JR森ノ宮駅。高架上のホームは相対式2面2線。
戦前の1932年開業で、現在は1日約2万3000人が利用します(2023年の1日乗車人員)(筆者撮影)

最近、関西圏で鉄道ファンが注目するエリア、それは大阪市城東区の森ノ宮駅界わいです。JR大阪環状線で大阪駅から10分ちょっと。JR線のほか、Osaka Metro(大阪メトロ)中央線と長堀鶴見緑地線の鉄道3線が接続します。交通結節点であるのは確かですが、JR、大阪メトロともに小ぢんまりした駅でターミナル駅ではありません。

森ノ宮がスポットライトを浴びる理由はズバリこれ。メトロ中央線の延伸線、森ノ宮~(仮称)森之宮新駅間1.1キロが2024年6月末に国土交通大臣の特許を受け(一般鉄道の免許に相当)、4年後の2028年4月開業予定のスケジュールが本決まりになりました。

森ノ宮をめぐってはもう一題、延伸線開業までの期間を活用して、自動運転バスなど未来の交通を体験してもらうイベント「e METRO MOBILITY TOWN(イーメトロモビリティタウン)」の2025年1~10月開催(一部2024年11月末開幕)が、大阪市からアナウンスされます。

本コラムは、周辺取材で判明した大阪メトロや大阪市が延伸線整備とモビリティイベントに取り組む理由とともに、2024年7月末の関西紀行で訪れた森ノ宮周辺の探訪記をお届けします。

(JR森ノ宮駅北東側にはJR西日本吹田総合車両所森ノ宮支所と大阪メトロ森之宮検車場が隣接します。本コラムの写真はJR、メトロともに鉄道用地外から撮影しています)。

大阪公立大新キャンパスのアクセス新駅

最初に、大阪メトロが中央線を延伸し、森之宮新駅を整備する理由。大阪市の都市構造はキタ(梅田・大阪駅)とミナミ(難波)の南北二極構造。東西軸が弱いのが、まちづくりの課題です。

大阪府・市は2012年6月、まちづくりプラン「グランドデザイン・大阪」を策定。大阪メトロ(当時は大阪市交通局)森之宮検車場の利活用が将来構想として浮上しました。

2020年には、大阪府・市などが「新大学基本構想」を発表しました。2022年4月に、大阪府立大と大阪市立大が統合されて大阪公立大が発足。新大学は森之宮に都心キャンバスを開設することになり、鉄道アクセスとして中央線延伸が打ち出されました。

森之宮新駅に駅ビル

森之宮延伸線・新駅には、大阪メトロの未来が託されます。大阪市は前章のように南北二極構造ですが、東西軸として沿線の発展が期待されるのが中央線です。

西側拠点が、2025年4~10月に開催される大阪・関西万博会場の夢洲(ゆめしま。大阪市此花区)。大阪メトロ中央線を延伸するコスモスクエア~夢洲間3.2キロは、2025年1月19日の開業が先日、発表されました。

そして夢洲の反対側、東側拠点が森ノ宮。延伸線や新駅周辺には公立大都心キャンパスのほか、駅前空間交通広場、大規模集客・交流空間が整備されます。集客・交流空間に建設されるのが、1万人以上を収容できるアリーナ・ホール。

コンサートやスポーツイベント開催が予告されます。

地下鉄中央線の延伸線と新駅 先導する交通テーマパーク 今、関西圏で注目の森ノ宮に行ってみた(大阪市城東区)【コラム】
メトロ中央線の延伸線と新駅イメージ。左下から延びるのが延伸線です。JRの森ノ宮支所に「当面は鉄道施設として継続利用」と記載されるのに要注目。将来は再開発があるのかもしれません(資料:国土交通省)

大阪メトロが、新駅に整備するのが駅ビル。開業時期や規模はこれからですが、ドーム状の新駅に併設される商業施設は、城東エリアの新しい集客スポットになるはずです。

新駅ビルは大阪メトロの将来占う試金石

日本が人口減少社会に入り鉄道利用客が伸び悩む中で、鉄道各社は関連事業ビジネスに活路を見いだします。

大阪メトロの事業リストには軌道(鉄道)のほか、広告事業、技術コンサルタント、リテール事業(駅コンビニ)などが並びますが、現状はいかにも手薄。鉄道と並ぶ収益の柱になりそうなのが森之宮新駅の駅ビルです。

自動運転バス、空飛ぶクルマ……

大阪メトロは、他の鉄道会社には(あまり)見られない特徴的な事業を手掛けます。それは、自動運転や空飛ぶクルマといった未来のモビリティ(移動)です。

自動運転では、大阪・関西万博で会場内・外周をドライバレスのレベル4で走行するバスを走らせます。空飛ぶクルマは2024年8月、愛知県に本社を置くスタートアップ(ベンチャー)企業・SkyDrive(スカイドライブ)と提携しました。

大阪メトロは、大阪市が目指す次世代まちづくりで、自動運転や空飛ぶクルマの早期実用化を受け持ちます。

2018年4月、大阪市交通局の民営化で誕生した大阪メトロ。基幹の地下鉄やバスはもちろん、次世代モビリティーについても情報を追いたいと思います。

「あっ、本当に動いてる」

後段は森ノ宮訪問記。今回の関西紀行は本サイトから離れた神戸市の空き家対策が主な取材メニューで、十分な時間が取れない中、駅周辺をぐるっと一周しました。

JR森ノ宮駅は線路が高架上、駅舎は高架下の二層構造で、構内店舗はあるもののにぎやかという印象は受けません。

大阪環状線の車窓からロケハン(?)して車両基地の位置は分かったので、北東方向に向かいました。100メートルほど進んで細い路地を入ると奥にJRの森ノ宮支所が見えます。さらに進むと、進行方向左側がJR、右側が大阪メトロの検車場に挟まれます。

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JR吹田総合車両所森ノ宮支所に入線中の323系電車。こちらも2016年デビューの新鋭です(筆者撮影)
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メトロ森之宮検車場には400系と並ぶ新鋭の30000A系も。2022年7月、中央線27年ぶりの新造車両としてデビューしました(筆者撮影)

歴史をたどれば、一帯は戦時中までの軍用地の跡地。兵員を訓練する城東練兵場の跡地に鉄道2社の車両基地が設けられました。

JR、大阪メトロともに道路とは塀で仕切られますが、仕切り板の間から出入りする車両の観察は可能。

乗車チャンスはなかったものの、検車場に入線するメトロ中央線の新鋭・400系電車を撮影することができました。

400系のニックネームは、ご存じ「宇宙船」。筆者がはじめて走行する車両を見ての第一印象は、いささかミーハーですが、「あっ、本当に動いている」でした。

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森之宮検車場に入線する大阪メトロ400系電車。正面デザインはインパクト大ですが、サイドは〝普通の電車〟に見えます(筆者撮影)

新しいまちづくりの息吹

しばしの車両ウォッチングに続いて、森ノ宮駅に戻り大阪公立大の都心キャンパス予定地に移動。7月末時点では建物は建ち上がっていませんでしたが整地も進み、新しいまちづくりの息吹を感じられました。

森ノ宮界わいには大阪城公園、大阪歴史博物館、OBP(大阪ビジネスパーク。JR、京阪、大阪メトロの京橋駅、大阪ビジネスパーク駅からのアクセスが便利です)などがあり、商都の歴史と未来を感じさせるエリアです。

「森ノ宮は次の関西紀行で、また違った表情を見せてくれるはずだ」。そんな思いで、メトロ長堀鶴見緑地線と阪神なんば線を乗り継いで、次の目的地・神戸に向かいました。

記事:上里夏生

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