
無線を利用して列車の走行位置などを確認する「無線式列車制御システム」の導入が進んでいます。JR東日本は2020年秋、八高線で試験開始、小海線に導入。国土交通省は地方鉄道への展開を目指し、専門家による検討会を設けて課題を整理しています。
鉄道は有史以来、線路を電気的に区切って前方に列車がいない場合だけ進行できる軌道回路の原理で運行管理してきましたが、新方式は無線で前方の安全をチェックする仕組みです。新システムは線路や信号ケーブル点検などの膨大なバックヤード業務を軽減して、省力化・効率化につながります。技術的なポイントに加え、国や事業者の考え方を探ってみました。
軌道回路に代わり無線で前方の安全を確認

文字では説明しにくい無線式列車制御システム。まずは、国交省鉄道局の検討会資料を転用したイメージをご覧下さい。
左側の「従来の列車制御システム」が現行方式。軌道回路はレールを電気的に仕切った1つの区間で、列車が区間内に入ると後方の信号が「赤」に変わり、列車の誤進入を防止します。列車が軌道回路区間を抜けると、信号は「黄」や「青」に変わり、後方の列車が区間内に進めます。
これに代わるのが右図の「無線式列車制御システム」で、線路を区切る軌道回路をやめて無線で前方の列車をチェック、安全確認した上で進行する仕組みです。図では、①自列車の位置情報を地上無線機に送信 ②地上制御装置が停止位置情報を生成 ③後続列車に停止位置情報を送信 ④停止位置情報を基に速度制御――と何やら複雑ですが、実際は無線式の方がずっと簡素です。