WTAサイモン会長「選手やスタッフ全員が直面しうるリスクを大いに懸念」

12月2日、女子テニスを統括するWTA(女子テニス協会)は、元ダブルス世界ランク1位のペン・シューアイ(中国)が中国の元副首相から性的暴行を受けたとする一連の疑惑に対し、再度声明を発表。事態を重く受け止め、香港を含む中国での大会開催を中止するとした。


【動画】中国のテニス大会に姿を現したペン・シューアイを中国メディアが公開

ペンは、11月初めに中国のSNS「ウェイボー」で、同国の元副首相のジャン・ガオリー氏による性的暴行を受けていたと告白。のちに投稿は削除され、ペンも行方不明となった。

その後、WTAの抗議などを受けると、中国国営メディアはペンがWTAに送ったとされるメールや、中国で開催されたテニス大会に姿を現わした映像を公開。また、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長とも直接連絡を取り合ったとし、「自宅で元気に暮らしている」と述べたという。

しかし、WTAのスティーブ・サイモン会長は、声明で「残念ながら中国の政治家たちは、この非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない。ペンの居場所はわかったが、彼女が自由で安全であり、検閲や脅迫を受けていないのかどうか、私は深く疑問を抱いている」と、中国側の対応を非難。

その結果、「権力者が女性の声を抑圧し、性的暴行疑惑を隠ぺいすることになれば、WTAが設立された基盤である女性の平等は大きく後退することになる」とし、「WTA理事会の全面的な支持を得て、私は香港を含む中国で開催されるすべてのWTA大会を直ちに中止する」と決断した。

「ペン・シューアイが、自由なコミュニケーションを許されず、性的暴行疑惑を否定するように圧力をかけられている状況で、WTAの選手をそこでプレーさせるわけにはいかない。現状を考えると、2022年に中国で大会を開催した場合、選手やスタッフ全員が直面しうるリスクを大いに懸念している」と説明している。

コロナ前の2019年には、4つのグランドスラムと55大会のツアー大会で構成されるWTAツアーのうち、9大会が中国で開催。ツアー最終戦が行われるなど、その数はツアーの約6分の1とWTAにとっては大きなビジネスの舞台だ。だが、それを棒に振ってでも、男女平等を求め設立されたWTAの理念を貫いた。
WTAと同じく、中国で大会を開催しているATPやITFもあとに続いていくのだろうか。
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