などへの仕出し料理店として明治期に開業、昭和に入ってから鶏肉の販売を始め、昭和42年に現在の『鳥割烹 大金』を開業したそうです。

こちらの人気メニューは「唐揚げライス」と「竜田揚げライス」。5個、4個、3個と個数を選べるだけでなく、からあげと竜田あげのミックスも可能です。目の前に運ばれてくるからあげ&竜田あげを見れば仰天必至。とにかくデカい! 1個70gほどはあるでしょうか。平べったい形状も特徴的で、ひと口目で半分も食べ切れないサイズ。漬けダレの色が衣に出て濃い色合いのものがからあげ、やや白っぽいものが竜田あげです。
からあげの衣は炙りたての新鮮な焼き海苔のようなパリッとした歯ざわりで、軽いおこげが香ばしい。弾力のある肉からショウガの爽やかな風味が口から鼻、のど一帯に拡散していきます。ニンニクは不使用。ショウガの風味と肉の旨み、そこに衣の香ばしさが加わって、ご飯が無限にすすみそうな濃厚な味に仕上がっています。

一方の竜田あげは、からあげに比べて衣がフワリとした食感。

こちらのからあげと竜田あげの作り方は、肉を漬けダレに1日漬け込むところまでは同じ。からあげはその肉に片栗粉をまぶして揚げ、竜田あげは溶き卵にくぐらせたあとに片栗粉をまぶして揚げているそうです。竜田あげに溶き卵を使うのは、旨みや肉汁をよりしっかり閉じ込められるから。言われてみれば、竜田あげはからあげよりも旨みが強くて肉汁も多い印象。衣のフワリとした食感も溶き卵のなせる業でしょう。
●SHOP INFO
店名:鳥割烹 大金
住:東京都中央区日本橋浜町2-10-6
TEL:03-3666-6929
長野出身の店主が揚げる「山賊焼き」|『からあげ家いっちゃん』(松陰神社前)

長野県の当地からあげといえば「山賊焼(さんぞくやき)」。松本市や塩尻市を中心とする地域で古くから親しまれている郷土料理のひとつで、鶏の一枚肉に衣を付け、豪快に揚げているのが特徴です。名前の由来は、一説によれば鶏を揚げる料理を、物を“取り上げる(=鶏揚げる)”山賊になぞらえ、そして少量の油で焼くようにして揚げたことから“揚げ”ではなく“焼”になったと言われています。

東京・世田谷、松陰神社近くの『からあげ家いっちゃん』はテイクアウト専門のからあげ店。
まずは「山賊焼」。台湾鶏排のような大きなサイズです。袋入りで提供されるので、手で持ってガブリといくのがいいでしょう。肉厚で食べごたえはバツグン。醤油、酒、ニンニク、ショウガで味付けしているそうで、味もしっかり、旨みもバッチリ。何より肉の柔らかさにメロメロ。舌の上でとろけそう…というより、強烈な肉の旨みをたっぷり残しつつ、とろけながら舌に吸い込まれていくようです。見た目はワイルドですが、やさしく上品な味わいで、山賊というより“山の女神”とでも言いたくなるようなイメージです。

「ニンニクからあげ」と「しょうがからあげ」は味付けだけでなく、食感がまるで違います。
また、「甘辛手羽」は、手羽元の肉を開いて揚げて、甘辛いタレをからめたもの。このタレが抜群の美味しさ! 濃厚で食欲をそそる味わいです。タレをからめているのに衣のカリッとした食感もしっかり感じられます。ご飯が欲しくなる味ですが、ビールのアテとしても超優秀です。
●SHOP INFO
店名:からあげ家いっちゃん
住:東京都世田谷区若林4-3-9 101
味も揚げ具合も百点満点のの絶品「ムネ肉からあげ」|『鶏ちゃん』(幡ヶ谷)

東京・甲州街道沿いにある、テイクアウト専門の『からあげ専門店 鶏ちゃん 幡ヶ谷駅前店』はムネ肉からあげが絶品。こちらの「むねからあげ」は1個から購入可能で、無理せず好きなからあげを好きなだけ購入できます。
オーダーして待つこと6~7分。大ぶりのからあげが登場します。

醤油ベースの特製漬けダレにしっかり漬け込み、さらにもみ込んでいるという肉は、ムネ肉とは思えないほどのやわらかさ。肉の旨みをしっかり感じられるだけでなく、醤油の風味がそこに加わり、和のテイストが際立つからあげ。これはとめどなく食べてしまうキケンな味です。
モモ肉からあげと同じ方法で調理しては、こうはなりません。大ぶりなサイズも、固さの原因となる繊維質をカットすることを意識したものでしょう。ムネ肉からあげを美味しくするポイントを押さえていますね。

