振動止めは、ストリングの振動を抑えるための小道具!
テニスを始めて最初のラケットを買いにテニスショップへ。あるいは2本目のラケットを買いに別のテニスショップへ行き、やっとストリングの種類まで決めたところで、ダメ押しのように「振動止めはどれにしますか?」と、あたかも「付けて当然」のように店員さんから確認される昨今……「あれって本当に必要なんですか?」と訊かれることがあります。
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正直に申しましょう。
「必須じゃないです!」
いわゆる「振動止め」とは、1980年代に「木製フレームからカーボン製フレームへの移行期に生まれた」もので、『ストリングに発生する振動を抑えて、感覚を鈍くするツール』です。それまでの木製フレームは、ストリングの振動を吸収してしまう効果がありましたが、カーボン製フレームは、ストリングの振動を伝達しやすく、もちろんフレーム自体の振動も伝えやすくなりました。
そこでラケットメーカーの【フィッシャー】が、オマケとして付属したのが『ビブラカット』(VIBRA CUT:当時の日本語呼び)で、縦ストリングの中央2本を挟むように設置する黒い小さなパーツでした。
たしかに「ビィ~ん」と痺れるように手に伝わっていた振動が、ほぼ感じなくなるんですね。その後、フィッシャーは、これを単品として販売し始めたため、他もメーカーも追随し、振動止めはしだいに広まります。ただ、「ボソッという感じで、打球の感覚が鈍りすぎる」という評価もあり、もっと効果が薄めの「スポンジ状の振動止め」などが生まれます。これは大きくて目立つため、プロが愛用すると、それに影響を受けて一般プレーヤーも使い始めます。
そうこうしているうちに、カーボンの進化によってラケットフレームはどんどん硬くなり、振動が伝わりやすくなるうえに、プレーヤーのインパクトも強烈になり、スポンジ製振動止めは「効果が薄い」として、すべてが今の「カタマリ型」の振動止めになりました。
ただ、「ビィ~ん」という振動の原因を辿ってみると、ストリングが張られている状態に原因があったり、フレーム自体の振動だったりするわけで、あの振動止めが「免罪符のように、すべての振動をなくしてくれる」わけではありません。
でも、あれを付けることで、「ビィ~ん」は薄れ、なんとなく「これはイイものなんだ!」としだいに擦り込まれていきました。1990年代以降には、(今のような)振動止めをオマケにして販売するラケットも登場。つまり最初から「これを装着してね」と言わんばかりで、「その状態が、このラケットの完成形」といったメーカー側の姿勢が、「振動止めは付けて当たり前」という風潮を生んだりもしました。
それでも「オレは振動止めなんか付けない!」というプレーヤーも生き残ったのです。「なんでもかんでもボンヤリさせてしまうのは、オレは好かん!」という主張であり、プロ選手も「非装着派」と「装着派」に分かれていきます。
■付けるか・付けないかは「打ってみてから決める!」
カーボン製ラケットフレームにとって振動は弊害である……という考えは間違いではありません。それはメーカー側にも広まり、フレーム自体に「振動減衰システム」を付属したり内蔵したりして、「付属の振動止めがなくても振動は抑えられているんですよぉ~」というラケット開発が進むんですが、それはおもに「フレーム自体の振動抑制」を狙ったもので、科学的な分析においても、フレームの振動とストリングの振動とはまったく別のモードである!と明らかになっています。
ですが……どんなに「付けなくても平気」と対策してあげても、「振動止め……必要でしょ」という風潮には影響を与えません。
そんなわけで「最初っから振動止め在りき」とした店頭販売が通常化していくわけですが、筆者は「まずは付けないで打ってみて!」と勧めます。それでとくに問題を感じなければ、そのままで使ってください。それがそのラケットのオリジナルの『味わい』なのです。
そうして使ってみたうえで「う~ん、ビィ~んって気になるんだよね」であれば、振動止めを付けることもやぶさかではありませんよ。付けてみて、逆に「なんだかボサっていう感触が好きじゃない」という方は、ストリングの張り方を疑ってみて、別のストリンガーに依頼するのも一手ですし、もしかしたらラケット側の「グロメット」や「フレーム内部」に原因があるかもしれないので、優秀なストリンガーを探して、相談してみましょう。「そんな人、いるの?」とご心配かもしれませんが、各地域に一人くらいはいるものです。
今回は「付けるの必至なの?」について話しましたが、次回は「振動止め装着のルール」について話しましょう。
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文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。



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