グリップは「木が剥き出し」→「天然皮革」→「シンセティック」へ。グリップテープが必要とされた真の事情!


今でこそ、テニスラケットのグリップには「グリップテープ以上の性能」を備えたシンセティックグリップが巻かれた状態で店頭に並びますが、1980年代までは「天然皮革製のグリップレザー」(以降 グリップレザーと表記)が巻かれていました。


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グリップレザーが巻かれる前(1950年頃以前)は、木製ラケットフレームの「木」が剥き出しになったグリップだったのです。現代の若者には想像もできないでしょうが、木が剥き出しのグリップには、縦方向にたくさんの溝が刻まれていて、それで「グリップが回されないための滑り止め」としていました。

第二次大戦後、グリップに天然皮革が巻かれるようになった頃、鞄や財布、靴、椅子やソファなどに使う素材として、もっとも高級なのが「天然皮革」であり、「革製」は贅沢……ラグジュアリーな持ち物でした。しかし天然皮革は高価な素材ですから、もっと安価に、それっぽいのはないか?ってことで、合成皮革が「天然皮革の代用品」として使われるようになりました。当初はいかにも「革のニセモノ」っぽかったのですが、その後、「合成」よりもイメージのいい「人工皮革」と呼ばれるようになり、見た目も触った質感も天然皮革に迫り、しかも軽いと、大きな進化を遂げます。そして先に挙げたもののほとんどすべてに、「人工皮革」で代用されるアイテムが多くなっていったのです。

ただ、テニスラケットの場合、天然皮革に取って代わったのは人工皮革ではなく、厚手の不織布などをベースとしてクッション性を備えさせ、なおかつ表面をウレタン層でコーティングした「シンセティックグリップ」でした。グリップレザーとはまるで違う「吸い付き感」を実現し、登場当初は「妙にフワフワするな」ということで「クッショングリップ」とも呼ばれ、それだけで十分なグリップ性能を持っているのに、今では「その上にさらにグリップテープを巻く」のが慣習のようになっています。

はじめてシリーズ「グリップテープ選び」#11 ~グリップテープは「ラケットの下着」。その存在価値を見直して!~


■グリップテープの本来の役割を、全うさせてあげよう!


初めてラケットを買う初心者でも「グリップテープはどれにしますか?」と、巻くのが常識みたいな昨今ですが、たしかにグリップテープを巻いた直後の握り感触は、しっとりして清々しく、じつに気持ちいいです。

でも一部には、本物のグリップレザーのフィーリングを愛し続ける人もいます。
プロケネックス【プレミアムナチュラルレザーグリップ】やフェアウェイ【レザーグリップ】など、高品質レザーというのは、握った瞬間、手のひらに沁み込むようなしっとりさがあり、「まさに上質な握り感」を得ることができます。

しかしそんな天然皮革グリップレザーの最高フィーリングも、時間を経ると、「汗を吸い込む→乾燥」の繰り返しにより、レザーは硬くなり、表面はツルツルになってしまいます。すると握り感が固くなるだけでなく、滑れやすくなって、オフセンターショットすると、グルンっとグリップが手のひらの中で回ってしまい、ミスショットとなります。


はじめてシリーズ「グリップテープ選び」#11 ~グリップテープは「ラケットの下着」。その存在価値を見直して!~


だから! それを解消するために「グリップテープ」は生まれたのです。テープは弱いものだから、数回使うと、本来のタック性は失われ、表面ウレタンのしっとり感は消え失せてボロボロになり、テープの縁がめくれ、元は何色だったかわからないほどに汚れてしまいます。

それはもう「グリップテープとしての働きを終えた姿」であり、巻かれているのは「寿命を終えた残骸」です。ウェットタイプのテープであれば、表面のツヤツヤ光沢感が消えた段階で、「機能終了」。吸い付き感は失せ、それ以降は、ただ汚れていくだけ。

寿命を全うしたグリップテープは、早く巻き替えてくれるのを待っています。

■週一プレイヤーは、「1カ月に1回」、自分で巻き替えよう! 


私たちは「下着のパンツは履き替える」という貞節を持っています。汚れたものを身に付けているのは「不潔」とされます。パンツを履き替えるのは、人としての常識。履き替えることで、大事なところを清潔に保ち、ズボンも汚さずにいられる……はずですよね。

履き替えるために下着があるのと同じように、『巻き替えるためにグリップテープはある』のです。機能しなくなったグリップテープを……しかも黒ずむほどに汚れたテープを巻いたままにしている人は、汚いグリップをみんなに見られて平気でいるだけでなく、それを握った手で「握手を求める」のですよ。


どう思いますか?
汚れたグリップテープは汗を吸い、雑菌・バクテリアの温床となります。ひどい場合は異臭を放ち、不潔きわまりないグリップを……素手で握り、平然と握手しようとする人って、見かけることがあるでしょ?

テニスは「マナーを大切にするスポーツ」とされています。汚くなったグリップを見せるだけでも周囲に不快感を与えるかもしれません。ましてやそれを握った手で握手を求めるなんて、とても失礼な話です。

グリップテープは使い捨て用の下着と同じ。女性でも自分で簡単に巻き替えることができます。週一でプレイするならば、せめて「1カ月に1回」は、新しくて清潔なテープに履き替えて……いや失礼……「巻き替えましょうね」!

はじめてシリーズ「グリップテープ選び」#11 ~グリップテープは「ラケットの下着」。その存在価値を見直して!~


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文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
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