ちなみに、「ももからあげ」も期待を裏切らない美味しさ。大ぶりで旨みがしっかりと閉じ込められた肉からは肉汁がとろ~りと流れ出てきます。ムネ肉とは違った、フワリとやわらかい肉質。ガリッとした衣との相性もいい。
ちなみに『鶏ちゃん』では、ムネ肉、モモ肉のほか、手羽先や鶏皮、やげん軟骨のからあげも提供しています。部位ごとに異なる調理法を研究し、さまざまな部位のからあげを自信を持って提供している点も、そのお店のクオリティの高さを示すひとつの指標と言えるのではないでしょうか。
●SHOP INFO
店名:からあげ専門店 鶏ちゃん 幡ヶ谷駅前店
住:東京都渋谷区幡ヶ谷2-7-12
TEL:03-3374-9321
危険なほどウマいビアパブの「鶏の半身揚げ」|『ON TAP 江戸東京ビール』(住吉)

東京・江東区にある『ON TAP 江戸東京ビール』は醸造所を併設したビアパブで、できたてのクラフトビールを楽しめるお店。ビールの美味しさは言うに及ばず、こちらの「鶏の半身揚げ」が絶品なのです。

オーダーから15~16分ほどで半身揚げのお出まし。香ばしく上品な香りが漂い、これだけで食欲にエンジンがかかります。カラアゲニストとして、これまでいろんなお店の半身揚げを食べてきた筆者ですが、ここまで香り高い半身揚げは初めてです。
ムネ肉はしっとり柔らかく、一瞬「モモ肉?」と思ってしまうような食感。旨みも十分で、しかも味に深みを感じるのは、岩塩やニンニク、ショウガ、昆布などを使った漬けダレに2日間漬け込んでいるから。一般的な半身揚げの味付けは塩のみ、という店も多いのですが、そこまでさまざまなものを使っているとは! 肉の旨みだけではない、豊かな味わいが口の中で踊るようで、食欲が加速していきます。ムネ肉のジューシーな食感も、十分な漬け込み時間の賜物でしょう。

モモ肉を食べると、さらに納得。豊潤な味わいの中に、かすかに上品な甘さも感じます。
こちらのお店、メニューには常時10種類のクラフトビールが並んでおり、店員さんに聞けば、半身揚げに合うビールをオススメしてくれます。この半身揚げと、フルーティで爽やかなクラフトビールがまたよく合うんです! 合間にビールを飲むと、口の中がさっぱりするだけでなく、爽快な余韻をしっかりと残して、それが次の半身揚げのひと口へといざなってくれます。
●SHOP INFO
店名:ON TAP 江戸東京ビール
住:東京都江東区千田16-2
プロントの夜の新業態で味わえる「チューリップからあげ」|プロント 銀座コリドー店(銀座)

おなじみのプロントが、2021年から夜の時間帯を「サカバタイム」と銘打って、新業態『キッサカバ』(喫茶+酒場)をスタートさせています。ひと昔前の懐かしい酒場をイメージしており、おつまみメニューもハムカツやポテトサラダ、タコサンウインナーなど郷愁を誘うものがたくさん。

こちらの一番人気が「チューリップカラアゲ」。ひと昔前はお弁当やパーティーなどでお馴染みだったチューリップからあげ。切れ目を入れた手羽から骨を1本抜き、肉をクルリとひっくり返して形状を整えて揚げるものです。作るのに手間がかかるため、飲食店などで見かけなくなった不遇の時期もありますが、ここ最近は再び脚光を浴び始め、提供するお店も徐々に増加傾向にあります。
1本からオーダーできる「チューリップカラアゲ」は、「プレーン」、「ザク辛」、「危険なのり塩」の3種類から選べます。「プレーン」はザックリとした衣はやや厚め。昨今は“薄衣”にこだわるからあげが主流ですが、かつてはこんな厚衣も一般的でした。これ、昭和生まれには懐かしい! ザックザクの歯ごたえが爽快で、香ばしさもあります。ショウガベースの味付けの肉とうまくミックスされて、メリハリある食感が楽しめます。

続いて「ザク辛」。オリジナルスパイスがたっぷり振りかけられていて、口から火を吹きそうな激辛を想像しましたが、食べてみると、不思議なことにほとんど辛くない!唇や舌を突き刺すような刺激を覚悟していましたが、プレーンの味にマイルドな旨みが加わった印象。唇をやさしくなで、舌にそっと舞い降りるような旨みがあります。
そして「危険なのり塩」。オリジナルののり塩がたっぷりかけられたからあげは、香りがとにかくイイ。ひと口食べれば、磯の風味が炸裂し、衣の香ばしさ、肉の旨みに爽やかな味わいをプラスしてくれます。これは3種類のチューリップからあげの中で、筆者の一番のお気に入りでした。
●SHOP INFO
店名:プロント 銀座コリドー店
住:東京都中央区銀座6-2