黄色い看板にかかしのキャラクターが目印の『山田うどん食堂』、通称・山田うどん。1965(昭和40)年に埼玉県所沢市に第1号店を開店して以来、埼玉を中心に、主に東京都下および関東6県のロードサイドに多く点在。
筆者もドライブ中によく見かけてはいたのですが、実は一度も食べたことがありませんでした。食べたことがあるという人に「あそこのうどんって美味しいの?」と聞いてみても、「普通かなぁ」「あまり覚えてない」など、なんとなく薄めの反応が多かったので、あまり積極的に行ってみようと思うことがなかったのです。

ところが先日、埼玉県在住の仕事仲間と話していた時のこと。彼は近所の『山田うどん食堂』によく行くそうで、「あそこはうどんよりパンチが旨いですよ」と教えてくれたのです。思わず「パ、パンチ? 何ですかそれ?」と聞き返しました。
聞けば、パンチとはもつ煮のことで、40年以上、『山田うどん』で人気を誇る名物であり、年間248万食も売れている裏番長的なメニューとのこと。そして、そのパンチとごはんをセットにしたのが「パンチ定食」なんだそう。というか、山田うどんの常連なのに、推しがうどんじゃないことに驚きました。
さらにその知人いわく、「最近は“赤パンチ定食”っていう新メニューも出てきて、それがめちゃくちゃクセになる味」だと言うのです。パンチも知らないのに、赤パンチなる謎ワードまで飛び出し、まさにダブルパンチを受けた筆者、これは食べてみなければ、と思い立ち、実際に『山田うどん』で実食してみることにしました。
気になるパンチは果たしてどんな味?

というわけで某日、『山田うどん食堂』にやってきました。
そして、その中に噂の「パンチ定食」(670円)、「赤パンチ定食」(720円)を発見! しかも、パンチも赤パンチも知らない筆者のような“山田うどん初心者”にうってつけの、“赤白どっちも”と銘打った「パンチ食べくらべ定食」(700円)もありました。

つまり、定番のパンチは“白”で、“赤”は派生メニューだということがこの時にわかりました。というわけで一も二もなく「パンチ食べくらべ定食」を注文することに。しかし何度も言いますが筆者は山田うどん初訪店。看板メニューであるうどんもぜひ食べてみたい。
そこでメニューをよ~く観察すると、定食にプラス250円で味噌汁の代わりに「たぬきうどん」(冷・温)か「ざる(うどん・そば)」が付けられると判明。そこで、「パンチ食べ比べ定食」に“冷やしたぬきうどん”をプラスすることにしました。総計950円ですね。
待つことしばし。まずは「パンチ食べくらべ定食」が登場しました! 赤白のパンチが小鉢サイズでお盆にのっています。

まずは白パンチ。具材は豚モツ、コンニャク、メンマ。そしてネギが振りかけられています。食べてみると、じっくり煮込まれた豚モツはクタクタ&トロッと柔らか。臭みは皆無で、噛めば噛むほど濃いめのダシがじわっと染み出てきます。これは確かに美味しい!
ベースは醤油と白味噌でしょうか。旨味濃厚でほんのり甘く、ほんのりピリ辛。ご飯にのせてみると、濃厚な味わいがお米に浸透し、飲むように食べられます。なるほど、これが名物になるのもわかりますね。

続いて赤パンチ。これがまた、知人が言っていたとおりのクセになりそうな味わい。

この辛味醤が、ごはんにめちゃくちゃ合います。白パンチが和み味だとすると、赤パンチは刺激たっぷりの唐辛子味ですが、辛さに負けず劣らず旨味があって、それが最高なのです。白パンチ、赤パンチを交互に食べつつ、ごはんを頬張る時間は、まさに至福。

両パンチをごはんに載せ、“紅白パンチ丼”にして夢中でかっこみながら、ふと我に返って焦りました。そう、セットで頼んだうどんが横にあったのを忘れていたのです…。

いざうどんをすすってみて、「これは確かに普通だ!」と思ってしまいました。良い意味で“普通”なんです。最近の東京で食べるうどんは、コシが強い“さぬきうどん”的なうどんが主流で、すぐにお腹いっぱいになりますが、山田のうどんは、昭和の時代に食べていたようなやわらかいうどん。食感に特徴がなく、おつゆもスタンダード。強い印象がないのですが、むしろそれがイイ。

というわけで、名物「パンチ定食」と、さらに新名物の「赤パンチ」を堪能し、すっかり満足した筆者。パンチを専門にした『山田パンチ食堂』があってもいいのに、などと勝手ながら思った次第です。次回、再訪時には改めて赤白パンチを増量して食べたいと思います。
(撮影・文◎土原亜子)